龍王剣舞祭予選④
自分の魔法が食い破られたのがショックなのかそれとも迫り来るプラズマの光線に腰が抜けたのかペタンと地面に座り込んでしまった魔法使い。
何やってるんだ! 避けないと消し飛ぶぞ!
俺はそれを見て心の中で舌打ちをしてからその魔法使いを守るように重力操作を発動しようとした所で魔法使いとプラズマの光線に割り込む形でまだ残っていた出場者達が立ち塞がった。
「諦めるな! お前それでも冒険者か!? 例え敵が圧倒的な力を持っていたとしてもそれでも突き進む。それが冒険者だろうが! 違うか!? 」
2本の剣をプラズマの光線に向かって構えて魔法使いに檄を飛ばす男性。
「クリプトの言う通りだよ。お嬢ちゃん。 若いもんがそんな簡単にあきらめるんじゃない。」
そう言って魔法使いに笑いかける控え室で俺に名前聞いてきた老人。
「そうだぜ。 情けない顔をみせるんじゃねぇ。 奏者シンセルニアの名が泣くなぁ。」
肩に槍を担ぎおちゃらける様にいう青年。
「みんな‥‥。 そうだよね諦めちゃ、ダメだよね。」
その激励を受けた魔法使いはそう呟いて立ち上がった。それを見て俺は少しジト目になる。
‥‥何お前らやってるの? 何でそんなドラマチックな事やってるの?
羨ましい。
「よく立ち上がった! 皆んな、ここで魔力が尽きても構わない! 最高の技を出せ! 行くぞ! 【二刀流剣術:炎雷波】ァァァ!! 」
俺がそんなことを考えていると、クリプトと呼ばれていた男性が片方の剣に雷をもう片方の剣には炎を纏わせて同時に振り下ろした。すると炎と雷の斬撃が剣から放たれ最終的に炎雷の斬撃となりプラズマの光線に迫る。
「これは若い者に負けてられないな。 老ぼれも頑張るとするか。【体術:蒼天撃】」
「ありとあらゆるもの焼き尽くす地獄の業火よ、全てを灰塵と為せ 【インフェルノ】! 」
「大気中に満ちる風よ、この世にあるもの全てを一切合切を切り刻め【トルネード】! 」
「【槍術:螺旋突き】! 」
「残り少ないけどこの攻撃に私のありったけの魔力をつぎ込む! 凍てつく氷槍よ、敵を貫け【アイスランス】! 」
そうクリプトに続けとばかりに各々技を放って行き、ドカァァァン と俺が放ったプラズマの光線と出場者達の一斉攻撃が辺りに余波を撒き散らしながら激突する。
大気は大きく揺れ、眩い閃光が辺りを照らす。
プラズマの光線を出場者達の一斉攻撃がゴゴゴと、押し返そうとするが徐々に押され始めた。
そりゃあまあ、ねえ。勝てるはずはない。
それを見た俺はこっそりと、少しづつだけ上方にプラズマの光線を重力操作で逸らしていく。
あれだけやったのに押し切られて全滅って悲しすぎるからな。それにあの人たちが死んじゃったら俺が失格になる。
俺がそんなことを考えながら裏工作をしているとついに出場者全員の一斉攻撃を押し切ったプラズマの光線はシュン! っと上空に伸びて行き、やがて消えた。
それを見た出場者達はバタバタと倒れていく。 魔力が切れた様だ。
今まで気力で意識を保っていたのか。
「お、俺たちの総攻撃を持ってしても押し負けたか‥‥。」
剣を杖にして何とか立ちながらクリプトが悔しそうにそう言う。
「いやいや、あの攻撃を逸らしただけでも凄いですよ。」
「嘘言え、わざと逸らしただろう。まあいい。あのままだったら俺たちは全員死んでいた。だがこれだけは言っておくぞ。俺はお前を必ず超えて見せるからな。」
俺をキッと睨みそう言ってパタリと倒れた。
む、バレていたか。気づかれない様にやったんだけどな。
『凄い凄いぞ! なんて凄まじい戦いだったんだ! 一体誰がこんな戦いを予想できたでしょうか!? 予選のしかも第1試合で本戦をも超えるだろう戦いが起こるなんて! 』
『本当に凄いな。 ルディアの圧倒的な力に目が行きがちになるが、クリプトを主体とした連携にも眼を見張るものがあった。コンマ1つでもズレれば一瞬で勝負がついていただろう。 これからの活躍に期待だ。』
『はい、ウォルフガンフさん有難うございます。これにて第1試合でAブロック終了です! 今舞台に立っているルディア・ゾディック選手とルディア選手を除いて最後まで舞台に立っていたクリプト・グレイス選手、本戦決定〜! 』
「「「ウォォォ!! 」」」
マイクさんがそう告げると闘技場全体を揺らす様な歓声が上がった。
「ルディア〜! こっち向いて〜! 」
その声援に俺は全てのスキルを解いてから、笑顔で手を振り答える。
「「「キャーー! 可愛い♡ 」」」
俺はその黄色い声援を浴びながら舞台を後にする。 倒れている人たちは係りのが運んでいたので大丈夫だろう。
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