酸素より、君が必要~君の瞳に乾杯~
【1】深夜の電話
タクミ:「もしもし、ハルカ? 寝る前に声聞かないと、心拍数がリセットできない」
ハルカ:「それ、私の声がタクミくんのメトロノームになってるってこと?」
タクミ:「うん。君が『おやすみ』って言うまで、俺の一日は終わらない。生物学的に無理なんだ」
ハルカ:「じゃあタクミくんの生命維持装置は私ってこと? それ、責任重大すぎて愛が加速しちゃう」
タクミ:「その言葉で眠れなくなった。心拍数、むしろ上がってる」
ハルカ:「じゃあ私も眠れない。タクミくんが眠れないって言葉で、私の脳内が君でいっぱいになった」
タクミ:「もう一回言って。今度は子守唄のテンポで」
ハルカ:「おやすみ、私の心臓を動かしてる人。あなたの夢の中にも私がいますように」
タクミ:「ハルカ、それ逆に目が冴えるやつ」
ハルカ:「ごめん、愛が重すぎて調整できなかった」
タクミ:「重くていい。君の愛の重力で、俺は君の周りを永遠に公転したい」
【2】雨の中の待ち合わせ
ハルカ:「びしょ濡れじゃん。傘くらい差せばいいのに」
タクミ:「君の顔見た瞬間に晴れると思ってた」
ハルカ:「タクミくんが濡れてる姿見たら、私の心まで雨に濡れちゃった」
タクミ:「俺の免疫、君の笑顔でできてるから。抗体が全部君の名前なんだよ」
ハルカ:「じゃあ私の白血球は、タクミくんの幸せを守るために戦ってるってこと」
タクミ:「君と会うと科学が狂うんだ。重力も時間も、全部バグる」
ハルカ:「私も。タクミくんの前だと、物理法則より恋愛法則が優先されちゃう」
タクミ:「ハルカ、そんなこと言われたら、この雨全部愛しく見えてきた」
ハルカ:「雨粒ひとつひとつに、私からタクミくんへの想いが込められてるから」
タクミ:「じゃあ俺、全身で受け止めてる」
ハルカ:「それ、私の愛のシャワーだね」
タクミ:「一生浴びていたい」
【3】初めてのケンカ
ハルカ:「ねえ、なんで既読無視したの?」
タクミ:「スマホの光が君の代わりになるのが怖かった」
ハルカ:「私もタクミくんからの通知が来ないと、スマホが意味を失うの。ただの四角い箱になっちゃう」
タクミ:「君の返信を待つ時間が、生きてるって証拠なんだよ。すぐ返したら、その時間が消えちゃう」
ハルカ:「……その待つ時間、私も同じこと考えてた。タクミくんは今、何してるかなって。息してるかなって」
タクミ:「ずるさごと、君に全部渡したい。俺の卑怯な部分も、弱い部分も、全部君のものにしたい」
ハルカ:「じゃあ私の全部も受け取って。醜い部分も、めんどくさい部分も、タクミくん専用だから」
タクミ:「怒ってる君も愛おしいから、怒ってもいいよ」
ハルカ:「怒ってる私を愛おしいって言うタクミくんが、愛おしくて怒れなくなる。これ、永久ループだね」
タクミ:「じゃあ何て言えばいい? 君が怒る権利は宇宙で一番尊いって?」
ハルカ:「タクミくんが謝る姿も宇宙一尊いから、もう許すしかない」
タクミ:「俺たち、ケンカにならないね」
ハルカ:「愛が勝っちゃうから」
【4】夜の散歩道
ハルカ:「星、きれいだね」
タクミ:「君の瞳のほうが輝いてる、って言ったら殴る?」
ハルカ:「殴らない。むしろ、もっと言って。私の栄養素になるから」
タクミ:「君のまつ毛の先に、星が嫉妬してる。天体観測より君を見てるほうが、宇宙を感じる」
ハルカ:「じゃあタクミくんは私のビッグバン。私の世界を創造した人」
タクミ:「……ねえ、それ、私が死ぬときにも言ってね」
ハルカ:「やだ、死ぬ前に俺が言う。君より先に死んで、天国で待機する」
タクミ:「それは困る。私が先に逝って、天国をタクミくん好みに模様替えしておきたい」
ハルカ:「じゃあ、死ぬ順番はジャンケンで決めよ」
タクミ:「負けたほうが先に逝くの? それとも勝ったほうが先に逝くの?」
ハルカ:「どっちでも地獄みたいな選択だね」
タクミ:「じゃあふたりで同時に死のう。心中みたいに」
ハルカ:「ハルカ、それ怖いこと言ってるよ」
タクミ:「でも本気だよ。タクミくんのいない天国より、タクミくんと一緒の地獄がいい」
ハルカ:「……君の愛、尊くて怖い」
タクミ:「尊怖、新しい概念だね」
【5】すれ違いの夜
タクミ:「俺、君に依存してるのかな」
ハルカ:「依存って言葉、冷たすぎる。私は共鳴って呼びたい」
タクミ:「じゃあ俺たち、同じ周波数なんだね」
ハルカ:「うん。私たちが話すたび、世界が静まる気がする。周りの音が全部消えて、タクミくんの声だけが聞こえる」
タクミ:「……怖いくらい、同じこと思ってた。ハルカと話してるとき、時計の針が止まってる気がする」
