其之一
――天正八年五月、真田の郷――
「あ〜…【八】の穴はそろそろ八ヶ月か…返してみるかな。」
源四郎が【種床】と名付けた衝立の向こう側で作業をしている。
齢十となり普段から野山を駆け回って遊びたらふく【治部煮】を食べて育ったおかげが同世代の子より逞しく育っていた(まぁそれは郷の子らもであるが)
また【種床】の穴の数も十二個に増えていた(埋まっているのは『恐らく』徳川、北条の間者、物見の骸である)
「源四郎様ぁ!【七】の穴から出た骨も併せるとそろそろいい量でさぁ!一旦焼いときましょうか?」
「あぁ~…頼んだ」
源四郎が郷の者に指示を出す。
二年前、この場所を昌幸達に教えてから暫く後に「今後は人手がいりまする」として郷の男どもを招集、【古土法】について説明し協力を仰いだのである(もちろん女人禁制くらいのことを言い女性の出入りは禁止、そしてゆくゆくは【敵兵の骸】をも材料として使うことも説明して。)
信心深く渋り断る者もいたが…
「真田に弓引いた段階で死ぬのは分かってるだろうが!」
「この乱世、敵兵だって殺される覚悟は出来てんだ!むしろ死んだ後にきちんと首は弔いその下は有効利用してやるってんだから逆に感謝しろぃ!」
と嬉々として参加してくれる者が大多数であった。
…ここは世紀末の荒野か?
「(ノリが完全にヒャッハー!なんだよなぁ…YouはShock!ってか???まぁいいや)…さて。俺は繁蔵のところに顔を出してあがるから戸締まりよろしくな。手洗いもわすれんなよ??」
「わかりましたぜ源四郎様ぁ!」
「常々屍肉扱ってるんでさぁ、そこは心得てますぜ!」
「うむ。では先にあがるぞ。」
そう言って【種床】を後にする源四郎。
「(しっかし、材料と人手は足りたが…やはり問題は【精度】よな。俺の知識も広く浅くだからなぁ)」
繁蔵の工房への道々、そんなことを思案する源四郎。
先の室賀の痴れ者とのいざこざで奴らの目が(幸か不幸か)潰れなかったのもその【精度】の低さに由来する。
実際問題、源四郎の作る【火薬】は割とテストを行うがまぁ不発が多い。
「(やはり彼の地に赴かなくては駄目…か。)」
そんなことを思いながら工房に向かっていると…
「あっ。源四郎様ぁ!」
「ん?…あ、みおぉ!」
みおが丁度郷に新設された【供養塔】に手を合わせているところに出くわす。
これは源四郎の【業】を共に背負いたいと言うみおたっての願いで昌幸が郷に建てたものであった。
「今日も供養の祈り、ご苦労。…手間をかける。」
「いえ手間だなんて…源四郎様の【業】、共に背負うと約束したではありませんか。」
「ふっ、そうだったな。ちと繁蔵の所へ顔を出す。先に戻ってくれるか?」
「かしこまりました。夕飯は暑くなって参りましたので【盛り蕎麦】にするとばば様がおっしゃってましたのでお楽しみに♫」
「それは楽しみだな。では。」
「はい、いってらっしゃいませ。」
そう言葉を交わし再び工房を目指す源四郎であった。
※ちなみにこの時代、本来まだ現在の【切りそば】みたいなものは無かったが…源四郎が【くるみそば(盛りそば)】を考案してまたしても郷の新たな名物となっていた。(くるみを繁蔵製すり鉢ですりつぶし垂れ味噌と出汁、みりんで延ばした汁をつけて食べる。ちなみに郷を流れる水路、小川で冷やすと夏にぴったり!なお当時乾物は高価であったが真田の郷は羽毛どてらや布団、鴨肉販売で儲けてたので割と手に入りやすかった)※
――ところ変わって繁蔵の工房(二棟目)――
「よぉ、やってるぅ?」
