表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召転のルディア  作者: NTIO
壊れゆく日常
136/220

酔人の宴➀

「ちょ、ちょっとアリア、アイリス何やっているんだ! それとアリアは何で酔っ払っているの! 」


顔が仄かに赤くなったアリアと目に影が差しているアイリスを見て俺は慌てて止めに入る。

突きつけているナイフから赤い肉汁がポタリポタリと滴っているのを見て冷や汗が止まらない。アイリスは迷うことなくソーセージを製造するだろうし、いつものアリアはともかく酔っぱらった状態では何をする分からないからだ。


しかしまたなんで酔っ払ってるんだよ。 お酒なんていつ飲んだんだ?


「カエラこれ酒じゃないかい? 」


俺がそう疑問に思っているとクンクンとオレンジジュースを嗅いでいたカシアさんがそう言ってカエラさんにオレンジジュースを手渡す。

手渡されたカエラさんは同じようにオレンジジュースを嗅いでやっちまったという顔を作り頭を下げる。


「本当だ! ごめんなさい間違えちゃいました。」


それを聞いて俺も自分の前に置かれたオレンジジュースに見えるお酒が入ったコップを持ち上げて匂いを嗅いでみたがぷんぷんアルコールの匂いがする。


「‥‥本当だお酒だ。」


つまり全てのオレンジジュースと思っていたものがお酒だったと言うことか。だからオレンジジュースに手をつけていたアリアが酔っ払っている訳か成る程。

ん? ちょっと待てよ。 オレンジジュースに手をつけていたのってアリアだけじゃなかったよな? アイリスも飲んでいた筈‥‥。


「ま、まさか!? 」


「なぁにルディ? 」


その事実に行き着いた俺は勢いよくコップから目を逸らしてアイリスに顔を向ける。するとアイリスはニコリと笑って返してきた。 ん〜? 全く酔っている様に見えないぞ?

いたって平常運転だ。 男性の股間にナイフを突きつけている状況が平常運転というのは些か問題があるがアイリスなので仕方ないとしか言えない。


「アリア、アイリス。 とにかくお父さんから離れなさい。」


「坊っちゃまがそう言うなら‥‥。」


「ルディがそう言うなら‥‥。」


しかし、このままの状態はまずいのでアリアとアイリスに離れる様に言う。 すると2人はサッとナイフを退けた。しかし2人のナイフを捌きがプロなのだがどうしてだろうか?


俺が疑問に思い顎に手を当てて首を捻っていると此方に歩きよっていた2人はいきなり振り返りお父さんの頬を左右からかすめる様にナイフを投擲する。シュンっと勢いよく投擲されたナイフはお父さんの髪を数本切り落とし壁に突き刺さった。


お父さんは口をパクパクとさせてへたり込む。 冷や汗をビッショリと掻いていることから相当の恐怖なのだろう。かくいう俺も顎に手を当てたまま目を見開き額に冷や汗を浮かべている。それほどまでアリアとアイリスの後ろ姿は怖いのだ。


「「でも次、近寄ったら殺す。」」


そう言った2人の声は感情を一切宿しておらず、必ず実行するという確信を持たせる物だった。


どうしよう。 アリアが、アリアが完全に侵食されたぞ。第2のアイリスになってしまった。

どうすればいいんだレヴィ。助けて。


(そんな事どうでもいいわよ。 どうせ貴方に害なんてないんだし。それよりあの技術どういう事かしら? アイリスは知らないけどアリアはそんなスキル持っていなかった筈‥‥。一体どうして‥‥)


俺の救助要請をどうでもいいと切り捨てたレヴィはブツブツと思考の海の沈んで行った。


他人事だと思いやがってと言いたいところだがレヴィの言う通り確かにアリアは全く戦闘など出来ない。いやできなかった筈だ。 でもあの投擲技術といい、ナイフ捌きといい、どうなっているんだ?