ハルカ:「それ、私たちふたりだけの時空間が生まれてるんだよ。他の人は入れない、タクミとハルカ専用の次元」
タクミ:「うん。俺たち、時間を創造してる」
ハルカ:「私たちの愛、四次元超えてるよね」
タクミ:「五次元くらい行ってる。もう物理学者も説明できないレベル」
ハルカ:「論文書いたら、ノーベル賞取れるかな」
タクミ:「『愛による時空の歪み』っていうタイトルで」
ハルカ:「共同執筆者は、タクミくんとハルカ」
タクミ:「著者近影は、見つめ合ってる写真で」
ハルカ:「それ学術論文として成立しないけど、私たちの愛は成立してる」
タクミ:「君の論理、破綻してるのに完璧」
【6】別れの前日
ハルカ:「明日、遠距離になるね」
タクミ:「君がいない空気、吸える自信ない」
ハルカ:「なら、私の声を録音して酸素ボンベにする?」
タクミ:「それ毎朝吸う。君の"おはよう"で肺を満たしたい」
ハルカ:「じゃあ私もタクミくんの"おやすみ"を録音して、枕元で再生し続ける。それが私の睡眠薬」
タクミ:「本気だから、やめられない。君は俺の呼吸の一部なんだよ」
ハルカ:「タクミくんは私の心臓。動いてくれないと、私の血液が循環しない」
タクミ:「じゃあ俺は君のために鼓動し続ける。一分間に、君への"好き"を70回刻む」
ハルカ:「それ、私の脈拍と同期してる。離れてても、同じリズムで生きてるってこと」
タクミ:「……離れてても、私たち繋がってるよね」
ハルカ:「うん。心臓の鼓動が、君へのモールス信号になってる」
タクミ:「何て打ってるの?」
ハルカ:「『愛してる』の無限ループ」
タクミ:「じゃあ私の心拍は『タクミくん』の無限リピート。二十四時間、あなたの名前を刻み続けてる」
ハルカ:「それ、電波妨害じゃん」
タクミ:「ううん、愛の電波。他の周波数は受信拒否してるから」
ハルカ:「俺も。君しか受信しない」
【7】空港の別れ際
ハルカ:「泣くなって言ったのに」
タクミ:「涙が君の名前になって出てくる。H、A、R、U、K、Aって、一滴ずつ意味がある」
ハルカ:「私の涙はT、A、K、U、M、Iって落ちてる。タクミくんの名前が、私の悲しみの成分」
タクミ:「愛してる、じゃ足りない」
ハルカ:「なら何て言うの」
タクミ:「君のいない世界、バグ。プログラムエラー。システム障害」
ハルカ:「私のいない世界も、タクミくんにとって不完全なプログラムなんだね」
タクミ:「再起動しても君が必要だから」
ハルカ:「じゃあ私はタクミくんっていうOSがないと起動できない。互換性100パーセント」
タクミ:「お互いセーフモードのまま、再会しよう」
ハルカ:「うん。低スペックでも、タクミくんのことだけは高解像度で思い出すから」
タクミ:「君がいなくても、君を想ってれば動けるから」
ハルカ:「私もタクミくんを想うことが、私の電源ボタン」
タクミ:「じゃあ毎日、押して」
ハルカ:「毎秒押してる」
タクミ:「俺も」
ハルカ:「……私たち、本当にバカだね」
タクミ:「うん。でも、このバカを直したくない」
ハルカ:「私も。このバグ、永久保存版」
【8】エピローグ ― 離れても
ハルカ(ボイスメッセージ):「ねえタクミ、今日の夕焼け、君みたいだった。オレンジ色が切なくて、でも温かくて。空がタクミくんの優しさで染まってるみたいだった」
タクミ(返信):「君が見た夕焼けは、俺が君を想って染まった空だよ。5000キロ離れてても、同じ空の下にいるから」
ハルカ:「じゃあ、今見てる星も? この星、タクミくんから私への光のメッセージ?」
タクミ:「うん。俺が君に送った『おやすみ』が、光の速度で届いてる」
ハルカ:「それ、何光年かかるの?」
タクミ:「愛の速度は光速を超えるから、一瞬だよ」
ハルカ:「じゃあ私の『好き』も光速超えて届いてる。タクミくんの心に、今着地した」
タクミ:「受け取った。心臓に直撃して、鼓動が倍速になった」
ハルカ:「それ、私も。タクミくんの声聞いたら、脈拍が乱れた」
タクミ:「君のためなら、宇宙の法則くらい書き換える」
ハルカ:「じゃあ私は、タクミくんのために時間を止める。私たちだけが動ける世界を作る」
タクミ:「それ、神の領域だね」
ハルカ:「愛があれば、私たち神様になれるよ」
タクミ:「じゃあ、明日も書き換えてね」
ハルカ:「毎日書き換える。タクミくんがいる限り、永遠に」
タクミ:「永遠じゃ足りない。永遠の二乗くらい愛してる」
ハルカ:「じゃあ私は永遠の三乗」
タクミ:「無限大」
ハルカ:「無限大プラス1」
タクミ:「……もう数学的に破綻してる」
ハルカ:「愛に数学は関係ないから」
タクミ:「その理論、完璧」