「おぉ!源四郎様ぁ!」
「ちょうど溜まった【泥】掻き出し終わった所でさぁ!!」
繁蔵と旦那衆が出迎える。
ここは昌幸の号令で作った【火薬精製専用棟】である。
【酒の醸造樽】を思わせる大きめの樽底にすのこ、木綿布を敷き骨灰(無論敵兵の、【種床】で土を返した際に出る副産物たる骨を焼き砕いた物)を敷きまた木綿布、そのうえに砕いた竹炭を敷きまた木綿布…そこに水に溶かした【種床】の土と木灰を混ぜ一晩寝かせた水溶液を注ぎ浸透させると…
「どれどれ…ほうほうほう♪綺麗なもんじゃねぇか♫」ポンッ
源四郎が【樽】の横の木栓を外すと綺麗な【滴り】がチョロチョロと出てくる。
これを塩を煮詰めるように水分を飛ばすと【硝石】の出来上がりである。
ちなみにそうこうすると水溶液を注いだ際に出る【泥(澱)】が蓄積するのだが…その中のバクテリアはそうそう死滅しないので定期的に【樽】から骨灰、竹灰(こちらは何度か濾過した後に【澱】と混ざらぬよう取り出して捨てる。…畑に撒いて余すことなく使うことも出来るが特に骨灰は【食物連鎖】的に問題がある。郷の皆も拒否した。)と共に掻き出し、また空になった【種床】の穴に敵兵の骸を埋める際に戻す。
これを繰り返す事によりバクテリアの総量を増やし屍肉の分解を早めるのである。
「(さながら久留米ラーメンとかの【呼び戻しスープ】、だな。)」
そんな事を考える源四郎。
「また何かお考えですか源四郎様?」
「ん?なぁにちょいとな。時に繁蔵、この二年で【硝石】の蓄えはいくら位になった?」
「ん〜…二十貫(70キロ)と少しってところでしょうかねぇ」
「そんなもんか…」
現代でそんなに【火薬の元】を所有(しかも無許可で)してれば即逮捕案件だがここは戦国乱世。
足りない、圧倒的的に足りないのである。
「まぁ確かに…ですが源四郎様、そのぉ…」
「みなまで言うな繁蔵…材料が足りんのは分かる、特に獣ども以外のがな」
【種床】の穴には敵の骸以外に山から降りてきた獣達も狩って入れているが…なにぶん【古土法】自体歩留まり(と言う言い方も材料となった【命】に失礼だが)が悪すぎるのである。
そこに加えて嵐の前の静けさとでも言おうか…
長篠以降大きな戦もなく「敵の骸を使う(勿論、首から上は懇ろに供養して)」と言ったは良いものの、その【敵(敵兵)】自体、物見か間者かくらいしか討てていないのである。
「(この間に穴山や小山田本家は武田からの離反を進めるんだろうけど…父上に言っても信じて貰えんだろうし、武田滅亡はどーしようもないなぁ。むしろそれより…)」
「(兄者が真田を出てっちゃうかも、なんだよな。まぁその後弓引いてくるワケではなさそうだから真田に討たれたりはしないが)」
そう、問題は【小山田本家の離反】である。
史実ではそこで姉婿たる茂誠はそこに追従する形で(小山田本家と親戚であれど、対等ではなく主従関係な為仕方ないが)本家ともども武田を離反、後に真田に帰参、源三郎の家(後の上田藩)に仕えることになるが…その間の動向はよく分かっていない。
「(まぁ、前にそれとなく「兄者は姉上やみおと小山田本家、どちらを取ります?」と聞いたら「本家が武田に弓引くと申すか!」ってブチギレつつも「おぬしら義弟夫婦、そして松がいる真田と対峙する道を選べるかぁ!」って言ってくれたからな。その言葉を信じよう。)」
「源四郎様?」
「あぁスマン。して繁蔵。」
「なんです?」
「前にも聞きたが、やはり今一番この日ノ本にて【火薬】の扱いを心得ておるのは…あの大名家よな?」
