構う事はない
怒涛の1日を終えた俺はガタゴトと馬車に揺られながら宿に帰っている途中だ。
しかし、あの学校は何なのだろうか? 個性的な教師が揃いすぎている気がするのだが。
M教師にオカマゴスロリに常に目が血走った美術の先生etc‥‥
1-1のみんなは違和感なくやっていたが俺は何で気にしないでできるのかわからない。今日の授業だけで俺のHPは限界ギリギリだ。こういう心の傷は聖気では治らないのでしっかりと休まないければいけないだろう。
早く宿に着かないかなと思いながら馬車の窓から見える賑やかな街並みを見ているとアリアに話しかけられた。
「坊っちゃまお疲れ様です。ですが坊っちゃま、どこでダンス何て覚えたんですか? 」
そう首を傾げながら聞いてくるので俺は頬杖をつきながらアリアに目線を向けて答える。
「ん? いや、あれがぶっつけ本番。」
俺がそう言った言葉にアリアは目をパチクリとさせて驚いている。まあ、自分でもびっくりするくらい上手く踊れたからな。アリアから見たらなおさら驚くか。
「え、そうなのですか? 初めてであんなに踊れるなんて‥‥。」
「ルディ今度私とも踊ってくれる? 」
「うんいいよ、今度ね。 」
俺とアリアの会話を聞いていたのか隣に座っていたアイリスが服をクイクイと引っ張りながら目を潤ませてお願いしてきた。勿論アイリスと踊る事に何の問題もないので快諾する。
しかし、先ほどから馬車が進んでいない気がするのだが気のせいだろうか?
俺は確認するために窓から顔を出してみる。すると、かなり馬車が渋滞していた。
どうやら騒ぎが起きているらしく馬車が通れないようだ。
「アリアあそこは冒険者ギルド? 建物の前で決闘みたいなのやってるんだけど。」
「た、確かに冒険者ギルドですが街中で決闘とは穏やかじゃないですね。」
俺は騒ぎが起きている場所を指差しながらアリアに聞いてみるとアリアも窓からその騒ぎが起きている場所を見て答えた。
チッ、馬車の通り道でそんな事するなよ。 迷惑だな。
「これじゃあ馬車が通れないよ。ルディが疲れているのに帰る邪魔するなんて、私ちょっと殺ってくる。」
俺と同じ事を思ったのかそう言って馬車から飛び出そうとするアイリスの肩をがっしりと掴んで止める。
殺ってくるってそんな物騒な事を目の光を消しながら言わないでよ。
お兄さん心臓止まりそうになるから。
「アイリスちょっと待とうか。 僕が行くから。 アイリスに怪我をして欲しくないんだよ。」
「ル、ルディ‥‥。」
俺は背中に冷や汗を流しながらアイリスの頬を撫でそう言う。
ふ〜、ブラックアイリスは引っ込んだか。ったく、疲れてるっていうのにここまで面倒起こしやがって。迷惑な奴らにはキツイお仕置きをしてやらないとな。
俺はどうお仕置きしてやろうか考えながら馬車のドアを開け騒ぎが起こっている場所へと向かっていく。すごい野次の数だ。
「やれやれ! ほら! 右だ! 」
「おじさん、ちょっとどいて。」
目の前で唾を飛ばしながら野次を飛ばしているおじさんに話しかける。このままじゃ騒ぎを起こしている元凶たちのところに行けないからな。
「何だ坊主、邪魔だ! 」
そのおじさんは声をかけた俺をちらっと見た後、なんと突き飛ばしてきた。
勿論避けたが。フフフそっちがそういう気ならこっちもそれで行かせてもらう。
そもそもこいつらも道を塞いでるんだ。構う事はない。
「お前が邪魔だ。」
「グヘ!? 」
俺はそう言って再び観戦に戻ったジジイのケツに蹴り上げた。そのジジイはケツを抑えて悶えているが気にしないで突き進む。
本当にどれだけいるんだよ。 邪魔くさい。目の前にいる人々に足払いや、裏拳、掌底打ちなど様々な技をたたき込みながら進んでいると剣を抜いてつばぜり合いをしている男たちの所に出た。
「いい大人が周りの迷惑も考えないでなにやってるんですか? 僕は疲れて早く帰りたいんです。3秒以内に散ってください。さもないと実力で排除します。」
俺はその間に勢いよく割り込みつばぜり合っていた2人の冒険者風の男を弾き飛ばし、忠告する。
いきなり気絶させて強制的に排除してもいいけど一応言っておかないとな。
後でなんか文句言われたくないし。
だが、俺の忠告は2人の男の怒りに火を点けたようだ。2人共顔を真っ赤にさせて切りかかってきた。
「んだと!? クソガキが生意気な口きいてんじゃねえぞ! 」
「調子こいてんじゃねぇ、おじさんが礼儀ってのを教えてやる! 」
おいおい、子供に切りかかってくるってどういう事だよ。俺じゃなかったら死んでるぞ?
