OUT-3
「ありあしたー」
拓斗が更に雑になった挨拶をすると、店の奥からズカズカと日和が登場する。
「随分な挨拶の仕方ね」
躊躇うことなく、グイグイと拓斗の頬をつねる。
「そんな挨拶の仕方を教えた覚えはないわよ」
「いたた…」
「で、情報は来たわけ?あと決闘まで3日だけど」
「いいや。残念ながら相手の情報は無し。かなり硬い緘口令が敷かれているみたいだ」
「有効な情報は無し……ね。あのスネイルっていう奴、何考えているのかしら。本当に決闘をしたいのかしら?」
日和が一人、自問する。
「本当に、オレが何もしなくていいのか?」
海がいつものように、段ボールを抱え、棚の商品補充を始めた。
「何かあるなら、やるぞ。この際、合法・非合法関係なくな。オレ達の島だ。何がなんでも守らないとな」
「残念ながら、何も無いんだよなぁ。決定的な情報が何もないんだよ」
拓斗が首を振る。
海は、しばらく無言で棚出しをし、不意に口を開いた。
「極論すれば、オレは死んだってまたタクトが拾ってくれればいい。このゲーム、死ねば名前以外は全部初期値になる。困るのはオレ1人だ。ただ、タクトが死ぬと、500人が路頭に迷う。オレは皆をまとめる事はできないからな。安い島を買って1からやり直すのも良いが、それでは500人が迷惑するだけだ。だからこそ、オレは何かをしたい。島を守るために何かをしたいんだ」
淡々と商品を並べつつ、思いつめたように海は語った。
「本当、根が真面目だよね海は」
日和が半ば呆れたような口調で言った。
「バイトとしては大助かりだけど、ゲームの場合は、ある程度割り切って愉しまなきゃ。まぁ、ファン研の会長が言うのもなんだけどさ」
「愉しんでいるさ日和」
海は言う。
「一生懸命やるから愉しめているよ」