「えぇ。何せ種子島(火縄銃)伝来の地の領主、ですから」
「そうよな…うん、邪魔したな!今後とも頼むぞ。」
「?はい、それでは…」
何かを決心したかのような顔になった源四郎を見送る繁蔵であった。
――その夜、真田屋敷――
夕飯のくるみそばを食べ終わり家中の者が思い思いの時間を過ごす中、昌幸は自室で昌相を招き何やら話していた。
「昌相、お主この先の信濃はどうなると思う?」
「…お主には悪いが武田は持たん、な。」
「…やはりお主もそう思うか?」
「あぁ。」
「信玄公があまりにも偉大すぎたのぉ〜…せめて勝頼公にもう少し地盤を築いてから…」
そんな折…
「父上、少しよろしいでしょうか?」
「むっ、源四郎か。かまわんぞ」
「失礼致しまする。」スッ
戸板越しに声を掛けた後、部屋へ入る源四郎。
「これは出浦様、しばらくぶりで。」
「うむ。…また【種床】に行ってきたな?少し臭うぞ??」
「げっ。…おかしいなぁ、湯あみはしたんですが。」
「そう言うてやるな昌相、【種床】の管理は此奴の仕事よ…して用はなんじゃ源四郎?」
「はっ。では早速…父上、この源四郎、修行に出とうございます。」
「「…修行?」」
その頃厨では…
「みお、おこうさん。いいお茶を郷のおかみさん方から貰ったから父上と出浦様、それから源三郎へ持っていってあげて。」
「はい、姉上。」
「ありがとうございます松様…けほっ。」
「あ、おこう姉様…」
「大丈夫。真田の郷はいい所だから最近は体力もついて…家にいた頃より調子は断然いいんですよ?…けほっ」
彼女はおこう。
源四郎が【種床】を昌幸達に見せたしばらく後に源三郎に嫁いだ真田の遠縁の娘である。
当初は弱々しく病弱であったが源四郎の「多分食うもん考えて毎日手洗いうがいと散歩でもしてれば直に元気になりましょう♪」との一声で基本は玄米食、定期的に【治部煮】を食べ手洗いうがいをして毎日の散歩をした結果メキメキと体調が良くなったのである(流石に元々弱かったのか気管支系はあまり改善が見られず季節の変わり目には多少咳き込む)
更に…
「なんと言っても源四郎の【納豆】が効いてますね♪…けほっ」
「ねぇ〜。」
「はじめて見た時は…本当に腐った豆としか思えませんでしたけど、ね。」
愛妻たるみおですらちょっと引く【納豆】とは…
我々のよく知るあの【納豆】である。
これも源四郎考案で厨の隅に穴を掘り囲炉裏の炭の熾火(定期的に新しいのを足す)のうえに藁苞を入れた箱を載せると言った徹底した温度管理をして作った謹製の一品である(郷の者からもはじめこそみお同様ウケは良くなかったが今では定番のおかずとして納豆屋が郷に出来るほど)
「さて、お茶も入りましたし…みおは父上へお願いしますね?おこうさんは源三郎に。」
「はい。」
「かしこまりました。…けほっ」
そうして松、おこうと厨で別れ昌幸の部屋の前まで来たみおであったが…
「「今なんと申した源四郎!?」」
「え?」
ところ変わって昌幸の自室、源四郎が昌幸、昌相へ言う。
「ですから…火薬の調合の術と島津の兵法を盗むべく薩摩へ赴きたいと思っております。」
「お主!いま薩摩が、いや九州がどのような状況か分かっているのか!?大友、龍造寺、そして島津…大名共が血で血を洗う修羅の巷ぞ!?」
「分かっております。」
「それにな源四郎…いま武田は上杉、織田、北条、それに三河の徳川に睨まれ明日をも知れぬ。島津に文を送り使者としてお前を赴かせるなどと言うことは叶わぬ。裸一貫、身一つで島津にお主の力を見せねば門前払いどころか間者扱いで打首ぞ?」
