予選前の控え室
「流石に毎年2000人参加するだけあって混んでるな。」
闘技場の中に入り受付で控え室の場所を聞いた俺は控え室にたどり着いて早々そう呟いた。かなり大きめの控え室に武器を持った屈強な男達やアマゾネスのような女戦士、魔法使い風の格好をしている人達と強そうな人がひしめき合っている。クソジジイが言っていた通りこの大会は猛者が多く集まるようだ。この人達が予選の俺の相手となる人達となる訳だが。
しかし、受付の人驚いていたな〜。え ぼ、ぼく本当に参加するの? 誰かに無理やりやらされてない? と心配そうに聞かれた時はなんて答えようか迷った。今回のはクソジジイに無理やり参加させられた様なものだからな。まあ、苦笑いで誤魔化して足早に此処に逃げてきたが。因みにアリアとアイリスはその時に分かれた。 控え室には出場者以外は入れないそうなのだ。
俺がそんな事を考えていると、魔法使い風の女性が俺に近づいてくる。
「ぼくどうしたの? 迷子? お姉さんが案内してあげようか? 」
そう屈んで心配そうに俺を見つめてくる魔法使い風の女性。いやお姉さんでいいか。
どうやら俺が迷子で此処に来てしまったと思っている様だ。同じ控え室の出場者達も俺を心配そうに眺めている。
うっそ、いい人たち過ぎないですか? こういう時って1人くらい、ゲヘヘヘ おい小僧此処はお前の様な乳臭いガキが来る場所じゃねぇんだよ とっとと帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな!
とか言う人がいるもんじゃないんですか?
「僕も出場者ですので大丈夫ですよ。 心配してくださり有り難うございます綺麗なお姉さん。」
「「「‥‥え? 」」」
俺がそう答えるとガヤガヤと騒がしかった控え室が水を打った様に静まり返り、この控え室に居る出場者達全員が目を見開いて俺を凝視してくる。
やっぱりこうなったか、こんな歳で参加なんてありえないんだろうな。
「ぼ、僕今なんて言ったの? お姉さん耳が悪くなったみたいだからもう一度言ってくれないかな? 」
そう顔を引き攣らせながら聞いてくる。それに俺はニッコリと笑顔を浮かべて答えた。
「僕も出場者ですので大丈夫ですよ、綺麗なお姉さん。」
「おいおい、やめとけって坊主。遊びじゃねぇんだ下手したら一生残る傷が出来るかもしれねんだぞ! 」
再び俺が言った言葉に硬直が解けた1人の男性が諭す様に言ってくる。
俺の事を心配している様だ。でも傷がついたとしても一瞬で治るんだよな俺。
しかし、心配してくれるのは有難いので丁寧に返す。
「大丈夫です。 」
「大丈夫ってお前、俺はお前の事を思って! 」
しかし、男性は納得できないのか俺の肩を掴もうとしてきた。 大丈夫って言ってるのにしつこいな。今思ったんだけど宣伝のために来てきた制服全く役に立たなくないか?
この制服着ている時点で大会に出場する力があるって事くらい分かると思ったんだけど。
あ、そうか。 学園の制服は黒って事で認識されているのか。 それで白い俺の制服はどこかの似た学校の制服だろうと思われていると。
俺が迫って来る手を見ながらそんな事を考えていると、男の腕がしわがれた手に掴まれた。
「そこまでにしときなさい。 」
「何するんだよ爺さん。」
男は自分の手を掴んだ紺色の道着服をきた50代程の男性を睨みつける。
「まあまあ、お主はこの子が怪我をしないか心配で言っておるのじゃろう? 」
だが、その男性の睨みを物ともせずに目を見つめて質問した。
このお爺さんかなり強そうだ。
「そうに決まってるだろ! この大会がどれだけ危険だと思ってるんだ! 」
「それは分かっておる。 しかしそれは強ければ問題ない、違うかな? 」
「‥‥おい爺さんもしかしてこの坊主が強いとでも言いたいのか? 」
強ければ、そう強調したのを聞いて男性は目に猜疑心を宿らせる。
「それはまだ分からん、儂の推測が正しければじゃがな。 ぼく名前を教えてくれないかい? 」
もしかして、この人俺の事知っているのか? まあ別にいいかこのまま絡まれ続けるのも嫌だし。
「僕の名前はルディア・ゾディックです。」
「ル、ルディア・ゾディックだと!? あの聖魔ルディアか! 」
「学園史上最強の神童‥‥。」
俺がそう自分の名前を告げると男性は声を荒らげお姉さんは口に手を当てて驚いた。
なんだよ。俺の名前知っていたのか。なら最初から名乗っとけばよかったな。
「やっぱりか。 その制服に容姿からそうかも知れないとは思っていたが‥‥。この大会荒れるな。」
顎に手を当てて、顔を険しくさせるお爺さん。
そんな俺たちを見ていた他の出場者達にも俺がルディア・ゾディックという事が広まりザワザワとなり始めた所でドアから係りの人が入ってきた。
「予選Aブロックが始まります。 皆さんついて来てください。」
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