「3秒経ちました。 僕は言いましたからね? 」
俺は重力操作で2人とも地面に叩きつける。ついでに剣、防具を2度と使えないようにボロボロにした。これでしばらくは装備を買うお金を集めるのに必死で騒ぎを起こす余裕などないだろう。
「「「リーダー! 」」」
「「「兄貴! 」」」
俺が地面に這い蹲って無様に気絶している2人を見ているとこの2人の仲間と思われる集団が駆け寄ってきた。倒れている2人が気絶しているだけだとわかったのかほっとした顔をしてなぜか俺に食ってかかってくる。
意味がわからん。
「てめえ兄貴になにしやがんだ! 」
「うちのリーダーが何したっていうのよ! 」
「通行の邪魔。」
「「‥‥え? 」」
そう言ってきたので俺は渋滞している馬車達を指差して真顔で言う。
まさか、そんな返しが帰ってくるとは思わなかったのか俺の指差した方向を見て顔を赤くした。今更気づいたらしい。
「た、確かにそうだけどやり過ぎなんじゃ‥。」
今更下がれないのか1人の女性が倒れている2人を見ながらそう言ってきたので俺は蔑むような目を向けながら返す。
「つまりあなたは勇気を出して止めに来たこんないたいけな子に、斬り殺されそうになったにも関わらず手加減しろと? 外道ですね。」
「そ、そういう事言っているんじゃないのよ。」
俺のその言葉を聞いたまだ生き残っていた野次馬たちが女性に向かってサイテーとかあんた恥ずかしくないのかい!? と言っているのを聞いて女性は顔を青くさせ始めた。
それはそうだ、冒険者は知名度が仕事に直結する。この噂が広まれば冒険者家業などやれないだろう。ふざけた事ぬかすからだ。だが、イライラしている俺は追撃をやめない。
「同じじゃないですか。そもそも子供に止められる前に止めなかったあなたたちが僕に文句を言う資格はありません。」
「っ!? この! 」
俺の言葉を聞いた女性が腰にさしていた剣を抜こうとしたのを見て俺は目を細める。
「やりますか? いいですよ。一瞬で片付けて宿に帰るだけです。」
「黙って聞いてれば調子に乗りやがって死ね! 」
女性を見ながら殺気を体に滲ませ始めていると、後ろから若い男性が切りかかってきた。本当に何なのお前ら、 道塞ぐわ、止めに入ったら切りかかってくるわ、街中だから極力流血沙汰は避けようと思っていたけどもういい加減殺っちゃおうかな。
俺は後ろに振り返り剣を振り下ろそうとしている男の胸に向かって抜手を放つ。
しかし、俺の抜手は男の胸を貫く事はなかった。
ごつい別の手に受け止められたのだ。
「ギルドの前で騒ぐな小僧ども。 それとお前、今本気で殺そうとしたな? 」
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