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召転のルディア  作者: NTIO
壊れゆく日常
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伝染する狂気

「王都にはどのくらい居るのだ? 」


そう歩きながら聞いてくるお祖父さん。


「約1ヶ月と言ったところですね。」


「そうか。ならたまにでいいから顔を出して試合の相手をしてくれまいか。道場では儂の相手になる奴が居なくて退屈なのだ。」


なるほど、確かにそれは暇だな。よく分かる。

俺としても、お祖父さんと戦えるのはいい事なので快諾する。


「いいですよ。 何なら毎日行きましょうか? 」


「おお! それいいな。 是非そうしてくれ。」


俺の返事を聞いたお祖父さんは、まるで子供のように目を輝かせてそう返してきた。

言葉以上に退屈を感じていたのだろう。


「ああ、では僕たちはこれで。」


そうこう話しているうちに門に着いたので俺は振り返りそう言った。


「そうだな。お前なら大丈夫だろうが気をつけるんだぞ? 」


「「‥‥。」」


「はぁ、まったく大人らしくない。ルディ君はあんな大人になってはダメだぞ? 」


シュペンザーとガンゼルフの2人の準師範がそっぽを向いて不貞腐れているのを見てアルフォルさんはため息を吐いた。

確かに子供っぽいとは思うが俺は苦笑いで返す。


「ハハハ、アルフォルさんさようなら。」


その言葉を言って俺はアークライト流剣術の道場を後にする。カツカツと舗装された石畳を歩いて宿に向かって帰っていると後ろからアリアとアイリスの話し声が聞こえてきた。

そう言えば俺抜きでどんな事話しているんだろう。

き、気になる。聞くか? いやいや女の子の話を盗み聞きするなんて最低だぞ。俺。

でも、気になる。あ、これは聞いてるんじゃなくて聞こえて来ているんだ。なら仕方ない。

うん、盗み聞きしているわけでは決してないぞ。


「まさか剣神ウォルフガンフを倒してしまうとは流石だなぁ。」


え、アリアって俺以外にこんな口調なのか? 少し寂しいな。


「だから言ったでしょアリア。 人間ごときがルディには勝てないって。」


何だよ人間ごときがって。 アイリスは俺の事を何だと思っているんだよ。その言い方だと俺が魔王かなんかに聞こえるぞ。言い方変えてくれ。


「そうね、レーティシアの言う通りだわ。」


「でもあのパンダ?だっけあいつがルディに雑魚って言った時、殺してやろうかって思っちゃった。」


「うんうん、後ろからグサッとね。」


パ、パンダって‥‥。 それより、これがガールズトークというやつなのか。何て物騒な事を話しているんだ。しかもアイリスの闇がアリアをここまで侵食していたとは。アリアまで陽気な声でそんな事を言うなんて‥‥。


「顔だって、強さだって、将来有望なのもルディの方が上なのにどんな頭をしてるんだろ?」


「多分ゴブリンくらいじゃないかな? ほら、頭の悪さ滲み出てたし。」


「確かに! 」


「「アハハハハ 」」


こ、怖い。今度から女の子の前で下手を打たないようにしよう。もし悪口叩かれでもしたら俺のガラスのハートが砕かれてしまう。俺はそう心に決め後ろに振り返る。これ以上2人の怖い面を見たくないからな。


「ね、ねえ2人とも小腹すいたから何か買っていかない? ほらあそこの屋台とか。」


そう言って俺はクレープを売っている屋台を指差す。


「そうですね。少しお腹空いてますし。」


「美味しそうだね〜 」


よし、いつもの2人に戻ったぞ。2度と盗み聞きはしない。

2人がクレープに食いついてきたので俺はその屋台に向かう。


「お姉さん、これを3つ下さい。」


「はいよ。 銅貨12枚ね。」


「はい。」


「まいどありまた来ておくれ。」


俺は広告塔をやる事で学園からもらったお金から代金を払ってクレープを受け取る。因みにこの学園からもらったお金はかなりの大金で一般の平民の家族が3年は余裕で暮らせるくらいの額だった。しかも、働き次第ではもっと貰えるらしい。ボロい仕事だ。だってまだ一回も仕事らしい仕事してないし。


「はいアリア、アイリス。」


心の中でほくそ笑みながらクレープをアリアとアイリスに渡す。


「ありがとうございます。坊っちゃま。」


「ありがとうルディ。」


「ん〜美味しい〜 」


「本当に美味いですね。」


2人は先ほどの雰囲気も微塵も出さずに美味しいそうにパクパクとクレープを食べている。


これを見ていると刺すとか殺すとか言っていたことが嘘みたいに見える。でも、ほっといちゃダメだよな。アイリスをこのままほっといたらいつか俺の知らないところでグサリとするかもしれないし。はぁ〜気が重い。


俺はキャッキャと笑いあっているアリアとアイリスを横目に見ながらクレープを頬張り、どうしようかなと考えるのだった。


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