昌相が続ける。
「それも分かっております。しかしながらそこについては島津が食いつく種がございましょう?そう…九州が修羅の巷なればこそ効く種が」
含みを持った笑みを浮かべ源四郎が答える。
「…【古土法】を奴らに伝えるか。」
「!?喜兵衛、良いのか!?!?」
源四郎の企みに気づく昌幸、そしてその危険性に気づく昌相。
「まず【古土法】を伝えれば奴らは伴天連共から【硝石】を買わずに済む、手にするまで時間はかかれどな。そして骸もそこら中に転がっとるし、九州の戦乱は収まるところを知らん。何より九州と信濃の間には毛利、織田、徳川とある。仮に島津が九州を平らげたとてこの信濃まで攻め込めはせん。」
「しかしそれでも…齢十の此奴を行かせて無事帰るかどうか…」
「ご心配には及びませぬ出浦様。」
昌相と昌幸のやりとりを遮るように源四郎が口を開く。
「この源四郎、必ずや【火薬調合】、【島津の兵法】を盗み…真田の家、ゆくゆくは武田の力となるべく無事帰ってきましょう。」
「「(と言いつつみおにかっこつけたいだけな気もせんでもないのよなぁ…こやつの場合)。」」
昌幸と昌相が同じことを胸中で思っていると…
ガシャン
陶器の割れる音が部屋の外からする。
「!何奴!?」
「…待て喜兵衛。源四郎、お前がゆけ。」
まるで戸板の外に誰がいるのか分かっているかのように昌相が言う。
「はい?…………ッ!!!」スッ
源四郎が立ち上がり戸板を開けた先…
そこにはいた。
みおがいた。
「みお…」
「~〜〜〜〜ッ!」トタタタッ
みおが割れた湯呑みもそのままに走り去る。
「みお!!!…父上!」
「あ〜〜〜〜行ってこい…二つの意味でな。」
「!では…」
「ほれほれ、そちらは帰ってからでよい。今はみおを追わんか。」
「はい!!!」ダッ
言うなり駆け出す源四郎。
「…若いな。」
「そうじゃのぉ。」
「しかしいいのか喜兵衛?本当に生きて帰れる目処は…」
「なぁに、あやつは帰ってくる…みおがおる限りな。おぬしも言うとったろ昌相?あやつらは互いに狂いおうとる。故に心配は要らぬ。」
「そうであったな…」
「さて、わしらはわしらで一献いくか?」
「良いのか?」
「不詳の息子の新たな門出よ、呑まずして如何する?」スッ
言うなり近くにある酒瓶とぐい呑みを差し出す昌幸。
「そうよな…さてあやつらいつ戻るやら。」スッ
ぐい呑みを受け取る昌相。
真田の夜はまだ長いのであった。
――真田の郷内――
「みぃおおおおおおおおおおおお!…ハァハァ。どこ行ったんだよ!?」
屋敷から全力疾走で飛び出してきたものの未だみおを見つけられない源四郎。
すると…
「お〜げんしろ〜。」
「どうした源四郎?そんなに息を切らせて??」
郷の物見櫓での見張り番から帰る途中の茂誠、源次郎と出くわす。
「兄者!兄様!みおを!みおを見ませんでしたか!?」
「みお?みおかどうかは分からぬが誰ぞ郷外れの丘に走ってくのは見たのぉ?なぁ源次郎??」
「えぇ兄者。…また喧嘩でもしたか源四郎??」
「!いえ…少し父上、出浦様との話を聞かれまして。」
「おぉ?」
「父上との…?なんだまた怪しいことでも始めるつもりか?」
茂誠と源次郎が訝しむ。
「委細は後ほど追って話しまするが…この源四郎、薩摩への武者修行へ出ることが決まりました!ではみおを追います故これにて!!!」ダッ
「「さ……………薩摩ぁ〜〜〜!?」」
呆気に取られる二人を残し源次郎は再び走り出すのであった。
――真田の郷、郷外れの丘――
「………」ツゥー
