ザコスキルに使い方
さて、どうしよう。確かあいつのステータスの能力値は全て300、スキルは土属性適正〈lv:極〉魔力操〈lv:7〉だったはず。職業は〜、何だっけ?まあ職業はいいだろう、レベルアップした時に関係するだけだし。ここからが問題だ。どうやって俺が勝つか…魔法系のスキルは、青山と山田さんの試合であった様に必ず詠唱をしている。そこに付け入る隙が、あるか?いや、そもそものスペックが違いすぎる。攻撃したところで、せいぜい蚊に刺された程度だろう。せめて俺に戦闘系のスキルがあれば、クソ!
…ん?スキル?
確か、《技》が使える様になったスキルがあったな。いやあれは使えん、せいぜいキャーと、黄色い声援が送られてくるだけだ。高木には効くかも?……止めとこう、嫉妬であいつの強暴性が増すだけだ。
これは本当に詰みだぞ。
「双方準備はよろしいですか?」
「タンマ」
「分かりました、お早めにお願いします」
おれのゴミスキルどもは睨む、歩く、妄想だ。これを有効に使わねば、俺が殺される。(青山に)睨むは、ダメだ、小型犬が睨んできたところでほんわかしかしない。妄想もダメだ戦ってる途中にスキルを使ってまで何を妄想するというのか。…現実逃避だな。
歩くは、これも、いや条件を満たしたらいけるかもしれない!あいつがこの条件の一つーを認めるかどうかだな。
「なー、高木。 ご存知の通り俺クソ雑魚だろ? だからさ、ハンデくんね?」
それを聞くと高木は、イヤラシイ顔を浮かべた。
「それを俺が聞くと思ったか?な訳ないだろ。 お前は前から気に食わなかったんだよ。青山さんと山田さんと仲良くしやがって。だがそれもこれまでだ。 俺は力を手にした、この力で欲しいものを全て手に入れてやる。まずはお前の醜態を青山さんと山田さに見せつけてやるよ。感謝しろよ。クソ雑魚くん。」
格好つけてる様で申し訳ないのですが、セリフが似合わなすぎて笑いをこらえるのに俺は死にそうです。
「そーなんですかー、その力とやらはクソ雑魚にハンデをあげられないような素晴らしい力なんですねー」
おーおー、赤くなってる。分かりやすいな。ある意味純粋なのかな?
「そんなことはない! 良いだろう、ハンデの一つや二つくれてやるよ。」
掛かった。直情的な奴は扱いやすい。
「ありがとよ。じゃあハンデとして、俺が触れたら勝ちってことで」
「それだけで良いのかよ、もっと良いんだぜ。俺は強いからなぁ〜」
アホだ。 こいつさっきと言ってること違うぞ。
「いーです、いーです」
「龍太さま、よろしいですね?」
「大丈夫ですよ。」
それを聞いた教官は、試合の合図を出す。
「試合開始!」
「嬲り殺してやる!全ての母なる大地よ、其方にあがなす愚かな者へ戒めを【アースバインド】」
俺の足下に魔法陣が浮かぶ。それを後ろに下を向きながらステップで避ける。あれは名前からして拘束系か、そう思った瞬間魔法陣からウネウネと土の触手が伸びてきた。うわ、キモ。
「あれーもう諦めちゃったのかなー、でももう謝っても遅いぜ。」
「……。」
無視して俺は下を向きながら高木に向け歩き出す。
「何とかいえや!」
「ぼそぼそ(【歩く:ムーンウォーク】 【歩く:ムーンウォーク】)」
「っふん、怖くて声も出ないってか。俺様の慈悲で早めに終わらせてやるぜ。」
「ぼそぼそ(【歩く:ムーンウォーク】 【歩く:ムーンウォーク】)」
「全ての母なる大地よ、傲慢なる者を喰らえ【アースバイト】!」
俺のだいぶ前に魔法陣が浮び、地面がギザギザに割れ、勢いよく閉じた。それを見て、高木は目を見開いた。
「なっ、なに!?お前なにをした!」
やっぱりそうだ、魔法は発動した対象に作用するんじゃなくて、発動者が発動する場所を設定しているんだ。
「おまえは、もう俺のミラージュステップに掛かっている。俺を捉えることはできない。」
もちろんブラフである。はたから見たら、10歩歩いて5歩ムーンウォークでさがっているだけだ。さぞ滑稽だろう。でもそんなことを真正面から見てる高木は知らない。
「ふざけるな!なにがとらえられないだと? まぐれで避けただけで図にのるな!!」
残念おれは、ただ下を向きながら歩いては戻るを繰り返してるだけだ。周りから笑われてるぞ?
「クソクソクソ、クソ! 全ての母なる大地よ、傲慢なる者を喰らえ【アースバイト】」
またもや俺の遥か前に現れる魔法陣。
「ありえない、そんなことはあってはならないんだ!」
全く何処からその自信が来るんだ?まあそのまま、平静を失ったままでいてくれ。これだけ歩いてるのにまだついてないことをを悟られたら、俺の作戦は終わる。
「どうしたんだ?嬲り殺すんじゃなかったのか?ぼそぼそ(【歩く:ムーンウォーク】)」
見る見る顔が赤くなっていく。
「まだこれからだ! 母なる大地よ、其方にあがなす愚かな者へ戒めを【アースバインド】」
またもや、俺の前に魔法陣が現れ土の触手が出てきた。そろそろかな? このくらいなら届くだろ。高木との距離を確認した俺は走り出す。
「無駄だ! 母なる大地よ、其方にあがなす者へ戒めを【アースバインド】!」
芸がないやつだ。意地になって同じ魔法ばかり使ってくる。おかげでやり易かったよ。まあ俺がそうするように、ヘイト管理してるんですけどね。
...
俺の真後ろに現れる魔法陣。
「これで、お前は詠唱する時間なんてないな高木。」
「くるな!くるな!くるなー!!」
俺はラストスパートをかけ、駆け抜ける。そしてついに高木に触れた。
「はい、タッチ。」
「しょ、勝者龍太様!!」
「「「ううぉーーー!!」」」
歓声が鳴り響く。
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