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召転のルディア  作者: NTIO
壊れゆく日常
149/220

ルディアが去った後の王族専用席はガラリと雰囲気が変わった。ベルクリウスは王としての佇まいとなりそれに合わせてルクシア、エフェリア、アリウシアも王族としての顔になったのだ。これから重要な会話が行われることは誰の目にも明らかだろう。


そんな張り詰めた雰囲気をベルクリウスが口を開いて破る。


「どう思った? 我は歴戦の貴族のような印象を受けたが。」


そのベルクリウスの問いにルクシア達はしばらく考えてから答えた。


「そうですわね〜私も兼ねて同じですわ。ただあれを意図的にやっているかどうかとなるとわかりません。」


「意図的にかどうかは知らないけど、何かを隠している様に感じたわね。」


ルクシアとエフェリアの意見は同じらしい。 ルディアが内に何かを隠していると感じた様だ。


「エフェリア母様、ルディア様は私が思うに心の内に攻撃性を隠し持っているんだと思います。」


エフェリアを見てアリウシアは恐らくと前置きをしながらそう言った。


「攻撃性? アリウシアどういう事? 」


エフィリアはアリウシアが言ったことが気になったのか尋ねる。


「前に騎士学校でルディア様とブレイド先生が試合をした時なのですが、ルディア様は首を傷つけられた時笑ったのです。その笑顔はいつものどこか作られた様な笑顔ではなくて、鋭く刃物の様に研ぎ澄まされていて何処までも攻撃的でそれでそれで‥‥」


「ああもういいわ。十分に貴方があの子にほの字ということは分かったから。」


徐々に熱が帯びてきたアリウシアの言葉をエフィリアは頭に手を当てながら止める。他の2人はそれを苦笑いしながら見ていた。恋心を抱いている娘が微笑ましいのだろう。


「しかし、2人もそう感じたか。 なら大丈夫そうだな。」


「何がですか? 」


腕を組み頷いているベルクリウスを見てルクシアが首を傾げて尋ねた。それにベルクリウスは ん? と言う顔を作りながらルクシアに顔を向けて答える。


「アリウシアとルディア君の婚約だ。ルディア君程の人材はこの王国にいないのでな。帝国と魔国との切迫した状態が続いている王国では是非取り込みたい。 しかし、王女であるアリウシアとの婚約となると必然と貴族としての顔の使い分けが必要になってくる。その点でルディア君は完璧だ。貴族のたぬきジジイ共とも渡り会えるだろう。諸侯がごちゃごちゃと言ってくるだろうが決勝の相手のメフィストがいい試金石となる筈だ。ルディア君が勝ち優勝することが出来れば黙らせる事が出来るだろう。」


「成る程アリウシアもルディア君大好きな事ですし、いいじゃないですか。ですが、ルディア君は勝てるのかしら? 相手がSSランクとなれば五分五分いえ、それよりもっと低いかも知れませんよ? 」


「それは影に聞けばわかる。おい。」


ルクシアが、ルディアがメフィストに勝ているかどうか心配という表情を浮かべながら言った言葉にベルクリウスが答え、先程ちらりと見ていた誰も居ない場所に声をかける。すると先程まで誰も居なかった場所に徐々に影が集まりやがてその影が固まって人の形になった。唯一目の部分だけが空いておりそれ以外は真っ黒で異様な印象を抱かせる。


「「「貴方!(お父様! )」」」


それを見たルクシア、エフィリア、アリウシアが声を荒らげる。なぜかと言うとこの3人はこの影の正体を知っているからだ。


影とは一定時間だけ影に潜み気配を遮断する事ができる魔導具を身につけた密偵の総称でその任務は多岐にわたるが代表的なのは心理眼持ちの構成員によるステータスの調査。つまりここに影がいるという事はルディアのステータスを無断で盗み見たという事になる。それが許せないのかガタンっと席を勢いよく立ち上がったアリウシアがカツカツとベルクリウスに歩み寄った。


「お父様! 私に黙ってこの様な事を! これではルディア様を騙したようではないですか! 」


「あなたこれは良くないわよ? 」


「ありえないわね。」


怒り心頭なアリウシアに続く様にルクシア、エフィリアが言う。


至近距離で自分の娘に睨まれ、2人の妻からは呆れたと視線を送られるというまさかの一斉攻撃にベルクリウスはタジタジになった。


「し、仕方ないであろう。 国王として強い力を持つ者の詳細を知っておかなくてはいかないのだ。」


妻達に視線を向けて詰まりながらも何とか言い訳を言ったベルクリウス。しかし、そのベルクリウスの抵抗も虚しく視線を逸らしたアリウシアの方からは鼻をすする音が聞こえてきた。ベルクリウスがまさかと思い始めているとエフィリアがジト目でベルクリウスを睨みつけて口を開いた。


「それは分かるけど、私達やアリウシアに予め言っておくべきだと思うわ。特にアリウシアにはね。まだアリウシアは7歳なんですから。」


その言葉とともにベルクリウスがアリウシアの方を見てみるとそこには目から止めどなく涙を流して泣いているアリウシアがいた。


「グス、グスッルディア様ぁ〜 」


「す、すまんかった。アリウシア許してくれ。」


ベルクリウスは娘の涙に耐えられなくなったのか頭を撫でて必死に謝る。その姿は国王というより1人の父親だ。


「いいのです。そうしなければならない理由も分かっていますから。私こそ取り乱してしまいすいませんでした。」


ようやく涙が止まったアリウシアが目をゴシゴシと拭いながらベルクリウスに謝り席に戻って行った。それを見たベルクリウスはどっかりと椅子に深く腰掛け息を吐く。


「ふぅ我も娘には勝てぬ様だ。 さて影よルディア君のステータスは如何だった? 」


「それが、その‥‥」


ベルクリウスの問いかけに影は唯一見えている目を泳がせ言葉に詰まる。


「如何した? 早く言わんか。」


その態度に目を鋭くしたベルクリウスが早く言う様にと促す。そう言われた影は目を瞑り覚悟を決めたばかりに口を開いた。


「‥‥分かりました。今から私が言う事は信じられないでしょうが陛下の名に誓って真実ですので最後までお聞きください。まずルディア・ゾディックの職業なのですが‥‥」

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