みおは一人泣きながら星を見上げていた。
「(源四郎様が行ってしまう…薩摩へ……修羅の巷へ)。」
この戦国乱世、九州の惨状は遠く信濃まで届いていた。
合戦、合戦、また合戦。
積み上げられたる屍は数しれず。
そんな乱世の中の【地獄】、その最前線、死地たる国薩摩。そこに源四郎は自ら赴くと言うのだ。
「(そんなところへ…そんなところへ!)」
「何故…何故!?何故!!!何故源四郎様でなくてはならないのです!?ああああああああ!」
そう叫ぶなり泣き崩れるみお。
すると…
「…俺が始めたことだからな。」
「!」
源四郎がやって来た。
そしてみおの隣に腰を下ろす。
「己の始めたこと、仕出かしたこと。男たるものそれらが決するまで見届け始末をつけねばならん。それが人として、武士として一人前になることだと俺は思う。そうだろ?」
「………」グスッ
俯いたまま答えないみお。
「ふっ。…存外みおもまだまだ童だよな!ほれ見ろ、上!上!!」
「?」
源四郎と共に頭上を見上げるみお。
そこには満天の星空が広がっていた。
「見事だよなぁ!なぁみお。この星空をこうして見てられるのも父上や勝頼公、死んじまった信玄公やその父祖が身命を賭して守ってきたからだ。そして俺はその父祖たちが守り抜き、今父上が守っている信濃を…」
「もういいです!」
「!?」
「みおに武士の誇りや守り抜いたものを語らないで下さい!!そんなものより源四郎様の方が大切です!」
「!」
この時代にあってとんでもないことを言い出すみお。
この戦国の世、個人の命より領地や家や身分の方が大切である。
にも関わらず、みおはそれらを全否定し源四郎を選んだのである。
「ふっ…」
源四郎がほくそ笑み続ける。
「まぁ聞け聞けみお。俺が守りたいのは父祖が守り抜いたこの信濃…もそうだがまずお前よ。」
「!」
「この信濃、故郷だから守りてぇってのはある。だが…それ以上にみおがいるからなんだ。」
「…」
「だからさ!」ザッ
「!」
なんと源四郎…【土下座】である。
それはそれは見事な土下座である!
浮気の名手、繁蔵もかくやな…土下座である!
「俺が帰ってくるまで待っててくれ!見放さないでくれ!ねっ!ねねっ!?」
「…はぁ〜。源四郎様?」
「ん?なんだみお??」
「そんな繁蔵さんのような軽い平伏…い り ま せ ん。」
「げー!?みぉおおおおおおお!?!?」
かかぁ天下率の高い真田の郷に来て早二年。
みおも逞しく育っております。
「みおの為に厳しい修行に赴くのは分かりました、けどやはり…繁蔵さんさながらの言葉の軽さです!承服できませぬ!!」
「あいつと一緒にすんなよおおおおおお!?」
「でしたら源四郎様…誓いを建てて下さいませ。」
「誓いぃ?」
「はい。」
「(…どーすっかなぁ?【ゆびきり】は江戸の遊郭で生まれた風習だしなぁ〜…そうだ!)」スタッ
何かを閃きみおの前に回る源四郎。
「?源四郎様??」
「みお!今から言うのは…遥か遠い遠い国の防人の役に就く者どもが国とそこに住まう民に誓う【服務の宣誓】ってのを俺なりに手直ししたモンだ!惚れ直すだろうから心して聞け!」
…この男、大した自信である。
「ふく…なんです?」
「まぁ小難しい言い回しだからとりあえず聞いててくれ!」
「…はい、分かりました。そこまで言うなら本当に惚れ直させて下さいませ♡」
そういうみおの顔に最早涙はなかった。
むしろワクワクして源四郎を見つめる。
お前ら、相変わらず熱いな。
「スゥ〜…」
深呼吸をしてみお見据え…そして叫ぶ!
