其之三
――弥七郎にノされてから数刻――
――佐土原城内――
「くっ…でぇえ……いてててて。ん?なんで寝てん………いって!」
「!気が付かれましたか源四郎様!」
「あ?弥五郎…??つーかここ、どこぉ?」
心配そうな顔をして弥五郎が覗き込んで来る。
そんな弥五郎は気にも留めず自身が寝かされている見覚えのない場所について尋ねる源四郎。
「そりゃあ………佐土原のお城ですよ。」
「んなこったとは思った…で、あのバータレは?」
「………横におるじゃろうて。どこに目ぇばつけとるんじゃおはんは。」
「あぁ?…いってぇ!」
気がつけばどうやら横に又七郎が寝てるようだが…
声のする横の方を見ようとするも寝返りや首を動かそうとするだけで全身に激痛が走る源四郎。
そんな源四郎を尻目に又七郎が続ける。
「は、やはり信濃の山猿は軟弱じゃのぉ。ほんの少し身体痛めただけで痛ぇ痛ぇと。」
「オメェも似たようなもんだろうが、島津のノータリン。」
「ノータリン?なんじゃ、そいは??」
「脳みそが空っつー意味だよ。」
「なんじゃと!…〜〜〜〜〜ッウ!!」
源四郎の言葉に反応し身体をよじるも激痛に見舞われたのか悶絶する又七郎。
「だからノータリンつーんだよ。お互い額は割れてんだ、大人しくしてろよ…いてて。」
「はっ!おはんも人の事言えんじゃろて…ってぇ。」
お互いに罵倒しあうも満身創痍、目くそ鼻くそである。
「まぁまぁお二人とも、根っこの部分は似たもの同士なんですからここは仲良く…」
「「あぁん!?」」
弥五郎の【似たもの同士】に即座に、そして同時に反応する二人。
「ほら、そうやって息ぴったりに返すから。」
「「うるせぇボケ!」」
「あ!?」
「はぁ!?」
「被せてくんなタコ。」
「こっちの台詞じゃボケナス。」
「あんだテメェまだ殴られたりねぇか?」
「おはんこそなぁ!」
まるでヤンキーのメンチの切り合いのような応酬をする二人。
中学生かお前ら…
「言っても身動き取れませんけどね。」
「あ?舐めてんのか弥五郎、これくら…いっでぇ!」
「ふん!信濃モンは根性が…だぁあ!?」
身体を起こそうとするもやっぱり激痛に襲われる二人。
「けっ!…おい。」
「なんじゃあ。」
「ここは休戦だ。」
「…おう。」
やっと自分達の置かれた状況、もとい身体の状態を受け入れた二人が休戦協定を結ぶ。
「では雑炊でも貰ってきましょうか。」
「貰ってきましょうかったって…お前ここ島津分家の本拠地だろ?俺ら招かれざる客って奴じゃねぇのか?大丈夫なのかよ。」
源四郎が訝しむ。
確かに島津と武田、主家同士事は構えていないとは言えそこは戦闘民族、もとい戦闘集団島津。
他家に知られたくない情報だらけだろうに布団は貸してくれる、(雑炊とはいえ)飯も分けてくれるって対応なのだから。
すると又七郎が口を開く。
「…おう山猿、島津の家ば見くびるな。」
「あ?」
「手負いの丁稚、いや…信濃言うならどこぞの国衆の小倅か?そんなんの首ばとった所でなんの自慢にもならん。そんな無駄につきおうとる暇、島津にはなか。…それよりそもそもおはんはどこの手の者じゃ?」
言いつつ又七郎が問う。
「…ふん。信州信濃は小県、武田家家臣真田喜兵衛が三男。それが俺だ。」
「はん!聞いたことなか国衆じゃの!やはり信濃の田舎もんか!!」
「あ!てめぇこの期に及んで…」
「そいはおはんが知らぬだけじゃっど又七郎。」
「!おやっどん(父上)…」
「家久公!」ザッ
源四郎が言いかけた所で家久が寝所に入ってくる。
それに対し立膝で頭を下げる弥五郎。
「あ〜よかよか弥五郎。…おはん、やはり真田喜兵衛殿の子だったか。」
「…弥五郎、肩貸せ。いてて。」ムクッ
「あ!源四郎様、無理をなされては…」サッ
「アホか!佐土原が領主様がわざわざ顔見に来たってのに寝たままでいられっか!」
言うなり激痛を堪えて身体を起こす源四郎。
弥五郎もすぐ脇に回って支える。
「ほぉ、そこそこ根性はあるようじゃの。さすが【表裏比興の者】と評される喜兵衛殿の倅か。」
「改めまして…お初にお目にかかりまする家久公。真田喜兵衛が三男、源四郎にござりまする…いてて。」
「うむ、信濃より遠路はるばるよぉ来なすった。」
「御心遣い痛み入りまする…御子息をノシといて言うのもなんですが。」
「はぁ!?ノシたんはあのあんちゃんじゃろうが!馬鹿ぬかすなきさん!」
源四郎の「ノシた」発言に反論する又七郎。
が!
