疎遠
姉の礼拝が終わった後、一緒に家へと帰った。
しかし、会話がない。気まずい雰囲気が朝の冷気に相乗する。
しかし、このままでは、姉ともう距離を縮められないような気がしてルーファは焦るようにして姉に声をかけた。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「なに?」
「私さ、再来月誕生日なんだよ?覚えてる?」
「もちろん覚えてるわ。いよいよ16ね。」
あまりの素っ気なさに少し落胆する。16になることは、ダンジョンへ行くことを許可される、いわば正式にこの村の一員として認められる一大イベントだ。もう少し祝ってくれても良いんじゃないかと、少し腐れる。
「私もダンジョンに行くのか〜、緊張してきたな〜。」
……………。沈黙の時間が再び流れる。
「……。貴方は、ルーファは絶対に死なないでね。」
はっと姉の方を向く。そう言った姉の唇はかすかに震えていた。
「あなたまで死んでしまったら、私はもう神を信じられなくなる。だから、絶対に死なないで。」
姉がこんな事を言うのは初めてだ。ましてや神を少しでも悪くいうようなことは、今まで一度もなかった。
「うん。約束ね!私絶対死なないから!なんなら、村のみんなを守れるようになるよ!」
姉が自分のことを気にかけてくれていたことが嬉しくて、少し晴れがましい気持ちになった。
「お姉ちゃんを一人にさせないから!」
姉も、一人になるのが怖いのかも知れない。自分が4年前そうだったように。
姉は自分の感情を押し殺しているのではなかろうか。ちゃんとリーファはリーファができているだろうか。少しでも自分が、姉のこのろのささえになれれば良いなと思った。
神の話を姉が出してきたことで、ふと先ほど疑念に思ったことを思い出した。
「ねぇねぇ、お姉ちゃん。なんで魔法の禁忌で命を作っちゃいけないのに、ダンジョンには魔物がいるの?西2国の魔法使いが作ったんだよね?
確かそれが、四大国東西対立の始まりなんだよね?」
姉は、今まで見たことのないような驚いた表情で、こちらを振り返ってきた。少し気圧される。
「その考えを、確信が持てるまで絶対にほかの人に言うんじゃないよ。」
「え?」
「わかった?」
「う、うん。」
何かまずいことを聞いてしまったのかもしれない。姉は敬虔なフィリシア教徒だ。神話を大して知らない私が突っ込むのを、嫌がってしまったのかもしれない。
後悔のなか、ルーファは姉と歩き始めた。
あっという間に二ヶ月は過ぎていった。姉は最近、朝に教会にはいかず、事務作業をしに昼に行っていた。カヤは寂しいらしく、姉にちょくちょく文句を言っていた。
姉が教会に行かない代わりに、一緒に過ごす時間が増えた。ルーファにとっては、一緒に過ごす時間が増えて、とても嬉しかった。しかし、姉の表情は日に日に曇っていった。
誕生日当日。村の皆は教会に集まり16歳を迎えた人間を祝福することになっている。
姉と教会に向かうと、そこには村の皆が準備をしていた。
「おぉ!!主役の登場だぜ!」
ルーファが入ると同時に声を上げたのは、幼馴染のトルだった。それを筆頭に、皆がこちらを見る。
「おぉ!今日は寝坊しなかったんだな!」
「カールさん!私最近朝寝坊克服してきたんですよ!」
「フフッ。リーファちゃんのおかげね。」
「はい。シャラさん。妹は私がみっちり叩き起こしてましたから。最近はちゃんと起きるようになったんですよ。」
そこに、豪勢な食事を運んできたカヤも便乗する。
「おや?リウッツィ?あんたも見習ったほうが良いんじゃない?って、もういなくなってるわ…。」
「アイツは逃げ足だけは速いもんな。」
声がした方に目を向けると、前線で村を守っていたタールが帰ってきていた。傷だらけで貫禄のある顔に、大柄な体格。破れた袖から見える筋肉には、傷が増えた気がする。
「タールさん!軍事施設から戻ってきてたんですね!」
「おうよ!嫁さんに子供ができたから、こっちに移ってきたんだ。」
突然の懐妊の報告に周りはざわめきだった。
「おい!聞いてねぇぞ!?」
「いつの間に!?」
「それはそれは!おめでたいですね!私も神に祈りを捧げておきます。無事生まれますようにと。」
いつの間にか、リウッツィが戻ってきていた。
やたら嗅覚がいいのか。おめでたい報告を聞いてすぐに駆けつけている。
「まぁいい、そのお祝いはまた今度パァーッとやろうぜ。今日の主役は、ルーファなんだからな。」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。もし誤字脱字や設定の矛盾、不備等あれば、教えていただけるとありがたいです。
次回はとても短い短編になると思います。




