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酸素より、君が必要~君の瞳に乾杯~

作者: 伏木 亜耶
掲載日:2025/11/10

【1】深夜の電話


タクミ:「もしもし、ハルカ? 寝る前に声聞かないと、心拍数がリセットできない」


ハルカ:「それ、私の声がタクミくんのメトロノームになってるってこと?」


タクミ:「うん。君が『おやすみ』って言うまで、俺の一日は終わらない。生物学的に無理なんだ」


ハルカ:「じゃあタクミくんの生命維持装置は私ってこと? それ、責任重大すぎて愛が加速しちゃう」


タクミ:「その言葉で眠れなくなった。心拍数、むしろ上がってる」


ハルカ:「じゃあ私も眠れない。タクミくんが眠れないって言葉で、私の脳内が君でいっぱいになった」


タクミ:「もう一回言って。今度は子守唄のテンポで」


ハルカ:「おやすみ、私の心臓を動かしてる人。あなたの夢の中にも私がいますように」


タクミ:「ハルカ、それ逆に目が冴えるやつ」


ハルカ:「ごめん、愛が重すぎて調整できなかった」


タクミ:「重くていい。君の愛の重力で、俺は君の周りを永遠に公転したい」


【2】雨の中の待ち合わせ


ハルカ:「びしょ濡れじゃん。傘くらい差せばいいのに」


タクミ:「君の顔見た瞬間に晴れると思ってた」


ハルカ:「タクミくんが濡れてる姿見たら、私の心まで雨に濡れちゃった」


タクミ:「俺の免疫、君の笑顔でできてるから。抗体が全部君の名前なんだよ」


ハルカ:「じゃあ私の白血球は、タクミくんの幸せを守るために戦ってるってこと」


タクミ:「君と会うと科学が狂うんだ。重力も時間も、全部バグる」


ハルカ:「私も。タクミくんの前だと、物理法則より恋愛法則が優先されちゃう」


タクミ:「ハルカ、そんなこと言われたら、この雨全部愛しく見えてきた」


ハルカ:「雨粒ひとつひとつに、私からタクミくんへの想いが込められてるから」


タクミ:「じゃあ俺、全身で受け止めてる」


ハルカ:「それ、私の愛のシャワーだね」


タクミ:「一生浴びていたい」


【3】初めてのケンカ


ハルカ:「ねえ、なんで既読無視したの?」


タクミ:「スマホの光が君の代わりになるのが怖かった」


ハルカ:「私もタクミくんからの通知が来ないと、スマホが意味を失うの。ただの四角い箱になっちゃう」


タクミ:「君の返信を待つ時間が、生きてるって証拠なんだよ。すぐ返したら、その時間が消えちゃう」


ハルカ:「……その待つ時間、私も同じこと考えてた。タクミくんは今、何してるかなって。息してるかなって」


タクミ:「ずるさごと、君に全部渡したい。俺の卑怯な部分も、弱い部分も、全部君のものにしたい」


ハルカ:「じゃあ私の全部も受け取って。醜い部分も、めんどくさい部分も、タクミくん専用だから」


タクミ:「怒ってる君も愛おしいから、怒ってもいいよ」


ハルカ:「怒ってる私を愛おしいって言うタクミくんが、愛おしくて怒れなくなる。これ、永久ループだね」


タクミ:「じゃあ何て言えばいい? 君が怒る権利は宇宙で一番尊いって?」


ハルカ:「タクミくんが謝る姿も宇宙一尊いから、もう許すしかない」


タクミ:「俺たち、ケンカにならないね」


ハルカ:「愛が勝っちゃうから」


【4】夜の散歩道


ハルカ:「星、きれいだね」


タクミ:「君の瞳のほうが輝いてる、って言ったら殴る?」


ハルカ:「殴らない。むしろ、もっと言って。私の栄養素になるから」


タクミ:「君のまつ毛の先に、星が嫉妬してる。天体観測より君を見てるほうが、宇宙を感じる」


ハルカ:「じゃあタクミくんは私のビッグバン。私の世界を創造した人」


タクミ:「……ねえ、それ、私が死ぬときにも言ってね」


ハルカ:「やだ、死ぬ前に俺が言う。君より先に死んで、天国で待機する」


タクミ:「それは困る。私が先に逝って、天国をタクミくん好みに模様替えしておきたい」


ハルカ:「じゃあ、死ぬ順番はジャンケンで決めよ」


タクミ:「負けたほうが先に逝くの? それとも勝ったほうが先に逝くの?」


ハルカ:「どっちでも地獄みたいな選択だね」


タクミ:「じゃあふたりで同時に死のう。心中みたいに」


ハルカ:「ハルカ、それ怖いこと言ってるよ」


タクミ:「でも本気だよ。タクミくんのいない天国より、タクミくんと一緒の地獄がいい」


ハルカ:「……君の愛、尊くて怖い」


タクミ:「尊怖、新しい概念だね」


【5】すれ違いの夜


タクミ:「俺、君に依存してるのかな」


ハルカ:「依存って言葉、冷たすぎる。私は共鳴って呼びたい」


タクミ:「じゃあ俺たち、同じ周波数なんだね」


ハルカ:「うん。私たちが話すたび、世界が静まる気がする。周りの音が全部消えて、タクミくんの声だけが聞こえる」


タクミ:「……怖いくらい、同じこと思ってた。ハルカと話してるとき、時計の針が止まってる気がする」