「だぁっとらんか又七郎!」
「!…すみませぬ、おやっどん。」
家久の一喝でシュンとなる又七郎。
「すまぬの真田の…源四郎ち申したな?不出来な倅ゆえ…そもそもこの阿呆とは何故殴り合いを?」
「それは…」
そこから家久に委細話す源四郎。
すると…
「……………又七郎、きさんちぃと起きろ。弥五郎、すまぬが手ぇば貸してもらえんがか?」ワナワナ
肩を震わせながら家久が言う。
「はい…家久公。…源四郎様、それでは。」
「おう。」
「あぁ源四郎、おはんは寝ててよか!…又七郎、はようせんか!」
「は、はい…弥五郎ちぅたな、わるかの。」
「いえいえ」スッ
言うなり弥五郎が肩を貸す。
するとすかさず又七郎に家久が近づき…
「……………………………こんたわけがぁああああああああああああ!」バコンッ!
「ああああああああああ!」ツゥー
「「!?」」
拳骨!家久渾身の拳骨が炸裂!!
悶える又七郎の額から血が滲む。
目を丸くしてそれを見る源四郎と弥五郎。
そんな三人に構わず、家久が言う。
「あったこともなかよそ様の嫁御ば貶す馬鹿がどこにおっがじゃ!わしはそんな男におはんば育てたつもりはなか!源四郎の言う通り小県ば向かって謝れ!!」
「「!(こっ、こええええ)」」
「お、おやっどん…じゃっど…」
「黙れこんバカタレ!これ以上がたがた抜かせばこん家久が殴り殺すど!」
又七郎の言葉を遮り家久が一喝する。
その気迫に源四郎と弥五郎が押される。
更に「殴り殺す」とまで言うんだからその怖さはひとしお。
「わ、わかり申したおやっどん…じゃっど。」
「何じゃ!」
「………小県言うのはどっちば方角ですか?」
ズルッ
家久と共に源四郎、弥五郎もコケそうになる。
まぁまだ九州、下手をしたら佐土原を出た事もない又七郎のことである、無理もない。
「ひ、ひとまず東の方角へ頭ばさげろ!…源四郎、それでよかか?」
「え、えぇ…大丈夫です、家久公。」
「なれば…又七郎。」
「はっ!…みお殿!すまなんだぁ!!…こいでよかか?…いてて」スッ
「お、おう。」
東の方角へ向かい痛む身体をおして平伏する又七郎。
拍子抜けした源四郎がそんな二人に答える。
そこへ弥五郎が耳打ちする。
「源四郎様、もしかして…島津の皆様は戦以外はてんで疎いのでは?(ゴニョゴニョ)」
「ばっ!?馬鹿いえ!仮にも破竹の勢いで九州平らげようかと言う大名家だぞ!?そりゃねぇって(ゴニョゴニョ)」
「…おはんら、ひょっとして今失礼なことば言うとらんか?」ギロリ
「「ナンデモアリマセン」」
家久に凄まれおずおずと小さくなる二人。
「まぁよか。しからば源四郎、弥五郎…ゆるりと逗留するがよかよ。」
「む…。」
「はぁ…。」
自らの厚遇を訝しむ二人。
そこで源四郎が問う。
「家久公。」
「何ぞ、源四郎?」
「何故手前どもをそのように厚遇なされまするか?」
「ふむ。そいは…逆におはんの目的ば聞かねば答えられんど?」
「…そうなりまするか。ならば申し上げましょう、島津が【火薬の調合の技】、【兵法】を盗むべくまいった所存でござりまする。」
「ほぉ…」
「おはん!いけしゃあしゃあと!」
源四郎の嘘偽りのない真っ直ぐな瞳に何か感じ入る家久。
それとは対照的に堂々と島津家の懐に入りその技術と剣技を盗むと言う源四郎に噛み付く又七郎。
「なるほどの、じゃっど源四郎…無論タダで教わろうなどとたわけたことぬかす訳なかよな?」
