剣神 ウォルフガンフ
手加減していたとはいえ俺の抜手を止めるとは何者だ?俺は視線を鋭くして俺の腕を掴んでるごつい手の主に目を向ける。
すると、白髪を綺麗に後ろに纏めた60代程の男性が目に入った。その男性は体に無駄な筋肉が一切付いてなく、まるで戦う為だけに特化されたような戦闘マシーンを思わせる。
しかし、いつまでも黙っているわけにもいかないので、俺は視線は鋭くしたまま答えた。
「当たり前です。剣を殺す気で剣を抜いたら殺される覚悟ができたという事ですから。」
俺の答えを聞いたその男性は視線を鋭くし俺に対して重圧をかけてくる。それに応じ俺も体に殺気を漲らせていく。
しかし、突然その重圧はふっと消えた。
「ふん、面白いわっぱだ。 名を何という? 」
先ほどの険悪な雰囲気は何だったんだ? と言いたくなるくらい表情を緩めそう掴んでいた俺の手を離し聞いてきた。何なんだこの爺さん。
「ルディア・ゾディックです。 」
俺の名前を聞いた瞬間爺さんは目を見開き、頷いた。
本当に何なんなんだよ。
「なるほど、貴様が。儂はウォルフガンフ・アークライト、孫が世話になってる。」
え、アークライトってクロエと同じ‥‥。
「‥‥もしかしてクロエのお祖父さんですか? 」
「ああそうだ。 」
腕を組みそう言ったお祖父さん。マジか、似てね〜!
ん? 待てよ、確かクロエがお祖父さんは道場の師範代しているって言ってたな。
なるほど、確かに強そうだ。 俺が顎に手を当て結構前の事を思い出していると、お祖父さんの突然の登場に硬直していた俺に切りかかっていた男が復活してふざけた事を言い始める。
「あ、あなたはアークライト流剣術師範代、剣神ウォルフガンフ!? よ、よかったあのガキが俺たちをいきなり襲ってきたんです! 助け グヘ!? 」
俺が目に殺気を宿し、首を捻じ切ろうとしたところでお祖父さんがその男の顔に裏拳を食らわせた。
チッ、さっきからお祖父さん俺が殺そうとしているのを妨害してないか?
「馬鹿者が全て見ておったわ。よくもぬけぬけと言えるものだ。」
鼻から大量に出ている血を手で押さえながら蹲っている男を睨みつけながらそう言うお祖父さん。
「ひ、ひ〜! 」
その男もまさか嘘をついてまで助けを求めた相手が全て見ていたとは知らなかったのかガタガタと震え始めた。 ズボンも濡らしていることからかなりの恐怖なのだろう。
「去れ、2度と儂とルディアの前に顔を出すな。 出したら‥‥。」
そこで言葉を区切り地面を殴った。
ドゴォォォン!!
「分かっているな? 」
ギロリと効果音がつきそうな眼光を気絶していた2人を介抱していた者も含め全員に向ける。
「「「す、すいませんでしたー! 」」」
すると顔を真っ青にさせ気絶している2人を引きずりながら逃げていく。
ん〜 何で切りかかってきた奴らを生かして返さないと行けないんだろう?
あんな平気で見た目だけは子供な俺に切りかかってくるような危険人物達を逃したらいずれ被害が出そうなものなんだけどな。俺が不満な表情を顔に浮かべているとお祖父さんが話しかけてきた。
「これでいいだろう。ルディアもこれで今回は儂の顔に免じて許してくれ。」
嫌です。と言いたいけどクロエのお祖父さんだしな〜。 あ! そうだこれでチャラにしよう。
俺は重力操作で壊した剣の破片を浮かべて俺に切りかかって来た全員の頭に矛先を向け、発射する。
ズパン!!
よし、これでいいだろう。髪型を落武者に変えてやった。髪は女の命だと言うしな、女じゃないけど。 まあとにかく髪を刈るだけで許す。
それで笑われながら過ごすんだな。
「クロエのお祖父さんがそう言うならこれで我慢します。ですが今度同じことをしている所を見たら消します。」
俺は頭を押さえ蹲った男達からそ視線をそらしてお祖父さんに視線を向けながらそう言う。
「お、お前えげつないな。 」
何故か自分の頭を押さえながらそう言うお祖父さんを首を傾げながら眺めていると気を取り直したのか咳払いをして胸元から手紙にのようなものを取り出し渡してきた。
「オッホン、ところでルディア。 クロエはカンカンなようだぞ? それは儂に送られてきた手紙に同封されていたものだ。ルディに会うだろうから渡しといてくれ、と」
クロエから手紙か、どんな事が書かれているんだろう?
俺はお祖父さんから渡された手紙を開いていく。するとこう書かれていた。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ルディア・ゾディックへ
ルディ今どうお過ごしですか? ルディの事だからきっと行く先々で暴れている事が目に浮かびます。 しかし、いきなり王都に行くとはどういうことですか? しかも一向に手紙もくれないなんてあんまりです。
まあ、ルディの事だから何か事情があるのでしょう。ここで長々と言っても仕方ありません。帰って来たときにタップリと言うことにします。覚悟してください。
私はエルザ、ヴィオラ、リザ、フラン、とルディが帰ってきたときにどんなお仕置きをしようかとみんなで和気藹々と考えていますのでルディも王都での用事頑張ってくださいね。
追伸
まさかとは思いますが、新しい女の子を連れて帰ってきたりはしませんよね? もし連れて帰って来たら‥‥。
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「‥‥そうだった。手紙出すの忘れてた。ああ今から帰りたくなくなってきたぞ。」
なんだよ、お仕置きを和気藹々と考えていますって怖いんですけど!
それと、追伸が真っ赤なインクで書かれているのはいたずら心でやったんだよね? クロエがそんなことするはず無いもん。きっと、たぶん、メイビー‥‥。
俺が手紙を凝視しながら冷や汗を流していると背中をバシバシと叩かれた。
「ハハハハ! ルディアも大変なようだな。 クロエから送られた手紙から読み取るにあれは相当お前に入れ込んでいる。 まあ儂も孫の初恋を応援するのは吝かではないのだが‥‥儂より弱い者にクロエを嫁にやるつもりは無い。という事で3日後に儂の道場に来い。ではな。」
そう一方的に言って去って行ったお祖父さん。
俺はその背中を感情の篭ってない眼差しで見つめながらアイリスを連れて帰ったら俺、死ぬのかな? と頭の中でグルグルと考えるのだった。
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