ハルカ:「それ、私たちふたりだけの時空間が生まれてるんだよ。他の人は入れない、タクミとハルカ専用の次元」


タクミ:「うん。俺たち、時間を創造してる」


ハルカ:「私たちの愛、四次元超えてるよね」


タクミ:「五次元くらい行ってる。もう物理学者も説明できないレベル」


ハルカ:「論文書いたら、ノーベル賞取れるかな」


タクミ:「『愛による時空の歪み』っていうタイトルで」


ハルカ:「共同執筆者は、タクミくんとハルカ」


タクミ:「著者近影は、見つめ合ってる写真で」


ハルカ:「それ学術論文として成立しないけど、私たちの愛は成立してる」


タクミ:「君の論理、破綻してるのに完璧」


【6】別れの前日


ハルカ:「明日、遠距離になるね」


タクミ:「君がいない空気、吸える自信ない」


ハルカ:「なら、私の声を録音して酸素ボンベにする?」


タクミ:「それ毎朝吸う。君の"おはよう"で肺を満たしたい」


ハルカ:「じゃあ私もタクミくんの"おやすみ"を録音して、枕元で再生し続ける。それが私の睡眠薬」


タクミ:「本気だから、やめられない。君は俺の呼吸の一部なんだよ」


ハルカ:「タクミくんは私の心臓。動いてくれないと、私の血液が循環しない」


タクミ:「じゃあ俺は君のために鼓動し続ける。一分間に、君への"好き"を70回刻む」


ハルカ:「それ、私の脈拍と同期してる。離れてても、同じリズムで生きてるってこと」


タクミ:「……離れてても、私たち繋がってるよね」


ハルカ:「うん。心臓の鼓動が、君へのモールス信号になってる」


タクミ:「何て打ってるの?」


ハルカ:「『愛してる』の無限ループ」


タクミ:「じゃあ私の心拍は『タクミくん』の無限リピート。二十四時間、あなたの名前を刻み続けてる」


ハルカ:「それ、電波妨害じゃん」


タクミ:「ううん、愛の電波。他の周波数は受信拒否してるから」


ハルカ:「俺も。君しか受信しない」


【7】空港の別れ際


ハルカ:「泣くなって言ったのに」


タクミ:「涙が君の名前になって出てくる。H、A、R、U、K、Aって、一滴ずつ意味がある」


ハルカ:「私の涙はT、A、K、U、M、Iって落ちてる。タクミくんの名前が、私の悲しみの成分」


タクミ:「愛してる、じゃ足りない」


ハルカ:「なら何て言うの」


タクミ:「君のいない世界、バグ。プログラムエラー。システム障害」


ハルカ:「私のいない世界も、タクミくんにとって不完全なプログラムなんだね」


タクミ:「再起動しても君が必要だから」


ハルカ:「じゃあ私はタクミくんっていうOSがないと起動できない。互換性100パーセント」


タクミ:「お互いセーフモードのまま、再会しよう」


ハルカ:「うん。低スペックでも、タクミくんのことだけは高解像度で思い出すから」


タクミ:「君がいなくても、君を想ってれば動けるから」


ハルカ:「私もタクミくんを想うことが、私の電源ボタン」


タクミ:「じゃあ毎日、押して」


ハルカ:「毎秒押してる」


タクミ:「俺も」


ハルカ:「……私たち、本当にバカだね」


タクミ:「うん。でも、このバカを直したくない」


ハルカ:「私も。このバグ、永久保存版」


【8】エピローグ ― 離れても


ハルカ(ボイスメッセージ):「ねえタクミ、今日の夕焼け、君みたいだった。オレンジ色が切なくて、でも温かくて。空がタクミくんの優しさで染まってるみたいだった」


タクミ(返信):「君が見た夕焼けは、俺が君を想って染まった空だよ。5000キロ離れてても、同じ空の下にいるから」


ハルカ:「じゃあ、今見てる星も? この星、タクミくんから私への光のメッセージ?」


タクミ:「うん。俺が君に送った『おやすみ』が、光の速度で届いてる」


ハルカ:「それ、何光年かかるの?」


タクミ:「愛の速度は光速を超えるから、一瞬だよ」


ハルカ:「じゃあ私の『好き』も光速超えて届いてる。タクミくんの心に、今着地した」


タクミ:「受け取った。心臓に直撃して、鼓動が倍速になった」


ハルカ:「それ、私も。タクミくんの声聞いたら、脈拍が乱れた」


タクミ:「君のためなら、宇宙の法則くらい書き換える」


ハルカ:「じゃあ私は、タクミくんのために時間を止める。私たちだけが動ける世界を作る」


タクミ:「それ、神の領域だね」


ハルカ:「愛があれば、私たち神様になれるよ」


タクミ:「じゃあ、明日も書き換えてね」


ハルカ:「毎日書き換える。タクミくんがいる限り、永遠に」


タクミ:「永遠じゃ足りない。永遠の二乗くらい愛してる」


ハルカ:「じゃあ私は永遠の三乗」


タクミ:「無限大」


ハルカ:「無限大プラス1」


タクミ:「……もう数学的に破綻してる」


ハルカ:「愛に数学は関係ないから」


タクミ:「その理論、完璧」

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