「!(食えねぇ人だ…俺に【古土法】って手札があんの、薄々気づいてやがる!)」
「どうなんじゃ?」
「…それは【島津本家】にて。」
「あぁ!?本家ん叔父御殿にまでお目通りば望むとか!?面の皮の厚か奴じゃ!」
「やめっか又七郎!…面白か童じゃ。よか、あにょどん(兄上)達ば仲立ち、こん家久が務めたっど。」
「!」
「おやっどん!?」
家久からの申し出に驚愕する源四郎と又七郎。
なおも家久は続ける。
「もとより又七郎、おはんを【本家】ばあにょどん(義久)の所ば叩き込むつもりだったんど。」
「え゛」
「なるほど。」ニヤリ
「え゛とはなんじゃ又七郎!」
島津本家へ叩き込むと言われ青くなる又七郎をまたも一喝する家久と一人ほくそ笑む源四郎。
「(いっひっひひひ♪思いがけず【島津本家】へのパイプが出来たな、儲け儲け♫)」
「まぁーたろくでもないこと考えてるよこの人…」
「だろうのぉ。ほんにこん男は…」
そんな源四郎の悪い笑顔を見て呆れる弥五郎と又七郎。
そこへ家久が言う。
「じゃっどそいはおはんらの怪我が治ってからじゃ!あにょどん達には文送っておくじゃでゆっくりしもうせ。」
「「はーい。」」
声を揃え応える二人。
「ふふっ…おはんら、存外いい相方になるかも知れんのぉ、はっはっは。ではおいは戻るであとは二人で仲良うな?」スッ
こうして寝所を後にする家久。
少し間が空いて源四郎が口を開く。
「だとよ?【若君】。」
「…又七郎でよか。」
「あん?」
「おはんとは同じ釜の飯ば食う間柄になりそうじゃからの。まぁ叔父御達次第じゃが。」
「そーかよ。そういう事なら…じゃあよろしくな、又七郎。」
「おう。」
かくしてここに…後に【佐土原が対の化生】と称され戦国の世を震撼させるコンビが結成されたのであるがそれはもうちょっと後の話。
――しばし後、同寝所――
「しっかし寝てるだけっつーのも暇だな。」
「仕方なかろが、あんだけの殴り合いばしたんだからの。」
「そうですよ源四郎様。」
弥五郎が貰ってきた雑炊を食べ終え川の字になった三人が語らう。
「しっかし源四郎。」
「ん?」
「おはんの嫁ば思う気持ちは鬼気迫るもんがあるの。」
「あ!!!!!!!!!」カチーン
弥五郎が瞬時に凍りつく。
が!時すでに遅し!!!!
「ほうほうほう♫またしちろうく〜ん、君…みおの魅力が分かったようだなぁ、はっはっは。」
「………………は?又七郎………くん???」タラー
ここで又七郎は気付く。
これがわりと触れちゃいけない話題だと。
だが!やはり時すでに遅し!!!
「ならば語って進ぜよう!俺とみおのこれまでの歩みを!!!!!」
鼻息荒く言う源四郎。
「や、弥五郎…源四郎の奴、嫁御の事となるといつもこうなんか?(ボソッ)」
「はい、残念ながら(ボソッ)」
「…おはんも苦労するな(ボソッ)」
「まったくです(ボソッ)」
小声で話す又七郎と弥五郎。
それを尻目に…
「なにごちゃごちゃ言ってんだよお前ら!なんならこれまでの旅路のことも話そうか?」
源四郎は嫁語りする気満々である。
「おぉ!そっちのほうが聞きたか!!」
「あ?そっちのほう【が】だぁ??」
「ああああ!違うど源四郎!そっちのほう【も】じゃ!」
「そうであろうそうであろう♫」
「「…はぁ。」」
力なく肩を落とす弥五郎と又七郎。
こうして源四郎の嫁語り(フューチャリングこれまでの旅路話)が始まった!
