甘いルディ(女性限定)
ドタバタと出て行ったカス共を蔑みを込めた眼差しで見送った俺は店内へと視線を戻す。すると俺達とカス共のやり取りを目を逸らして我関せずとしていた学生達はざわざわとし始めた。
「貴族のフールを意に返さずにボコったぞあの子。」
「大丈夫かしら貴族に手を出して‥‥。」
「多分本物のルディアなら大丈夫なんじゃないか? 陛下がアホ貴族と奇跡の神童どっちに擁護に着くかなんて明白だろ。そもそもフールが先に絡んで行ったんだし。」
「しかし、あのメイドの2人の女の子おっかないな。迷わず顔面に蹴り食らわせたぞ。」
うん俺も少し思った。綺麗な軌道を描いて同時に頬に食い込んでいたもんな。あのコンビネーションは目をみはるものがあった。しかし、なんだよ本物のルディアならって本物のだっつうの。自分では結構有名になったと思っていたんだけど、外見的特徴は然程伝わってないのか? まあいい。厄介なのに絡まれないためにももっと自分を売っていこう。そうしよう。
俺が周りから聞こえてくる俺やアリア、アイリスに関するヒソヒソ話を聞きながらどうやって広めていくかを考えていると奥の方からエプロン姿のカエラさんが姿を現した。
「どうしたの? なんの騒ぎ? あ! ルディア君、来ていたんだ! 奥で準備していたから出迎えられなくてごめんね? 」
カエラさんは俺に駆け寄り両手を合わせて謝る。
なるほど、だからいなかったのか。 もしかして他の2人のお友達も奥で準備してくれているのだろうか? ありがたい。しかし、クソ共の事を言うべきか否か。でもクソ共の事はカエラさんのせいじゃないし言ったら絶対気をやむだろうな。よし、言わないでおこう周りも空気を呼んで話を合わせてくれるはずだ。もし言おうとする奴がいたら口を重力で無理やり閉じるんで問題なし。
「こんばんはカエラさん。 別に出迎えなんて良いですよ準備して貰ってるんですから。騒ぎが起こったのはただ突然僕が来たことに皆さんが驚いてしまった様で。」
俺は笑顔で薄められた瞼の隙間から余計な事を口に出す輩はいないかと辺りに視線を巡らせてみると、全員驚愕の顔を浮かべていた。
まあ、こんないたいけな子がいけしゃあしゃあと嘘をつけばそうなるか。しかも、微塵も動揺せずに言っているとなれば尚更。これは無理やり重力で口を塞ぐ必要は無さそうだな。
俺が安堵し辺りからカエラさんに視線を戻すとカエラさんは顎に手を当てて首を傾げていた。
「そう? 何か大きい音と悲鳴が聞こえてたと思ったんだけど。」
「そうですか? 気のせいでは? 」
「う〜んまあいいや。あのルディア君。ルディア君に謝らないといけないことがあるんだけど。」
俺の満面の笑みを見て些細な事を気にするのがどうでも良くなったのか顎から手を離してまあいいやと言った後、俺から少し目線を逸らして気まずそうにする。
「なんでしょうか? 」
それに俺は首を傾げて聞く。まあ何のことか分かるけども。
「私達今日学校休んで龍王剣舞祭を見に行っていたんだけど、闘技場から帰る時に学校帰りのみんなに嬉しくてつい今日うちでルディア君を呼んでお祝いやるんだって言っちゃったらあれよあれよという間にその話が広まって人が集まっちゃって‥‥。」
ほほう、なるほどね。自分で言うのは何だが俺は名前はかなり知られている。それが家にきてお祝いをやるとなれば人がわらわらと集まってくるだろう。つまりここにいる人たちは全てカエラさんの友達ではない訳だな。中にはカエラさんの友達がいるだろうがそれは少数派。大多数は知らない人という訳だ。その中にカス共も含まれているのだろう。ああいうのはハエみたいにブンブンと寄って来るからな。
「ごめんなさい! ルディア君に無断でこんなにたくさんの人を呼んじゃって! 」
腕を組み目を瞑りあのカス共がカエラさんの友達ではなくてよかったと思っているとカエラさんは何を勘違いしたのか勢い良く頭を下げて謝ってきた。
「全然大丈夫ですよ? お祝いは皆んなで賑やかにやったほうが楽しいですし、カエラさんが謝る事はありません。」
それに俺は両手を横に振りいいですよと返す。まあ確かに言いふらしたのは頂けないが俺とお祝いをやるのが嬉しくてつい言ってしまったようなので許すとしよう。え? 甘すぎるって? バカ言え! これ言われて許さない男がいるでしょうか! いえいません! いたとしても俺が抹殺します! 以上!
(はぁ〜)
「ありがとう! ふぅ〜よかった〜。ルディア君もう少しで料理が出来上がるからあとちょっとだけ待っててね。それじゃ! 」
カエラさんは俺の言葉を聞いて頭を上げ、胸に手を当てて安堵しまた奥へと戻って行った。レヴィのため息が聞こえた気がしたが気にしない気にしない。




