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召転のルディア  作者: NTIO
壊れゆく日常
115/220

妖怪クソジジイ

「学園長、龍王剣舞祭なんて大層な名前が付いているのに意外と人が少ないのですね。」


俺は龍王剣舞祭が行われるという闘技場に向かいながら人通りを見てそう言う。いつもより少し人通りが多いだけで普段と大して変わらない。名前からしてかなりの規模の大会で人気も凄そうだなと思ったのだが。


「それはまだ予選じゃからじゃよ。 本戦に合わせて人が集まってくるんじゃ。」


そういうことか、予選は人集まらないのね。


「へー そうなんですか。あ、そういえばまだその龍王剣舞祭の事とか大会の予定とか聞いてなかったんですけど‥‥。」


「そうじゃったな。龍王剣舞祭は毎年王都で行われている王国主催の大会で、毎年2000人ほど参加者が冒険者や騎士から集まる。参加者の年齢制限はなく貴族も多く見に来ることから仕官希望の猛者共が多く参加することで有名じゃな。ルールは金的目潰し以外は特に禁止されてないの。大会の予定じゃが2日を通して予選を行い1日休みを挟んで本戦じゃ。」


ふーん年齢制限されてないから俺が出られたのか。でもその年齢制限されてないのって老練の冒険者とか騎士の人達のために設けられたものじゃないか?

子供が参加出来るように想定したものじゃないと思うんだけど。誰も7歳児が参加するなんて思っていないんだろうな。俺だったら思わないし。


「そんなに参加者が居るんですね。 ん? そういえば勝ち負けはどうやって決めるんですか? 」


「ああそれは、場外になるか気絶又は戦闘不能、降参で負けになるの。」


場外があるって事はもしかして‥‥。


「つまり、相手を浮かべて場外に追い出せばOKという事ですね! 」


「それはやめてくれ。 頼むから。」


俺がそう名案だとばかりに言うと、頭を下げてやめてくれと言われた。

まあそんな事しないけどな。


「冗談ですよ、そんな見応えがない事はしません。せいぜい空中に浮きながらひたすら隕石を落とす事しかしませんから。」


「そ、それもう〜ん。これでも一応商業なんじゃよ。」


そう言って俺の作戦を却下してきた。


え、これは本気で考えてたんだけど。 隕石の雨を降らせるって見栄えいいと思うんだけどな〜。


「え〜分かりましたよ。 めんどくさいな 」


昨日の晩夜遅くまで考えて思いついた事を否定されて少しむくれながら渋々承諾し、最後にボソっと聞こえないように呟く。


「今お主面倒くさいって言ったじゃろ! 」


クソジジイは俺のつぶやきを年寄りとは思えない聴力で聞き取りそう言ってきた。嘘でしょ? ほとんど声出さないで言ったんですけど。本当に聞こえているのか? 試してみよう。


「何言ってるんですか? そんな事言ってませんよ? チッ、聞こえてたかクソジジイ 」


ニコッと笑顔を浮かべ最後に表情を崩さずに先程と同じ声量で呟いた。


「ほらまた言った! 絶対わざとじゃ! 年寄りをからかうでないわ! 」


そう激昂するクソジジイ。 うわまじで聞き取ってやがる。妖怪かよ。


「うわ〜妖怪クソジジイが怒ったぞ〜アリア、アイリス行くよ。」


俺はそう言って前方に見えてきた闘技場に走り出す。 あそこまで聞こえるって事は部屋で迂闊に独り言も言えないじゃないか。 厄介な能力持ってやがる。


「あ、ちょっと坊っちゃま! 」


「ルディ待ってよ! クソジジイ後でもぎ取る。」


アリアは走り出した俺を追いかけ、アイリスはクソジジイに振り向いて頭を指差し不吉な事を言ってからアリアの後に続いた。

ア、アイリス一体何をもぎ取るんですか? その行為は一定の年齢を超えた人にとっては死刑宣告と同じくらい恐ろしいものなんですよ?


俺の呟きが聞こえていないアリアとアイリスにとってはいきなりクソジジイが俺に因縁をつけて怒り始めたように見えるんだろう。後でアイリスのご機嫌取らないとクソジジイの髪の毛がもぎ取られてしまう。はぁ、何してご機嫌取ろうかなぁ〜


俺は走りながら後ろについてきているアイリスをちらりと見て、そう考えるのだった。

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