みおとの馴れ初め「肥桶話」。
「だっはっはっはっは!いてぇ!腹も痛いが全身も痛かじゃ!おはん、おいば殺す気か!」
「てめぇ笑いすぎだぞ又七郎!いてて」
「この話はどこで話してもウケがいいですね♫」
室賀の痴れ者との一悶着(無論焙烙玉の事は伏せて)。
「はぁ!?真田の郷の子らはそんな恐ろしかもんなんか!?!?」
「ふふふ♫俺との【戦ごっこ】の賜物よ♪」
「その戦ごっこに付き合わされる私の身にもなって下さい…」
みおとの仮祝言。
「ほぇ〜【治部煮】とな。美味そうじゃのぉ。」
「事実美味いぞ?郷に来ることありゃ是非食えよな。」
「…おはん、そいは下手したら島津が武田か真田ば攻める時っちこと分かっとんがか?」
「へ、簡単にゃ負けねぇって意味よ?そんときゃ謙信公が信玄公へ塩送ったみたいに陣中見舞いに持ってたらぁ。」
「ふっ。おはんが言うと冗談に聞こえんわ。」
「ホントですよ…」
そんなみおに見送られ、源三郎に蹴り飛ばされての郷からの出立。
「ははは蹴り飛ばされたとな♫源四郎、おはんにもおいがおやっどんのような良きあにょどん達がおっとじゃな。」
「おう!三人が三人ともいい兄達よ。」
「源三郎様の事は堅物だのやな奴だの言ってるクセに…(ボソッ)」
「なんか言ったか弥五郎ぉ?」ギロリ
「ナンデモアリマセン」
そこから話は変わって…
浜松での家康、忠勝との出会い。
「おはん!あん【東国無双】、本多殿に会ったって言うがか!」
「あぁ。対峙しただけで分かる…あのおっさんこそ化生よ。」
「あの〜家康公の事は聞かないんですか、又七郎様?」
「あん?三河ば狸に興味はなか!」
「え〜…。」
安土での信長、秀吉との邂逅。
「おはん!信長公と会ったことが…まさかおいと殴りおうた時に言うちょった【命】っち言うのは…」
「あぁ、安土で拝命したのよ。だから俺はみおの【剣】にならにゃならん。」
「そいなら安心するがじゃ源四郎!島津ばおれば…おはんが末は【妖刀・魔剣】じゃ!」
「はは♫いいな、それ!とびっきりの【妖刀・魔剣】になったろうじゃねぇの!!!」
「まったくもって冗談に聞こえないですよ又七郎様ぁ、あとそこに全力で乗っからないで下さい源四郎様…。」
そして話はあの男…高橋統虎の話題へ。
「「大友家が重臣、高橋主膳正の息子ぉ!?」」
「えぇ本人がそう言っておりました…」
弥五郎から自分たちをノシたあんちゃんの正体を聞きやはり驚愕する二人。
「大友家の人間がおもいっきり武家の格好してこの佐土原彷徨いてるってどういうことだよ…しかもなんだぁ?島津家家臣に囲まれたってのに全員殺さず無力化ぁ!?…又七郎ぉ、お前んとこの家臣…」
「あん!?源四郎、おはんまさか島津ば家臣が雑魚だとでも言うつもりか!?」
「だってそうでもねぇと説明つかねぇだろ!?武辺者揃いの島津家家臣、7〜8人に囲まれて自分も相手も無傷で切り抜けるなんてよ!?」
「あんあんちゃんば騙りモンっちゅうことも考えられるがじゃろ!?」
「お二人とも落ち着いて下さい!…私はあのお方、高橋様が嘘を言っておられるとは到底思えませんでした。何よりお二人はそんな高橋様の拳を受けられたんですよね?それならばその拳の威力から嘘か真か推し量れるのでは??」
「ぬ、ぬぅ〜。」
「ぐぬぬぬぬぬぬ。」
言い合いを始めるも弥五郎に諭される二人。
そして自身がノされた時の事を思い出し苦虫を噛み潰したような顔になる。
「…まぁ嘘を言ってるとは思えんな。実力的に。」
「ほんにのぉ。悔しいが実力的に。」
本当に…本当に悔しそうに言う二人。
さらに…
「そもそも源四郎ぉ…」
「あん?」
「あんあんちゃん、また会おうぞなんぞと吹いとらんかったか?」
「あ!そうだよな!!あんにゃろ〜絶対に次あったらボコボコにしてやる!!」
