ボロい商売だぜ
今日の試合が全て終わった俺は控え室には戻らず、今日も観戦に来ているみんなの所に向かう。 試合がないのに控え室に戻っても仕方ないからな。
「あ、ルディア君。 お疲れと言っておこうかの。 」
「学園長来ていたのですか。」
「当たり前じゃ。 お主が学園の代表として出ているんだ学園長のわしが来なくて誰が来るというだ。 それにの、こんなビジネスチャンス逃すわけ無いじゃろ。」
そう言ってどっさりとお金が入った皮袋を持ち上げる。
クソジジイ、そっちが本命だろ。
「まあ、賭け率が低すぎてあんまり旨味が少ないがの。 お主、見ては行かぬのか? 掛けてもよし、見てもよしじゃぞ? 」
「いいえ、僕はもう帰ろうかと。 確実に儲かる話にしか乗りませんし、他人の試合を見てもつまらないので。 」
首を横に振って断る。 どっちかが勝つかわからない勝負にお金を賭けるなんてリスキーな真似はしない。 賭けるなら倍率が低くとも確実に勝つものだけだ。それ以外には絶対に賭けない。
「そうか。 お主がそう言うならしかたないの。 しっかり休んで明日に備えなさい。 わしは少しでもルディア君が有利になるように最後まで情報集めとして見ていくのでな。」
そんな俺を見て学園長は残念そうに眉を潜め、お金が入った皮袋を握りそう言った。
最後まで賭ける気満々じゃねえかよ。 立派な建前を作る前に欲望を抑えろ。だだ漏れだぞ。
「‥‥そうですか。 頑張ってくださいね。」
「坊っちゃま、お疲れ様でした! 」
「ルディお疲れ〜 」
学園長をジト目で睨んでいるとアリアとアイリスが駆け寄ってきた。アリウシア様は? と視線を巡らせてみると王族専用席の方にいた。お父さん達と見ていくのだろう。
「はいこれ坊っちゃまに頼まれていたものです。」
俺が王様達と楽しそうに喋っているアリウシア様を見てそう思っているとアリアがパンパンにお金が入った皮袋を渡してきた。アリアに俺に賭けて貰うように頼んでおいたのだ。
「ありがとうアリア。」
それを受け取りニヤリと笑みを作る。 第1試合、第2試合を通して約2倍ほどになったのではないだろうか?
「お、お主どれだけ掛けたのじゃ? 」
皮袋を開け、中身を確認してボロいぜとほくそ笑んでいるとクソジジイが口元をひくつかせながら聞いてきた。それに皮袋の口を閉じて腰に下げてから答える。
「第1回戦に金貨9枚、それで儲けたお金を第2回戦に全額と言う具合ですね。」
「9枚ってお主、よほど自信があったのだな。貴族でもをそこまで掛ける者はおらんぞ‥‥。」
クソジジイは俺の掛け金に慄く。 それはそうだ。日本円に換算すると大体1400万円前後っていった所のお金を賭けていたのだからな。儲け額のことを考えるだけで笑いが止まらない。
「いえいえ、それほどでも。」
「褒めてないわい。まったく、もう少し風情と言うものをだな‥‥」
はぁ、とため息をついてからクソジジイは賭けとは何たるかを語り始めたので無視してアリアとアイリスに目を向け話しかける。
「アリア、アイリスはこれからどうする? 見ていきたい? 見てき行きたいなら僕も付き合うけど。」
「いいえ坊っちゃま以外の試合を見ても楽しくありませんのでいいです。」
「私も、ルディ以外の試合って地味って言うかなんて言うかって感じであんまり楽しくないからいいよ。 それにルディ以外の試合を見ると目が痛くなってくるの。」
うん、それは眼科行った方がいいと思うよ。何だよ俺以外の試合をみると目が痛くなるって、どんな拒絶反応のでかただよ!
「そ、そっか なら帰ろうか。ちょっと早いけど帰りに夕飯でも食べよう。 」
顔を引き攣らせながら頷き、空を見上げる。
太陽はまだ沈んでおらず、夕方一歩手前と言ったところだろう。少し早いが夕飯を食べたい。 お腹すいた。
「「はい! 」」
俺の提案に元気く頷いたアリアとアイリス。さて行くとするか。
悦に浸っているのか知らないが未だにクソジジイがグダグダと語っているが、ほって置こう。ほら話しているの邪魔したら悪いし。
ちらりとクソジジイを見てそう結論付けた俺はアリアとアイリスを連れ闘技場を後にしたのだった。
「‥‥‥と言うわけでだな少しずつ掛けて楽しむものなのじゃ。分かったかの? あれ?
っていない!? 」
そう誰もいない方向に向け、叫び声を上げていた老人が闘技場にいたといとかいなかったとか。




