ルディアの新たな弱点
今俺は闘技場へと向かっている最中だ。昨日の俺の決勝戦出場祝いは夜遅くまで続いた。ご飯を食べている時にお姉さん達が食べさせてくれたりと色々世話をしてくれたのは正直言って料理を食べるよりも精がついたと言っておこう。まあ、それに対抗してかアリアとアイリスも食べさて来たので帰る頃にはお腹パンパンで動けなくなったんだけどね。プカプカ浮かんで帰りましたよ、ええ。
「坊っちゃまいよいよ今日が決勝ですね。」
俺がまた昨日のことを思い出して気持ち悪くなり始めたところでアリアが話しかけてきた。
「そうだね。 アリアとアイリスに恥ずかしい所を見せないように頑張るよ。」
「ルディなら大丈夫だよ! 」
「ありがとう。アイリスにそう言われると元気が出てくるな。」
アイリスがガッツポーズを作りそう言ってきたのを見て俺はアイリスの頭を撫でる。
あー可愛い。よしよし。
「えへへ〜」
目を瞑り気持ちよさそうにしているアイリスを見て更に撫でるスピードを上げていると俺から見て右側の方で歩きながら会話をしていた2人の男がこっちを見てきた。どうやら俺がルディアという事に気づいたらしい。
「おいあれってルディアじゃないか? 今日決勝の 」
「ああ本当だあの制服間違いない、ルディアだぜ。 今日の試合、どっちが勝つと思う? 」
「どっちておめえ‥‥どっちだ? 」
「チッ、ハッキリしねぇな。」
「仕方無えだろ。SSランク冒険者と聖魔の対決なんだ。凡人の俺がどっちが勝つかなんて分かるわけないだろ。まあ、心情的にはメフィストに勝って欲しいがな。あいつが若い頃から頑張っているのを知っているのよ。」
「そりゃあそうか。俺は〜ん〜ルディアの方だな。歴史的瞬間てやつか? そう言うのに立ち会ってみてえんだ。」
「そう言われてみると‥‥迷うぜ。」
なるほどなるほど、ここまでに来る間に聞いた話から推測するにどうやら俺とメフィストの人気は真っ二つに割れてるらしい。これはフフフ。 オッズもいい事になりそうだな。楽しみだ。ククク
俺が心の中で黒い笑い声を上げていると前方に見えてきた闘技場の前に止められていた馬車のドアがバタン! と勢いよく開き、そこからアリウシア様が飛び出してきた。スタタタと物凄いスピードで駆けてくる。
「ルディア様〜! 」
「あ、アリウシア様ってえ、え!? 」
アリウシア様の突然の登場に俺は戸惑う。王女が公衆の面前でこんなことをして大丈夫なのかとか、なぜ見計らったように出てきたのかとか色々考えているうちにアリウシア様はどんどん距離を詰めてきている。
え!? 嘘!? このスピードのまま突っ込んでくる気か! 上等だ受け止めてやる!
避ける選択肢などはなからない俺は両手を広げて受け止める体勢を取った。するとぽふとアリウシア様が俺の胸に飛び込んできた。‥‥ぽふじゃなくて本当はドス! だったけどまあアリウシア様だからOKと言うということで。
「私応援しております。ただ貴方だけを見ております。だから絶対勝ってくださいね? 勝ったら‥‥ね? 」
アリウシアは暫く抱きついてから離れて顔を赤くしながら上目遣いでそう言った。離れたとは言ってもかなり近いわけだがそんなことを気にしている余裕はルディアにはない。何故なら‥‥
ひやぁあぁっあ!!? 何!? 勝ったら何!? いやぁぁぁぁ! ひゃあっつ£*+%>'?€|£!!
この通り絶賛混乱中だからだ。いつもは前世で培った知識や観察眼、人外染みて整った容姿、思った通りの顔を作り出す演技力を駆使して自分の思い通り事を進めているルディアはこういった相手側から自分と同じようなことをやられるのにかなり打たれ弱い。いや弱くなったと言ったほうがいいかもしれない。7年間でルディアにこう言ったことをやった女性はいなかったので免疫が無くなったのだ。
「そ、そそれだけですから〜! 」
プシュ〜 プシュ〜と頭から湯気を出しているルディアを置いてアリウシアが去って行った。どうやら自分がやった事の恥ずかしさに耐えられなくなったようだ。
それから暫くしてルディアが再起動した。未だに顔が赤い事から完全に立ち直っている様ではないが。
「は!? 俺は何を‥‥そうだったアリウシア様に精神攻撃を受けて クッ! まさか俺にお菓子以外でこの様な弱点があったとはな。しかしやられっぱなしというのも癪だ。決勝の後に落としてくれる。アリア、アイリス俺はひとまず決勝に勝って来るから応援よろしく。」
「「はい、頑張ってください! 」」
もはやメフィストより、アリウシア様を最重要目標に据えた俺は未だにドクドクと高鳴っている胸を抑えながら控え室に向かって行ったのだった。
ルディアが去った後にアリアとアイリスがニヤリと笑っていたのは知らない方が幸せか否か神のみぞ知る。




