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召転のルディア  作者: NTIO
壊れゆく日常
15/220

気づかぬ心

「この勝負光輝様の勝ち!」


その宣言とともに聖剣を掲げる光輝。うわーピカピカ光ってるよ。ここまで勇者(笑)と勇者が違うとは‥‥

本物の勇者はゲロ強いんだな!そんなことを考えてると、光輝が帰ってきた。


「ご希望に添えたかな? 勇者(笑)さん?」


「うるせー 勇者の後ろに余計なものがついてるぞ。」


「ハハハ 仕方ないじゃないかな、本当のことなんだから。」


急に真顔にならないでくれます?ギャップでものすごい恐いんですけど


「そ、それよりとことんお前のスキル勇者っぽいな。 俺のは睨むと歩くと妄想なんですけど。」


「もうあんた開き直って笑いの勇者になったら? 良い線いけると思うわよ?」


何てこと言うんだ青山、本当にその仕事がきたらどうしてくれんだ。異世界にまで来てそんなことやりたくないわ!


「おい光輝、やらないか。」


シャドウボクシングをしてそんなことを言う先生。おい教師が何言ってんだ。アホか!アホだな。


「いや、先生とは遠慮したいな。あの腕と脚なんか嫌な感じがするんで。」


「おいおい、お前のステータスなら大丈夫だろ?何言ってんだ?」


自分のステータス自覚してんのか?


「何ていうかな? あの腕と脚を見てるとこう、ゾワゾワするというか、とにかく嫌な感じなんだよ。先生あのスキルどんな効果が有るんですか?」


お、俺もそれ気になるな。破壊の心得の効果は聞いたけど、必滅の拳と必滅の脚は聞いてないしな。


「あ?そーだな、わかりやすく言えば攻撃力が上がる。」


なんかやな予感がするぞ!これが、光輝が言ってたやつか!


「ぐ、具体的には、どんな効果なんですか?」


「めんどくせーな、まあ良いか粘られる方がめんどくせーからな。」


あんた、どんだけめんど臭いんですか。


「まず前に言ったと思うが、破壊の心得は何処をどう攻撃すれば良いか見えるようになる、ここまでは良いな?」


「オーケーです。」


「大丈夫ですよ。」


「それでだ、必滅の拳は発動したらまず腕に必滅オーラが出る。その状態ではただ攻撃力が1.5倍に上るだけだ。」


ちょっと待て、先生の攻撃力の場合1.5倍はかなり大きいと思うんですけど!!


「必滅オーラってなんですか?」


「しらん!」


「知っといて下さいよ!」


「仕方ないだろ!説明にはそうしか書いてないんだよ!話を脱線させるな!」


ドガッ、説明できないからって拳骨落としてきやがった。


「何処まで話した?」


「1.5倍の攻撃力だと思いますよ。」


「ああそうだった、で次が重要だ。必滅の拳の《技》のディザースターナックルを使うと必滅オーラが硬質化しガントレットになって攻撃力2倍、私より低いレベルの敵が私に攻撃を受けた場合、即死する。」


思ってたよりやばいやつだった。冷や汗が止まらない。


「必滅の脚も大体同じ効果だ。」


先生の攻撃力がインフレ化してる。もうやだこの人、少しは自重して!弱い人のことも考えて!


「先生の地の攻撃力確か1000でしたよね?じゃあ攻撃力は‥‥」


「ざっと《技》発動して4000、しなくて2250ってとこだな。ま、《技》はまだ魔力がすくねーから5分しかもたねーけどな。」


俺の攻撃力の80倍って、なに?しかも、敵がレベル下の場合即死とか‥‥バケモンだ。ほんとに俺はなんで召喚されたんだ?俺はいる意味あるのか?足手纏いじゃないのか?この世界は元の世界より死が近い、俺が脚を引張たら、正義、青山、山田さん、光輝、先生が俺を庇って死んでしまうんじゃないのか?よくある話だ。だったら俺は‥‥


「‥‥ねえ、ねえ、彩月! 」


「あ、ああなんだよ、青山?」


考え事をしていてだいぶ経っていたらしい、試合が終わってもう青山以外誰もいない。


「あんた大丈夫なの? 紫咲先生の話聞いてから顔色悪くなっていたわよ?」


そんな顔してたのか青山に心配させちまったな、俺らしくない。こんな湿っぽい考えはやめよう。


「大丈夫だ、何でもないありがとう青山。」


心配してくれた青山に笑顔で返す。


「‥‥そう、ところでさ今夜、彩月の部屋にいっていい?」


真剣な顔でそんなことを言ってくる青山。


「な、なんだよ、いきなり。」


これはもしかしてあれですか!告白というやつですか!?いや青山に限ってそれはない、うん。


「大事な話があるの。」


俺が邪な事を考えていると、青山が何処までも澄んだ目で言ってくる。これは、ふざけられそうにないな。しかし、こいつ近くで見ると本当美少女だな。


「そうか、わかった。いいよ。」


「ありがと、夕飯が終わったら行くね、じゃ」


そう言ってスタスタと訓練場を出て行った。それにしても、話とは何だろうか?まあ、そんなことは夜にならないとわからない。今は、俺も夕飯にいきますか。



‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



夕食は、パエリアのような見た目だった。そう見た目だったのだ、あの見た目でカレーの味とか違和感がありすぎた。だが、人間慣れが重要なようで、3口目から美味しくいただいた。


