個人レッスンを回避せよ
「ア、アリウシア様このか、いえ人は先生なのですか? 」
俺が顔を引きつらせながらそう聞くとアリウシア様が手をポンとついてそうでしたと言う。
「そうでしたルディア様はマドマーゼル先生の事を知らないのでした。 この人は次のダンスの授業を担当するマドマーゼル・レッドハイビスカスさんです。 マドマーゼル先生は王族の専属講師を務める凄い人なんですよ? 」
そう綻ぶような笑顔で自分の事のように自慢するアリウシア様。
う、嘘でしょ。 こんな不審人物を体現したような人がそんなに凄いなんて。
人は見た目によらないと言う事か。
でも、1つだけ言わせてくれ。 何だよレッドハイビスカスって! 可愛いなおい!
ふぃ〜スッキリした。
「そうなんですか。 それは凄いですね。 初めまして僕はルディア・ゾディックです、1ヶ月と短い間ではありますがよろしくお願いします。」
俺は先ほどの事は無かったかのように綺麗にお辞儀をする。
俺がマドマーゼル先生にお辞儀をしていると開きっぱなしだったドアからゾロゾロと、1-1のみんなが入ってきた。 どうやら集会は終わったらしい。
「マドマーゼル先生、集会が長引いてしまって遅れました。 すいません。」
そう言ってアリウシア様はマドマーゼル先生に頭をさげる。
そうか、いないな〜と思っていたら長引いていたのか。
俺がなるほどと頷いていると、マドマーゼル先生は脱いでいた服を来ていいわよと手を振る。
「いいわよぉん、だいたい見当はつくからぁん。 」
そう言って俺をちらりと見るマドマーゼル先生。
何だろうか?
「さて、キッズ達が揃ったところではじめしょうか。ほらほら早く席についてぇん。」
未だに立っていた俺とアリウシア様の背中を押すマドマーゼル先生。
ああ、確かに座らないとな。授業が始まるみたいだし。
でも、ダンスなんてやった事ないぞ。どうしよう。
俺は不安になりながらも席に着く。
俺とアリウシア様が席に着いたところでマドマーゼル先生が手を叩いた。
「さて今日はワルツをやりましょうかぁん。 好きな男女で2人1組をつくりったら前に1組ずつ来なさぁい。もし出来なくても安心してぇん、私がみっちりと個人レッスンをしてあげるわぁ〜ん♡ 」
マドマーゼル先生が最後にバチっとしたウインクで発生した汚い星を叩き落としながら俺は考え込む。
ワルツってあのワルツか。 うん踊れない。 ど、どうしよう。個人レッスンされてしまう!
だが俺は顔に焦りを微塵たりとも出さず、逆に口角を上げ余裕の表情を作る。
こういうのは逆に不安そうな顔を作ったらダメなのだ。 何となくそんな気がした。
「ルディア様、私と一緒に組んでくれませんか? 」
俺がパニックになっておかしな事をしていると、アリウシア様が前に来て手を差し出してきた。 何と俺と組みたいらしい。
俺としてもアリウシア様のような可愛い子と組めるなら願ったり叶ったりだ。
「こちらからお願いしたいくらいですよ、アリウシア様。 宜しくお願いします。」
俺は笑顔でそう返し、手を握りながらレヴィに話しかける。
なあレヴィ、踊り方知ってる? あのマドマーゼル先生に踊れないのが知られたらどんな個人レッスンをされるのか分かったものじゃない。
(あなた、魔剣が踊ると思う? )
‥‥思いません。助けてレヴィ! 個人レッスンしたくない!
(はぁ〜 この子に聞けばいいじゃない。王女なんだからその辺りは完璧な筈よ。)
俺の必死な懇願が通じたのかレヴィはため息をついてそう言ってきた。
ああ、そうか。これであのマドマーゼル先生の個人レッスンを回避できる!
「そ、それはどういう‥‥。」
個人レッスン回避の道のりを導き出した俺はアリウシア様が顔を赤くしてあたふたしているのを気にせず握っている手を引き寄せずいっと近寄る。
「ル、ルディア様!? 」
「なあ、アリウシア様。俺全然踊った事がなくてさ。教えてくれないか? 頼むよ。」
目を見て俺はそう頼み込む。自分でもなんでこんな事をしているのか分からないが恐らくマドマーゼル先生の個人レッスンを回避するのに必死で頭がおかしな事になっているのだろう。
「は、はい。 分かりました。でもルディア様その、近いというかなんというか‥‥。」
そう顔を赤くしながらアリウシア様が言ってきたのを聞いて俺は離れる。
「すいません。 つい。」
「もうルディア様ったら♡ 」
俺が頭を掻きながら謝ると頬をニコニコとしながらツンルンと突かれた。
ああ、かわゆい。
俺がアリウシア様を見ながら癒されていると、周りからヒソヒソと話し声が聞こえてくる。
「ルディア、あいつ慣れてやがるぞ。」
「クソ! 殺ってたりたい。」
「やめとけ。 逆に殺られるだけだ。」
と、男子諸君がゴゴゴ! とドス黒いオーラを放ちながらそう言い。
「見た!? さっきのルディア様の表情! 」
「見た見た。 カッコいい〜 」
「「「キャーー!! 」」」
と黄色い悲鳴を発する女子達。
この教室は混沌と化したようだ。お、おいちょっと待てそんなに注目されたら‥‥。
「ルディアくんとアリウシアちゃんこっちにいらっしゃ〜い。」
俺とアリウシア様を見ながらそう手招きをするマドマーゼル先生。
お、教えてもらう時間が‥‥。
いいさ、やってやるよ。極論周りの人を魅了しながら踊ればいいんだろ!?
俺の18番だ!
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