OUT-2
「で、おめおめ条件呑んで帰って来たわけ?信じらんない!!」
日和が叫ぶ。『ドラッグストア杜若』に居た僅かな客が、何事かとレジの方向に視線を合わせた。そして日和の表情に息を飲み、そそくさと商品をに戻すと、店の外へと足を運んでいった。
「静かにしろよ、日和。客が逃げてるぞ」
段ボール箱を抱えた海が通りすがりに諌めると、キッと日和が睨む。
「んな、訳の分からない決闘するなんて……そんな時は、保留にしてファン研で考えるのが定石じゃないの?」
「難しい事言われても、オレには分からんよ」
段ボールを床に置くと、海は日課となった陳列を始めた。
「いや、あんな罠を仕掛けられたら、見破れないって…」
レジ台にもたれかかりつつ、拓斗は言う。
「しかし、おかしな話だよな」
海は陳列を続けたまま、話に加わった。
「そのルールだと、両者が5の魔法水を持ってきたら、解毒も出来ずに終わりだ。何と言うか、勝負にならないだろ」
「そうなのよ。ローカルルールとは言え、ちょっと変なのよね」
日和が大きく頷く。
「多分ゲーム開発者としては、島の開発が進んでいる時を想定して作ったルールだと思うんだけどね。たとえば、皆が1の魔法水しかしらないのに、一部の人は2の魔法水の在り処を知ってる…みたいな」
「あぁ、そういう偏りがあると、決闘としては成立するか…」
「でも、今は1~5の魔法水を誰もが知っている。新しい魔法水が出たという話も無い。新しい魔法水が出る可能性なんてある?」
「いんや、1~5以上の魔法水は出ないんじゃないかな。少なくとも、南の大地はほとんど掘り返したから。500人総出でやったんだから、これ以上は考えにくいな」
「じゃあ、何で向こうは変な決闘を仕掛けたのよ?この決闘、どちらにも旨みがないもの。もし今回、普通の決闘に切り替えたければ、両者の合意を得てから、別の島で行えば良いだけなんだし」
「いや、だから知らないって、そんな事」
「それを聞き出すのがアンタの仕事でしょ!南の代表としてきっちり聞き出して来なさいよ。ファン研の名が泣くわよ!」
日和は拓斗の頬をグニーとつねった。