「この俺!真田源四郎は郷の安寧と自立を守る真田の男児の役目を弁え!郷の掟を守り!民と同心し!常に義の心を磨き!仁を重んじ!己が身体を鍛え!技を磨き!強き義理を以て一筋に役目を仕遂げ!死地に赴いては危うきを厭わず!この身を以て本望を遂げ…みおの隣に必ず生きて帰ることをここに誓う!!」
「…」
言い終わり静寂が当たりを包む。
「(…言い回しが難解過ぎたかなぁ〜)。」
「…源四郎様。」
みおが口を開く。
「みおは難しい言葉は分かりません。ですが…」スッ
「?」
ガバッ
「みおの隣に生きて帰ってくる。これを聞けただけでみおは満足です♡」
みおが抱きつく。
みおさん、アンタなんだかんだチョロくねぇか?
「〜〜〜ッ!みお!」ダッ
源四郎も抱き返す。
最早お約束である。
「では夜も更けて来たし帰るか!」
「はいっ♪」
そうして二人とも足取り軽く屋敷に戻るのであった。
…戦国の世と言えどこの二人の仲は裂けないのである。
それから屋敷に帰った源四郎は源三郎やおとり、薫、松、おこう更に茂誠、源次郎を交えて改めて薩摩行きを説明。
皆「何故わざわざ死にに行く!?」、「流石ばっちゃまの孫!ばっちゃまは必ず無事に帰ると信じておりますよ!」、「この母も無事を信じておりますが…無茶はするんじゃありませんよ?」、「はぁ〜…みおが納得してるなら何もいいませんが…生きて戻るんですよ?」、「源四郎、このこう…源三郎様共々しっかりこの真田の家を守っておきます故しっかり修行に励むのですよ?…けほっ」、「松とみおはお主が留守の間ワシがしっかり守るでな!!」、「源四郎…お前が望む技、兵法、しっかり盗んでこい!」などと言い家中は上へ下への大騒ぎ。
そうこうする間に…出立の日を迎えるのであった。
――数日後、真田の郷入り口――
「では行って参りまする!」
「行ってきます…はぁ。」
旅支度を整えた源四郎と弥五郎が言う。
此度の武者修行のお目付け役を命じられてしまい仕方なくついていく羽目になったのだ。
「うむ。身体に気をつけてな。」
「拾い食いはダメですよ?」
「姉上、弥五郎はともかく源四郎はそんなことしませんて。…とにもかくにも気をつけてな源四郎!」
「留守はこの茂誠に任せろよ!」
「ばっちゃまはお前の帰る日まで絶対に死なんから安心おし!」
「お義母様、それは…」
「源四郎、こうは源四郎のおかげで元気になれました。ですからその恩に報いる為にも源三郎様共々あなたの無事を祈ってます…けほっ」
岩櫃の守護に戻った昌幸を除く皆が思い思いの言葉をかける。
そして最後に…
「源四郎様、ご武運を。」
みおがえらくあっさりと挨拶を済ます。
「おや?源四郎様、えらくあっさりですね?」
「いいんだよ。行くぞ。」ザッ
「へ〜い」ザッ
歩み出す源四郎と弥五郎。
そしてしばらく進んだところで…
「げんしろぉさま〜!」
みおの声が響く。
「行ってくるぞおおおおお!」
振り返り源次郎が答える。
こうして源四郎は皆から送り出された…
かに見えたが!
――半刻後――
「げんしろぉさま〜!」
「行ってくるぞぉおおおおおお!」
なんとまだやってた。
そして…
「さっさと行かんか阿呆がああああああああ!」ダダダダダッ
ゴスッ!
「ぐえええええええええええええ!」
「源四郎様!?」
流石に痺れを切らし猛スピードでやって来た源三郎のドロップキック(源四郎から喰らって覚えた)が炸裂!
源四郎蹴っ飛ばされての出立と相成りましたとさ。
戦国バカップル、ここに成る(*´ω`*)




