朝のひと時
深い海の底から、浮び上がるように俺は目が覚めた。どうやら昨日は泣き疲れて寝てしまったらしい。改めて昨日の事を思い出すと、顔が赤くなるのがわかる。何だよ、俺の生きる意味になってくれキザすぎだろ。
やはり溜まってたようだ。溜まってなければあんな風に言わない自信がある。
「‥‥ん、ん〜 すう」
隣から寝息が聞こえてくる。まさかと思い隣を向いてみる。そこには、全国の男性諸君の大好物美少女の寝顔があった。な、何だと!? 何で青山がまだこの部屋にいるんだ!帰ったんじゃなかったのか!それに昨日の俺の最後の記憶は、ソファーだった筈‥‥。
まさか!運ばれたというのか!青山に!か、か、彼女に!いやそれはない、170cmある俺を華奢な青山が運べる筈が‥‥運べるな。俺としたことがステータスのことをすっかり忘れていた。寝起きの衝撃的光景に混乱してしまったようだ。
しかし、本当に泣いてスッキリするんだな。昨日までの事が嘘のように体が軽い。それもこれも青山のおかげだな。俺の手は自然と青山の頭に伸びる。サラサラしてる、山田さんの髪はどちらかというとフワフワという感じだったがこれはこれで‥‥。
「‥‥ねえ、あんた人の頭撫でといて他の女のことを考えてたでしょ?」
撫でるのに夢中で青山が起きたことにきずかなかった。
「い、いやそんなことわないぞ!」
何でそんなことがわかるんだと聞きたい。女性に生まれつき備わってる特殊能力か?
「まあいいけど、どうスッキリした?」
「ああ、おかげさまで。」
「そう、よかった。」
フフと口元を押さえて笑う青山。そして口元に当てた手をどけるとそこには、とても嫌な予感を誘う笑みを浮かべていた。
「それより彩月、あんたがどうやって運ばれたか聞きたい?」
そらきた、考えないようにしてたのに。俺は顔が引きつるのを感じながら、青山に聞く。
「ど、どんな、運び方だったんだよ。」
「それは〜、お・姫・様・だっこ♡」
な、なんて事をしてくれたんだ!これなら足を持って引きずられたほうがマシだぞ!
「そ、それはどうかな〜青山意外に見てる人いないし、それが本当かどうか‥‥」
その言葉を待ってましたと言わんばかりに青山が言ってきた。
「ふーんそんなこと行っちゃうんだ、じゃあこの写真みんなに見せちゃおっかな〜」
そんな事を言いながら、パジャマのポケットからスマホを取り出す。
「な、なんでスマホっ持ってんだよ!」
「それはね、召喚された時ポケットにスマホ入れてたかよ。」
ドヤ顔で言わないでください。校則違反ですよ。
「ここに、目を腫らした彩月とお姫様だっこされてる彩月が写っていまーす。」
「スンマセンでした。青山様お許しください。」
おれは土下座した、それはもう全力で。そんな俺の土下座を見た青山は、偉そうにうなずいてこれまた偉そうにこう言った。
「うむ、よろしい。」
修正、やっぱりこいつは性格が悪い。しかしなぜだろう。今まではただただウザいだけだったが、今は愛らしくも思ってしまう。これが恋愛脳というやつだろうか?
「それよりも彩月、言うことがあるんじゃない?」
「は? ありがとう、か?」
「違う!」
むくれ顏で即答してくる。じゃあ一体なんだって言うんだ。
「じゃあ何だよ?」
そう聞くと、青山が近寄ってきた。
「もう! 」
そう言い、唐突に顔を近ずけてきる。まさか!これは!キスというやつでしょうか!?どんどん近ずいてくる顔に、絶賛パニック中の俺は動くことができなかった。そして重なる唇。柔らかい、そして甘い香りがする。これが女の子いや青山か‥‥。そのキスは青山が離れることによって終わりを告げた。おれはというと、終始動くことができなかったなさけない。
「おはようでしょ、彩月。」
メッっと鼻を指先で突いてくる。けしからん、けしからんぞ青山一体どこでそんな男を手玉にとる技を覚えたんだ!?
「あ、青山それお前、何処で覚えたんだ?」
「ん?それは、友達が男の子はそれをやると喜ぶって言ってたからそれでね。もしかして、いやだった?」
その友達グッジョブ!
「いやそんなことないぞ!毎日やって欲しいくらいだ。」
本当にお金払うから毎日やってほしい。
「そっか‥‥じゃあこれから毎日起こしにくるわね!それより早く朝食に行きましょ、遅れちゃうわ。」
おっし、これだけでも生き甲斐ってのも出てくるというものだ。
「そうだな、行こうか。」
そして俺たちは一緒に朝食を取りに行く。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「遅かったじゃねえか!龍太、青山。 今日はサンドイッチとゲナジーだってよ。」
昨日のあんなにボコされたのにピンピンしてる正義。ほんとこいつの体どうなってんのか一度でいいから解剖してみたい。
「うえ、ゲナジーかよ。あれ見た目がアレだから苦手なんだよな。」
「そう?私は好きだけどゲナジー。」
「マジかよ。よくあんなのが飲めるな尊敬するぜ。」
「意外と目を瞑れば飲めるわよ?」
その時点でアウトだと思うんですけど‥‥。
「そうだぜ、龍太。外国のスポーツドリンクだってだいたいこんなんだ。」
襲撃の事実を告げてくる先生。何て恐ろしいとこなんだ外国!そんな禍々しい飲み物が跳梁跋扈してるとは‥‥。
「そんなことより、お前らいつもより仲がいいな? なんかあったか?」
これでおれは確信した女性には第六感があることを!
「そうですかね〜?いつも通りなんだけどな〜。な、青山」
そう言って俺は青山にウインクする。合わせくれ、青山おまえならこの合図がわかってくれるはずだ。うん、と一つうなずいた。よし!伝わったか。
「そ、そうですよ先生。私たちいつも通りじゃないですか。」
ダメだ、伝わったはいいが、演技が下手すぎる。言葉に詰まってるし、目が泳いでしまっている。
「そうか、まあいい。」
これはばれたか、と思ったが何とかなったらしい。先生がバカでよかった。俺が胸をなでおろしていると、ラインハルトさんが広間にはいってきた。
「皆さんお食事中のところ申し訳ありませんが、お知らせがございます。今日は午前の座学、午後の訓練を潰して王国所有の森に各々で2人一組を作ったチームで入り実践訓練を実施いたします。もちろん森には魔物がいますがご心配なく。武器が必要な方には武器は貸し出しますし、森には強い魔物はおらず、魔物の中でも低級なゴブリン、スライムのみ生息していますので大丈夫です。」
あまりの当然の宣告にクラスメイトたちが慌てふためいている。
「だってよ、青山。俺たちで組まないか?」
「そうねそうしましょ。」
こうして突然の実戦訓練に向け俺たち2-Aは慌ただしく、準備をしていった。
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