表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召転のルディア  作者: NTIO
壊れゆく日常
138/220

酔人は覚えている

今俺は宿の自室で目を覚ましてから闘技場に向かっているところなのだが、後ろからグスグスと鼻をすする音が聞こえてくる。アリアだ。 何でも昨日の事を鮮明に覚えているらしく、不甲斐ないらしい。 宿でも散散アイリスと一緒に謝ってきていたのだが最後に俺を落としたのが自分だという事が涙を止まらなくしているようだ。


最後のは、男の幸せの象徴の中で気絶したと言っていいので全く気にしていない、どころかとても嬉しかったのでアリアがそこまで泣く事はないと言ったのだがそうもいかないらしい。


「アリア、私も共犯みたいなものだからアリアだけが悪いんじゃないよ? ううん、私がルディにあんな事を聞かなければああならなかったんだから私が悪いよ。」


アイリスがそう言って慰める。


「レーティシア‥‥。 違うの最後にとどめを刺したのは私。 坊っちゃまが苦しいと手を差し出して助けを求めていたのを私は、私は うぅぅ 」


違うよアリア。あれは俺の事を性魔呼ばわりした人を消すためだったんだ。


後ろから聞こえてくるアリアの解釈に俺は気まずい顔を作る。どうやらアリアはあれが助けを求めていたと思っているらしい。まずいこれは非常にまずいぞ。このままほっといたらアリアの心に一生の傷として残りそうな勢いだ。どうする俺? この状況を打開する手はあるがいやしかし‥‥。


俺はちらりと後ろを振り向き泣いているアリアとそれを慰めているアイリスを見て決心した。 いいさ、道化でも、なんでもなってやると。


周りの人がアリアを見て何だ何だとヒソヒソと話しているが俺はそれを気にせず勢いよく振り向く。そんな俺をアリアは目を赤く腫らしながら見て、アイリスは俺に何かを懇願する様な眼差しを送ってきている。


ああ分かっているさアイリス。 何とかしてみせるよ。


その眼差しに俺は分かっていると言う感情を込めて返した。 アイリスは俺のそんな眼差しを見て頷く。わかってくれた様だ。


俺はアイリスから視線を逸らしてアリアの涙で潤んだ瞳を飲み込む様に見つめ、カツカツと歩み寄っていく。


「アリア、アイリスよく聴いて。 昨日僕が気絶したのは2人の所為なんかじゃないんだ。」


「そ、そんな事はないです。私のせいで! 」


アリアは俺の言葉を聞いて強く否定してくるが俺は首を横に振り、包み込む様な笑顔を浮かべる。それを見たアリアは否定する気力を抜かれた様に黙り込んだ。俺はそれを見て話を続ける。


「まあ言いようによってはそうかもそうかもしれないけど。とにかく昨日のは僕が前からアリア、後ろからアイリスと魅力的な女性に挟まれた事によって興奮し、頭に血が上ったからなんだよ。 恥ずかしくて言えなかったけどこれが紛れもない事実。 しいて2人の悪いところを挙げるとするならば魅力的すぎた事かな? 」


最後に片目を閉じ、いたずらげに笑って見せると2人は俺を潤んだ瞳で見つめてくる。


「ルディ‥‥。」


「グス、坊っちゃま‥‥。」


よし! 成功したようだな。 こんな事を人通りが多いところで言うなんて死ぬほど恥ずかしいがよしとしよう。 若干というか、かなり見世物になっている気がしないでもないがいいさ。道化になると決めたからな。


「でも坊っちゃま。私が坊っちゃまを落とした事には‥‥」


アリアが少し納得しないといった顔でそう言ってきたので勢いよく詰め寄り空中に浮かんでそれ以上言わせないとばかりに口に人差し指を当てる。


「それ以上は言わせないよ。でもどうしてもアリアが気になるっていうなら僕の試合の時にありったけ応援してくれるだけでいいから。 それでチャラ、分かった? 」


「は、はい。」


アリアは頬を赤くして頷いた。 よし、これで俺を落とした事をアリアが気にする事はないだろう。


「よろしい。 じゃあ行こうか。」


それを見た俺をスタッ着地して闘技場に向け歩き出したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