「そうじゃのぉ源四郎!」
「え゛。お二人ともあんだけノされたのに懲りてないんですかぁ!?」
「「当たり前だボケェ!!!!」」
またしても息を揃えて答える二人。
「あんにゃろ〜大友の重臣の倅だかなんだか知らねぇが…ここいらにいるってなら好都合だ!見かけたら奇襲だ奇襲!なぁ又七郎!」
「おぅよ源四郎!あんちくしょうに目にものみせたっど!!!」
「奇襲って…あれほどの御仁にそうそう上手く奇襲が決まりますかね?」
「うるせぇな!やる前から負けること考える馬鹿がいるかよ!!」
「そうじゃ弥五郎!諦めたらそこで首ば取られて終いぞ!!!」
どっかで聞いたことあるようなフレーズで二人が答える。
「あ〜はいはい…全く気が気じゃないよ、こっちとしては。」
そんなこんなでしばしの療養の日々が始まる。
――3日後――
「ってぇ〜…まだ身体の節々が痛むぞぉ。」
「ほんにのぉ〜…源四郎ぉ、おはんホントに手加減なしでやったんじゃな…いってぇ。」
「あたりめぇだろ!おめーがみおを尻軽とか言うから!!…いてて」
「もう!お二人とも、おとなしく寝てないと!!」
――5日後――
「いつつ…けどまぁ多少身体起こせるようにゃなって来たか。」ムクッ
「おはん、なんだかんだ丈夫じゃのぉ。まあおいも人のことは言えんがの。…っつてぇ」ムクッ
「(えぇ…あんだけボロボロになるまで殴り合っていてもう身体起こせるとかこの二人、本当に化生なんじゃねぇか?)」
――8日後――
「とりあえず一人で厠行けるようになったのは重畳だな…いっ!?まだ痛むところはあるが。」トコトコ
「ほんにのぉ、早く身体拭くだけじゃのぉて湯殿で風呂浸かりたいの。」ゴシゴシ
「いやいやいやいや!?あんたらホントなんなの!?」
――11日後――
ザパーン
なんと言う驚異的回復力。
二人揃って風呂に入れるまで回復し、いざ湯殿。
源四郎が言う。
「ふぃ〜…いやぁ気持ちいいなぁ。さすが佐土原のお城ってかぁ?」
「当たり前じゃ!おやっどんがちゃんと隅々まで指示ばして普請させた城じゃからのぉ!しっかし源四郎ぉ?」
「んぉ?」
「おはんのこの【石鹸】ちうの、なかなか気持ちがえぇのぉ!」ゴシゴシ
又七郎が源四郎から貰った【石鹸(竹炭の香り)】で身体を洗いながら言う。
「もしかしてこの【石鹸】が叔父御殿たちとお目通りする時のお前の策なんがか?」ゴシゴシ
「んな訳あるかよ。もっと度肝抜く策、手土産が俺の頭ン中にあんのよ♫」ニヤリ
「あ〜…おはんがそいな顔ばするって事は相当な策なんじゃろのぉ。」
源四郎の悪い笑顔を見た又七郎は察する。
実際相当な策(【古土法】)なんてもんを戦乱続く薩摩に提供しようと言うのだからそういう顔にもなるものだが。
――そして14日後――
「ちぇりゃああああああ!」カンッ
「まだじゃあ!らぁあぁあああ!」カンッ
「…アンタら、本当に頭割れてたんか?」
佐土原城内で木刀で打ち合う二人。
しかも割と本気で。
弥五郎がドン引きするのも当たり前である。
とそこへ…
「はっはっは!やはり又七郎といい源四郎といい化生の片鱗を持っとったとか!」
笑いながら家久がやってくる。
「これは家久公。」ザッ
「あ〜よかよか弥五郎…又七郎ぉ、源四郎ぉ!ちぃとよかか?」
「ん?あ、はい!家久公!」タッ
「おやっどん、なんかね?」タッ
二人が稽古の手を止め家久に駆け寄る。
「おぉ精が出るのおはんら♬時に身体の具合はどがっとじゃ?」
「はい、おかげさまでこの通りピンピンしておりまする。」
「おいもじゃ、おやっどん。」
「うむ、よろしい…なれば四日程のちにな丁度内城にて兄弟揃うことになっての、おはんらも伴に参ろうぞ。」
「!ありがたき幸せでござりまする家久公♫」キラキラ
「げ。」ズーン