「‥‥おっかないねぇ。 あ私、用事思い出したから戻らせてもらうよ。 色々と迷惑掛けたからお代はいらない。ゆっくり楽しんでいっといてくれ。カエラ行くよ。」


アリアとアイリスのその行動を見たカシアさんはわざとらしく手をポンと叩いてからへたり込んでいるお父さんの腕を掴んでズルズルと引きずり厨房へと消えていった。


「あ、お母さん待ってよ! ルディア君明日頑張ってね! 私応援に行くから、それじゃあね! 」


1人俺たちの所取り残されたカエラさんは俺に手を振ってお母さんを追っていく。それを見送った俺はさてどうしたものかと席に座ったアリアとアイリスに目を向ける。アリアはご機嫌に鼻歌を歌いながらお酒を飲んでいるし、アイリスは真横からじっと俺を凝視して来ている。瞬き1つしない。何がしたいのだろうか?


「‥‥。」


「あ〜坊っちゃま食べないんですかぁ〜? 私が食べさせてあげますぅ 」


どう対応して行こうかと考えているとそろそろ呂律が怪しくなってきたアリアがお肉を切り分けて俺の口に運んできた。 こうしてくれる事は嬉しいがまだ残っているアリアのステーキが冷めてはいけないので断る。


「いいよ。自分で食べれるからさ。アリアも自分の残っているでしょ? 冷めちゃうよ? 」


「そ、んな 私坊っちゃまに捨てられるんだ〜 」


笑顔で言った俺の言葉を聞いた瞬間アリアは絶句してフォークを取り落とし、両手で顔を覆い泣き出してしまった。それを見た俺はいきなりの展開に驚き混乱する。


「な、なんで泣くの!? 俺何かした!? ご、ごめんって何が悪いか分からないけどごめんってば 」


「坊っちゃま! 」


「は、はい! 」


必死にごめんと謝っているとアリアは突然がばっと顔を上げ詰め寄ってきた。 心臓に非常に悪い。というより酒臭い。


「坊っちゃまはどうしてまいあい、まいあい、女の子を増やしゅんですか? 私は坊っちゃまが幼い頃よりお慕い ヒック してますのにぃ〜 あの可愛さにやられつぁんれす〜 」


ダメだ完全に酔っ払いと化している。飲み会に行った事のない俺には酔っ払いの対処法など知る術がない。 流れに任せよう、なる様になるさ。


もう諦めモードに入った俺はそう言えばもう片方の酔っ払いはどうしたんだ? とアイリスに目を向ける。しかしアイリスは席から忽然と姿を消していた。


え? さっきまで隣にいた筈‥‥。


どこに行ったんだ? と店内に視線を巡らせるとこのテーブルから2、3席ほど離れた場所にいた。アイリスなにやっているんだ? そこのお客さん達と話している様に見えるが‥‥。


気になった俺はアイリスがいるテーブルに耳を傾けてみる。するとアイリスの可愛い声が聞こえてきた。


「おい何見てんだぁコラァ。 見せもんじゃねぇぞコラァ。」


アイリスゥゥゥ!? 何ほかのお客さんに絡んでんだよ! そしてなんでそんなメンチ切ってるの!?


「お嬢ちゃん。女の子がそんな言葉使っちゃダメだよ〜 」


アイリスに絡まれている仕事帰りと言ったおじさん達がにこやかにそう言った。

よかった。 アイリスの可愛らしい容姿とおじさんの人柄に救われたな。 事が大きくなる前に連れ戻そう。


そうと決めた俺は間近で未だに喋っているアリアを置いてアイリスの所に向かう。


「うるさい、とっとあり金全部だしやが、れい! 」


俺がそのテーブルに着いたと同時にアイリスがおじさん達に飛びかかろうとしたので後ろから羽交締めをして止める。ジタバタと暴れていたが掴んでいる相手が俺とわかった途端ピタリと大人しくなった。全く手をかけさせる。


「アイリスダメだろうが。すいません本当すいません。 」


「いいよいいよ。おじさんにはご褒美みたいなもんだ。」


頭を下げて謝るとおじさんは頬を染めてそう言った。うん、アイリスが飛びかかる前に止められてよかったな。 もし止められなかったら大変なことになっていたかも知れん。


「ルディ‥‥こんなとこでなんて大胆だよぉ〜 キャ♡ 」


鳥肌が立った肌をおじさんに見られない様にそそくさとアリアの所に戻っているとアイリスが頬に手を当てて恥じらい始めた。


「はぁ、疲れる。」


アイリスに聞こえない様にため息を吐いた俺は声に疲れを滲ませながら呟く。ちらりとアリアを見てみると此方に視線を向けてロックオンしていた。 まだまだこの酔人の宴は続くらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