それで、いま俺は部屋で青山をまっている。時間から言って、そろそろなはずなんだけど‥‥。


コンコン


「青山なんだけど彩月いる?」


「いるぞ〜」


「入るわよ?」


「入れ入れ。」


そう言うと、寝巻き姿の青山が入ってきた。やばい緊張してきた。


「じゃあ、お邪魔するわね。」


「まあ座れよ。そのほうがいいだろ?」


「そうね、そうさせてもらうわ。」


そう言い、ソファーに浅く座る。俺は青山の対面のソファーにすわった。


「で、話ってなんだ? ふざけた話じゃないんだろ?」


青山の顔をしっかり見て言う。


「率直に言うわ、貴方あの時何考えてたの?」


本当に率直に聞いてくる青山。


「あの時って?」


何のことか大体分かるけど、一応聞いておく。勘違いが一番はずかしいからな。


「紫吹先生のスキルを聞いた時よ。貴方酷い顔してたじゃない。」


やっぱりそうか。


「それ、言わなくちゃだめか?」


言いたくない、こいつらにだけは弱気な俺を知られたくない。


「そうよ、私は貴方の悩んでいることわからないけど、話せば何とかなることもあるかもしれないじゃない。」


「さっきの貴方を思い出すだけで、ほっといちゃいけないって思うの。だから、嫌かもしれないけど言ってくれないかしら?」


‥‥‥そんな悲しそうな顔で言わないでくれ。断れないじゃないか。これが作戦だったら女の子を信じられなくなりそうだ。


「わかったよ、言うよ。言うから、さ。 そんな顔しないでくれ。」


「ありがとう。」


パッと嬉しそうな顔になる青山。本当に調子が狂う。


「いいよ、そんな事より失望するなよ、相当情けないからな。」


それを聞いた、青山がクスッと笑った。


「あんたの何処に失望する余地があるのかしら?」


「それもそうだなって、いまそれ言うかあ?真面目な話だろうが。」


「ゴメンゴメン、それでその情けない話って何かしら?」


ひとしきり笑った青山は、姿勢を正して聞く体制に入った。


「ったく、簡単な話だよ。2-Aで勇者召喚されて、訳のわからないうちに勇者って事にされてさ、そりゃあ最初はワクワクしたさ。だけど物凄い魔王や魔族がいることがわかって、家族がいる日本に帰ろうにも帰れない。

帰れないならこの世界で生きる意味を見つけようと、王様の提案を受けたけど、俺には力がない!何もできない!せいぜいできることと言ったらポジティブに 前を見るだけ!そのポジティブも先生との差を見せつけられて、もうごまかせないんだよ!俺は怖いんだ!!」


青山に自分の心を吐露してるうちに、感情の制御がきかなくなってきた。思ってたより心に溜まっていたらしい。


「彩月‥‥。」


「この世界では王様達に聞くからに、死が元の世界よりも身近にある。魔物や魔獣に何もできないで、殺されるのが怖い!! いやもっと怖いのは、俺のせいでお前達が死ぬのがもっと怖い。お前達のことだから、俺が殺られそうになったら、絶対に庇う。その時俺は何ができる?何もできない!ただ背中に隠れてるだけしかできない!」


目から涙がとめどなく溢れていき、頬を濡らし床に滴り落ちて行く。


「俺は、俺はどうすればいいんだ!?そんなんだったら、俺は死んだ方が」


パーン


青山が手を振り抜いた姿勢でソファーから乗り出している。俺は青山に頬を叩かれたようだ。


「彩月! それ以上は言わせない!ねえ彩月、私貴方がそんなに悩んでるなんて知らなかったよ。でも死ぬなんて言わないで!彩月が死んだら私も死ぬよ!?だって、この世界に来ていつも通り振る舞えたのも彩月がいたから! 他のみんなもそう!特に愛理も同じ私と同じ気持ちの筈だよ!」


「なんで! 何でそこまでする!?青山まで死ぬ必要は無いだろ!」


「あるわよ! 私は、貴方が好きだからよ!そして この世界で生きる意味だから!これで満足!?」


顔を赤らめながら大声で言う青山。


「あ、青山、俺が好きって、そういう事か?」


プイッとそっぽを向きながら


「そうもこうも、それ以外何があるのよ。 バカ」


「そ、そうか。」


何だこれ、青山が俺のこと好き?そんな兆候なかったぞ。‥‥ん?いやあったな、かなりあった。うわー俺鈍感系ってやつだわ〜。


「だから、死ぬのはダメ。この世界で生きる意味がないなら私がなってあげる、私も貴方がいないなんて耐えられないから。それに私は貴方を庇って死んだりなんかしないわ。私のステータス知ってるでしょ?」

そう悪戯げに微笑む青山はとても美しく、見惚れてしまった。


「そうだな、それは死ねないな。青山のためにも、な?」


「っな!!」


照れてる、照れてる。これでさっきの仕返しはできたかな?おれはソファーを立ち上がり、青山に抱きつく。


「なあ、青山。 俺、お前のこと勘違いしててさ、性格の悪いやつだって思ってたんだ。

そんな俺でもいいのか?」


すると青山はギュっと抱きしめ返してきた。


「何言ってんのよ、最初からそう言ってるじゃない。」


「そうか、宜しくな青山。俺の生きる意味になってくれ。」


「もちろんよ。どんなことがあっても言いなさい?私が貴方を支えるわ。」


「ありがとう、早速だが泣いてもいいか?もう我慢できそうにない。」


それを聞いた青山は、フフッっと笑った。


「いいわよ、泣いたら少しは楽になるわ。」


そして俺は泣いた。恥も外聞もなくただひたすらと泣いた。こうして夜は更けていった。


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