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召転のルディア  作者: NTIO
壊れゆく日常
129/220

オスティムレクイエム

「や〜ん もう可愛い〜♡ はいルディアくんもう一個 」


そう言って焼き菓子を手に持ち片手で押さえながらあ〜んとしてきた。

それを俺は口を開けて頬張る。うん美味しい。


あのバーカスが俺のお菓子を粉砕してからしばらく経って今では出場者達の女性達に餌付けされている。 自分の手を使わずにお菓子を食べられるなんてここは楽園か!?


俺が心の中でそう思っていると控え室に係りの人が弓を背負った1人の女性を連れて入って来た。あの人はさっき試合に行った人か。ん? 確かさっき控え室を出て行った2人で、1回戦が全て終了したんだったか?という事は‥‥。


「第2回戦、第一試合を行いますのでルディア選手、テレーゼ選手舞台までお越しください。」


そう呼ばれたので俺はモグモグとしながら立ち上がる。

この試合が終わったら今日は終わりか。バーナドの時みたいに気を抜かないようにしよう。

俺は手をボキボキと鳴らして気合を入れる。


「あっちゃ〜 ルディアくんと試合か〜でも本気でいくからね。」


俺にあーんをしてくれたお姉さんが手をパンパンとお菓子の粉をはたき落として、うーんと伸びをしながら言ってきた。この人テレーゼっていう名前なんだ。ほぉ〜ん


だが、たとえお菓子の恩があろうと気を抜かないと決めた俺はそれに笑顔で答える。


「僕も本気でいかせて貰います。」


「ありがと、じゃあ行こっか。」


俺の答えを聞いたテレーゼさんはニコリと笑って俺の手を引く。

しかし、俺はテレーゼさんの手がゴツゴツと硬いことに驚いた。 これは剣だこ、か?

分からないが此処まで硬くなるまでやるとは‥‥。


「はい。」


かなりの衝撃を受けたが俺は驚きを顔に出すことなく、笑顔で頷く。

スタスタと通路を歩いていき、舞台まで出て行こうとした所で係りの人に止められた。


「少しここでお待ちください。 マイクさんの合図が出てからでお願いします。」


ふーん、演出という奴か。


俺はそう言うのは好きな方なので問題ない。 テレーゼさんも同じなのか頷いて了承した。

俺たちが舞台へと出る所で立ち止まっているとマイクさんの声が響いた。


『先程の弓使い、疾風のゼルビアと片手剣使いのモグモの戦いは大変盛り上がりましたが、しかし! 次の第2回戦第一試合に登場する選手はさらにすごい戦いを見せてくれるでしょう! お前ら声を枯らす準備は出来たか! 』


「「「ウォォォォ!! 」」」


「「ルディア様〜!! 」」


「すごい人気ね。それはそうよね〜 ルディアくんはこんなに可愛いんですもの 」


そう言って頭を撫でてくるテレーゼさん。 しかし、そういうテレーゼさんも美人だし人気があるのではないだろうか?


「ありがとうございます。 お姉さんも綺麗ですからファンも多いんじゃないんですか? 」


「アハハ、少しだけね‥‥。」


俺の問いかけに頭を掻きながら苦笑いをする。ん? 何か様子がおかしいぞ?


『では入ってきてもらいましょう! ルディア・ゾディック選手とテレーゼ選手! 』


頭を傾げて、ん? と思っているとマイクさんの合図が聞こえた。テレーゼさんの様子が気になるが俺は舞台へと出て行く。


「「わぁぁぁぁ!! 」」 「「ルディア様〜! 」」


すると俺に対する声援が爆発するように上がった。それに向かって俺はいつもの如く笑顔で手を振って答える。しかしと俺は最前列のルディア教の人達に目を向けるとみんな祈りのポーズをしていた。周りの人が少し引くくらいの綺麗な祈りのポーズだ。 普通に応援して貰いたい、普通に‥‥。


「テレーゼ! 」


俺が心の中で愚痴っているとテレーゼと声援が聞こえてきた。普通の声援じゃないか。何であんな微妙な顔をしていたんだろう?


「テレーゼは俺の嫁じゃぁぁ!! 」


「はぁ!? 俺の嫁じゃボケ! 」


「やんのかゴラァ! 」


俺がますます謎に思っているとそう言って男達が掴み合っているのが見えた。 なるほど、な。


それを見てなるほどと納得する。個性的なファンが付いているようだ。俺には負けるが。


「‥‥アハハ、どうして毎回ああなるんだろう。ルディアくんが羨ましいよ。まともなファンが多くて。私の何てあれだしなぁ。」


はぁ、とため息をついてから俺にそう言ってくるテレーゼさん。ははは、テレーゼさん。アレを見て尚その言葉を言えますかね?


「それを僕に言いますか? 」


テレーゼさんを真剣な眼差しで見た俺はテレーゼさんから視線を逸らしてルディア教の人達に目を向ける。


「皆の者! 第1回戦の折は我らルディア教の賛美歌がルディア様を元気付け勝利にほんの少しでも導いたと言って過言ではない。と言うわけで聖歌隊だけではなく、総員であたり全力で行こうと思う。良いか! 」


「「はい! 」」


すると、祈りのポーズを解いたルディア教の人達がリーダーの号令に大きく返事をした。


過言だからな! 思いっきり過言だから! 俺の心をへし折りに全力で来ないでくれ。


「よろしい、ではルディア様賛美歌第8番オスティムレクイエム さん、はい! 」


「「「〜〜♪♪ 」」」


俺が心の中で血の涙を流していると歌い始めた。無駄に上手いのが腹たつ。それとこの曲って誰が作っているんだよ。上手いなおい。 文句言う隙が見当たらねぇ。


「‥‥ごめんなさい。 私の方が可愛く見えてきたわ。」


そう言って俺にペコリと頭を下げてくるテレーゼさん。 フフ分かってくれればいいんですよ分かれば。それを見た俺はテレーゼさんに向けまるで仏のような笑みを浮かべる。


「分かってくれればいいのです。」


俺たちがそんなやりとりをしているとマイクさんが選手の紹介を始めた。毎度毎度やるのだろうか?


『テレーゼ選手は片手剣と弓を使う変則的な戦い方をする事で有名です。近距離ではまるで踊るかのような剣撃で攻め立てその剣撃から逃れるために距離を取れば正確且つ強力な射撃を放ってくる強力な選手です。 対してルディア選手は圧倒的攻撃力、防御力、スピード、回復力と全てを備えた正真正銘の怪物、一体どのような試合になるのか見ものです! 』


『ルディアは強力な力を持っているとはいえまだ子供。 テレーゼの変則的な剣撃に混乱するかもしれないな。』


『おっと!? ウォルフガンフさんはルディア選手が苦戦すると予想するそうです! さてそろそろ観客の皆さんも待ちきれなくなってきたでしょう! 始めさせて貰います!

第2回戦、第1試合 試合開始! 』




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