遂に島津本家での当主義久らとのお目通りが叶うとあって目を輝かせる源四郎と一気に暗くなる又七郎。
「こりゃ又七郎!なんじゃその態度は!」
「いえおやっどん…義久叔父、歳久叔父はよかですが…その……。」
煮え切らない態度の又七郎に家久が続ける。
「かぁ〜!…義弘あにょどんか?」
「はい…。」
島津義弘。
島津四兄弟次男にして【鬼島津】の名をほしいままにする剛の者、おそらく島津の軍部を取り仕切るいわば最高指揮官であろう。
そして又七郎の反応を見るにどうやら苦手な叔父のようだ。
「なんちいう軟弱!だから義弘あにょどんもおはんを鍛えようと躍起になるんど!」
家久が一喝する。
「…ありゃ躍起通り越して【鬼】の所業なんじゃて(ボソッ)」
「ははは!聞きしに勝る【鬼】っぷりのようですな【鬼島津】殿は!」
そんな又七郎を尻目に【レンジャー訓練】と言う地獄を前世で乗り越えた源四郎は涼しい顔で言う…この【驕り】が後で痛い目を見る原因となるのだがそんなことは知る由もない。
「…気楽なもんじゃな、源四郎。おはんは義弘叔父の人となりを知らんからそんな事言えとるんじゃ。」
源四郎のあっけらかんとした態度に肩を落とす又七郎。
「かっかっか!頼もしい限りではないか又七郎!おはんも見習え!」
豪放に笑う家久。
「(源四郎様の場合、それが【ハッタリ】の可能性もあるんだよなぁ)」
そんな三人の会話を黙って聞いている弥五郎が胸中で独白する。
そんな弥五郎に気づいた源四郎が問う。
「弥五郎…てめぇまた失礼な事考えたろコラぁ!」ダッ
言うなり弥五郎の背後を取り卍固めを決める源四郎!
「や!?思って…いててててててててて!?」
「ほぉ♫見たこともない組み技じゃの源四郎!」
「は!これは【卍固め】と申しまして♫ちょっと捻ればこの通…り!」グギギ
「いや捻りとかいらな…いてえええええええええ!?」
更に締め上げられ悲鳴を上げる弥五郎。
「あ〜鬱陶しか!やめんかげんしろぉ!」
そんな源四郎を又七郎が諌める。
そんなこんなで…
――更に数日後――
「お〜し全快したぞぉ♫」
「ははは!真田の若様はうちの若様同様頑丈らしいな!!」
「そうじゃのぉ!三男がこんな丈夫な若武者なれば兄弟達はそれは武辺者なのじゃろうなぁ!!」
「おうよ!俺の兄上達はそりゃすげぇぞ!」
「…源次郎様、茂誠様はともかく、源三郎様のことは陰で【クソバカ】とか言ってる癖に(ボソッ)。」
島津家家臣たちと仲良く話す源四郎。
この童、人たらしなのかいつの間にか仲良くなってしまったようだ(主家たる武田家が島津と事を構えていないってのもあるが)
それを見て普段の源三郎とのやり取りを思い出し呆れる弥五郎。
「…なんか言ったか、弥五郎ぉ?」
「なんでもありませんよ。」
「元気がよいのぉ源四郎…これから向かうんは【鬼の棲家】ぞ?」
そんな源四郎を尻目に少し気落ちしている又七郎。
そう、今日は家久共々【島津本家】、薩摩は内城へ向けて出立の日。
「おめぇまだ【鬼島津】殿と会うの渋ってんのか?つーか今日内城行ったらそのまま置いてかれて修行開始だろ?覚悟決めろよぉ♫」
「…その修行が【鬼の所業】なんだって言っとろうが。」
「なぁにうじうじしとっがじゃ又七郎!源四郎を見習わんか!…こほん。では皆のもの、薩摩ば向かうど!!」
「「「「「はっ!」」」」」
家久が籠の中から号令をかけそれに家臣団が応える!
「(さぁ!待ってろよ【島津本家】…そしてみお!俺は必ず強くなって小県へ帰るからな!信長公の【命】通り………お前の【剣】となって!!!)」
こうして源四郎は大腕振って薩摩入りするのであった!
さて次回!
島津四兄弟勢揃い!
果たして、源四郎は彼らに認められ【修行】に移る事は出来るのか!?
刮目して待て!!!




