人間の証明
「ど、どれくらい距離がかかると思っておるのじゃ。馬車ですら片道2ヶ月往復4ヶ月じゃぞ! それではほぼ半分学校に居ないつもりか!? 」
俺の答えを聞いたクソジジイは声を荒らげ詰め寄って来る。しかし俺はクソジジイの顔を見上げて臆すことなく返した。
「いいえ王都の場所も覚えましたし、僕のスキルを使えば王都に来るのに1日も掛からないでしょう。」
大体半日位ではないだろうか? 重力操作で飛べば障害物を避けて遠回りする必要もなく真っ直ぐ王都まで来れるし、速度なんて馬車とは比べものにならない。大体今回こんなノロノロ来たのは王都の場所が分からなかったのとクソジジイと一緒にって言われたからだ。それがなければ気軽に旅行気分でいつでも王都に来れる。しかし、クソジジイは俺が龍王剣舞祭に出場するのを止めたがっている様に見えるな。さっきのだって建前の様な気がしてならない。
「そ、それはそうじゃが‥‥」
頬に冷や汗を垂らしながら目を泳がせているクソジジイ。それを見て俺は怪しいとばかりに目を細め話しかける。
「何を戸惑っているのですか? 広告塔としてもこの上ない宣伝要素なのでは? 大会連覇して見せますよ? 」
「はぁ、そんなこと心配しておらんわい。お主自分にとんでもない額掛けるから不味いんじゃよ。はぁ、大会実行委員に儲け金を全て吸い取られたくなかったら掛け金の上限を設定しておく様に言っておくかの。」
俺が自信満々に胸を張って言った言葉に目を瞑りため息を吐いてやれやれと首を振る。
うわ、バレてやがった。俺の密かな計画を見破るとは流石クソジジイ。そんなクソジジイにはこの言葉を送ろう。
「チッ 余計なことするなよクソジジイ。」
「あ! とうとう小声で言うのもやめよったな! 腹黒小僧! 」
ソッポを向いて舌打ちをした俺にピシッと指差してきた。俺はその指を手で払う。
「だって気づいているんでしょう? 隠しても無駄じゃないですか。いい加減腹の探り合いも面倒くさいですし。楽に行きましょう。楽に。」
「お主何を考えている。分からぬお主の考えていることが。豪胆の様で臆病。その歳からは考えられない頭脳。矛盾だらけじゃ。長いこと生きてきたがお主の様な存在は見たことも聞いたこともない。世間はお主のことを神童と呼んでいるが明らかにそれでは済まないじゃろう。いったい何者じゃお主は? 本当に人間か? 」
俺に払われた指を摩りながら真剣な眼差しで問いかけてくる。俺はそれを暫くじっと見つめ返してから口を開いた。ここで解決しておいた方がいいだろうからな。これをずるずる引きずっていたらいつか支障が出かねない。
「ええ、人間ですよ。これからもお世話になることですし、いい機会です。僕のステータスを明かしておくとしましょう。それが1番僕が人間という証明になります。正直嗅ぎ回れるのは疲れるんですよ。その代わりみだりに風潮しないで下さいね? その時は‥‥」
そこで言葉を区切り、殺すという明確な殺気をクソジジイに浴びせる。するとクソジジイは目を瞑り暫く考え込んでから目を開いて頷いた。
「‥‥ああ、わかった。ウィンガー・フォン・リーデンブルグの名に懸けて約束しよう。」
リーデンブルグだと!? 王族だったのか! いや、それもそうか王国中から才能ある子供達を集めた王立の学園。そこの学園長ともなれば適当な人がなるはずがない。実力があり相当の地位、つまり爵位持っていて尚且つ信用できる人物。クソジジイが王族ということは何もおかしくないという事か。
「その名前、そうですか。貴方王族だったんですね。」
「陛下の叔父に当たるかの。これは秘密じゃぞ? 」
心の中でなるほどなるほどと頷いてから言った俺の言葉にクソジジイはウインクしてそう返してきた。なんて気持ち悪い物見せやがるんだ。ペッ! ペッ! ペペペペッ!
ペッペッと心の中で思う存分唾を吐いた俺はアリアとアイリスに目を向けて笑顔で話しかける。
「はい、アリアとアイリスも丁度いいから見てね。ずっと一緒にいるからには知っていて貰いたいから。」
「一緒って‥‥勿論です坊っちゃま。」
「プロポーズ!? 」
頬に両手をあてぶっ飛んだことを言ったアイリスにため息を吐いてから、懐かしいのあの言葉を口に出す。
「はぁ いくよ?【ステータスオープン】 」




