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序章:【修羅か童か。源四郎、信濃の地に誕生すの段】其之二

〜天正六年、真田の郷〜

「おーい、今日は何して遊ぶぅ?」

「おっかぁから草むしりしろって言われてるからなぁ…」

「あとで牛の面倒みないと…」

「石投げは嫌よ?たんこぶ出来るし」

領民の子らが気ままに遊び回るここは信州は小県、真田の郷。

「…」

そんな子供たちを遠巻きに見つめる娘が一人。

名はみお。

源四郎が姉、松の夫小山田茂誠の妹である。

行儀見習いとしてこの真田の郷にやって来て幾月、未だ子供達の輪の中に溶け込めずにいた。

「あ、みおちゃん」

「まーたおずおずとこっち見てんなぁ、どーする?」

「どーするったって…郷長(さとおさ)んとこの婿様の妹だろ?下手に馴れ馴れしくしても」

「それに怪我なんてさせたらおとり様や源三郎様に何言われるか…」

「んぁ?兄上(源三郎)やばっちゃま(おとり)がどーかしたか?…ふぁあああ」

「「「「げ。源四郎様」」」」

そんな子供らの輪に欠伸をかきながらズケズケとやってくる(わらべ)が一人。

そう、源四郎である。

御年八歳、歳のわりには利発…ではあるが「変わり者」、「少し大人びいてる」と領民の子らの間では評判だった。

「げって何だ、げって!朝っぱらから人を小うるせえのが来たみたいに」

「「「「その通りだろ(ボソッ)」」」」

実際、源四郎は中身は二十歳そこらの元現代人である。

子どもたちと遊ぶ(と言いつつ源四郎からしてみれば野山を駆け回る…所謂ファルトレクの一環なのだが)際には「野山を駆け回る前にはきちんと身体の筋をほぐさねば怪我の元よ!みんな準備運動すっぞ!!」

「「「「じゅん…び…うんどう??」」」」

いざ山に入れば…

「これ!そこから先は室賀との郷境だ!!勝手に入ると室賀の者から何を言われるか分からんから入るな!!」

「えー?少しくらい入ってもいいじゃろぉ???」

「黙らっしゃい!!!室賀と揉めて父上や兄上、兄様(あにさま)の手を煩わすようなことになったらどーするんだバカタレ!!!」

とまぁこのように全力で保護者的立ち位置なのである(おかげで迷子になったり怪我したり室賀と揉めたりする事なく子供達が帰ってくるので親達からは感謝されているが)

「ん?あそこにいるのはみおじゃねぇか。おいお前ら、まさかみおを仲間外れにしてるのか???」

そうこうするうちにみおがこちらを見ているのに気づく源四郎。

普段家でも「源四郎、みおは小山田の家から茂誠さまと一緒にこの真田に来たばかり。少しでも早く郷に馴染めるよう気にかけてあげるのですよ?」と大好きな姉、松からそう言いつけられている。

「そんなことないよ源四郎様」

「じゃあ何でみおはそこから遠巻きにこっち見てんだ?」

「だってみおちゃん、声かけても「えっと…その」ってはっきりしないんだもん」

「お前らがズケズケと矢継ぎ早にくっちゃべるからみおが尻込みしちゃうんだろ?ったく、ガサツな奴らの集まりかよ」

「「「「源四郎様に言われたくないね」」」」

子供たちが口を揃える。

「あん!?おめーら、普段誰のおかげで山で迷子になったり変なキノコ採ったりせずに済んでると思ってんだよ!?」

「そんなこと言いつつこの間なんか普段「室賀と揉めんな!」くらいのこというのに郷境でうちの郷に向かって小便たれてた室賀んとこの子供たちを「どこに向かって小便タレてんだタコども!!」ってノシちゃっておとり様と源三郎様にこっぴどく怒られてたじゃん!」

「あれは室賀のガキどもが不届きな真似したからだろうが!結局兄様(源次郎)と兄者(茂誠)がとりなしてくれたが…だいたいお前らあの後兄上(源三郎)に立ったまま縁側の柱に縛り付けられた時、なんでもっと早く肥桶持ってきてくれなかったんだよ!おかげで糞はともかく小便漏らす羽目になりかけたんだぞ!!!!」

そこまで聞いてキョトンとしだす子供たち。

「「「「肥桶ぇ〜?」」」」

「なんだよ源四郎様漏らしそうだったのかよ、おっかしぃ」

「出るもんは出るんだ!結局漏らさなかったぞ!!」

「褌してんのにどうやってしたの??」

「そこは聞くんじゃねぇよおめぇ!」

「小便、ひっかかった?」

「ひっかかってねぇわ!」

「だいたい私たちが肥桶なんて持っていくわけないでしょ?源三郎様とおとりさま、おっかないし。それに…」

「それにぃ?」

「「「「肥桶なんてばっちぃし」」」」

「それを言うんじゃねぇよ!…ん!?お前らの誰かが持ってきてくれたんじゃねぇのか、肥桶?」

「んにゃ?」

「だから怒った時の源三郎様がおっかないから無理だって!」

「あとおとり様も!」

「そもそもおっとぉとおっかぁから「源四郎様がおしおき受けてる時はほっておけ」って言われてるもん」

「お前のおっとぉとおっかぁ、人の心ないんか…てことは」

そこまで話すと源次郎はみおに歩み寄る。

「…あ。源四郎様」

「みお、もしかしてお前が肥桶持ってきてくれたんか?」

「はい…いくら折檻されてても源四郎様ももよおすんじゃないかな…って。あ!すみません、出過ぎた真似を!!」

「いやいやいや!むしろ凄く助かったぞ、ありがとうなみお。そもそも臭くて汚いもん持ってこさせて悪かったな?」

「いえ…源四郎様困ってるだろうなって」

「兄上とばっちゃま、何か言ってたかその時?」

「お二人とも「源四郎は…かほうもの?」だって。源四郎様、かほうものってなんですか?」

「ん!?全く、あの二人は…」

「源四郎様?」

「いや、こちらの話よ。果報者ってのはしあわせな奴ってことだぞ、みお」

「…?柱に縛り付けられることがですか??」

ズルッ

思わずすっ転びそうになる。

みおも流石武家の娘とでも言おうか、たまに浮世離れした発言をすることがあるのである(源四郎も未だ慣れない)

「(みお!違う、そうじゃない!!)」

心の中で突っ込みを入れる源四郎。

「おーい源四郎様ぁ、結局何すんのぉ?」

「みおちゃーん、遊ぶなら遊ぼぉ♫」

「源四郎様ぁ、じゅんびうんどうしようよぉ」

「みおちゃーん、源四郎様ぁ」

そうこうするうちに子供たちからお呼びがかかる。

「だぁーーー!今行くから待ってろぉー!!さて、皆が呼んでるから行くぞみお」

「えっ…私もいいんですか?」

「行儀見習いってもいつも家にいちゃ息つまんだろ?来いよ!!!」

そういってみおの手をとる源四郎。

「あっ…(カァアア)」

手をとられたみおが少し照れる。

この後、源四郎とみおは夫婦になるのだが…それはもう少し先の話。


みおちゃんは主人公源四郎同様本作のオリジナルキャラです。

今回は俗に言う奥さんとの馴れ初め話(*´艸`*)

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