プロローグ
姉を助けたかった。神に殺されたから、だから、神を殺した。
これは、考古学者ルーファ・シアトルの著書、四大国物語の始まりを抜粋したものである。今から記すのは、ルーファ・シアトルがこの地に生まれ、四大国物語を書き上げるまでの物語である。
扉が開けられる音でルーファは目を覚ました。部屋はまだ暗く、自分が起きたということを実感するまで、少し時間がかかった。
頭がはっきりとしてから、今姉が教会へ祈りにいったということが分かった。姉リーファ・シアトルは敬虔なフィリシア教徒だ。この村では神を崇める人間はあまり多くなく、姉は珍しい方だった。
ばっと粗末な布団をのけ起き上がる。
「お姉ちゃん!ちょっと待ってよ!私も行く!」
姉を呼び止めるため、大声を出しながら扉を開ける。フワッと朝の冷気が顔にかかる。それと同時に、姉を含め村の人々の視線が集まった。
「お!ルーファじゃないか!朝早くに起きるなんて珍しいな。リーファと一緒に教会か?」
最初に声をかけてきたのは、隣に住んでいるカールだった。4年前、両親をダンジョンで亡くしてから、隣に住む幼馴染の親のカールとシャラは、親のように気にかけてくれている。
「別に珍しくない!じゃなくて、今日はお姉ちゃんと教会に行くの。リウィツィさん起きてるかな?」
司祭長であるリウィツィもまた朝寝坊である。この村では、リウィツィとルーファは2大朝寝坊として、有名である。2人揃って、頭が良く聡い敬虔なフィリシア教徒の姉と比べられる事もしばしば。
「おぅ、そうか。リウィツィによろしく言っといてくれ。朝飯は…まあ、カヤが作ってくれるか。俺等はこれからダンジョンに行ってくる。ルーファも今年からだろ?」
この村では、16歳の誕生日からダンジョンに行き、戦士として働くことが許されている。
来月、10月18日はルーファの16歳の誕生日だ。姉は頭が良いため、簿記などの事務仕事をリウィツィから任されている。この村の代表であり、村長の役割も兼ねている司祭長リウィツィは非常に気さくな性格で、親しみやすい。しかし、司祭長のくせに神フィリシアに対する忠誠心は、ない。教徒ならともかく、僧侶や神官、司祭長など、フィリシア教を説く側の人間へ聖書直々に禁された飲酒を嗜み、無茶苦茶礼拝をサボる。毎朝くるリーファは、厄介極まりないだろう。おかげで毎朝礼拝しなければならない。
今日姉と一緒に教会へ行こうとしたのは、距離を縮めるためだ。
姉との距離は4年前来、離れた気がする。縮めようと頑張ってはみているが、あまり成果は得られていない。
気まずい沈黙を打ち破るように、ルーファは姉へ質問する。
「ねぇ、お姉ちゃん。なんでお姉ちゃんはフィリシアをそこまで信仰しているの?」
姉は少し迷ったような表情を浮かべたが、即座に笑って言った。
「私の行く末を知るためよ。」
まだ、意味は分からなかった。
読んでいただいてありがとうございます。
お手数おかけしますが、もしよろしければ誤字脱字等あれば教えて頂きたいです。




