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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

時の螺旋に囚われた少女

作者: 本多真弥子

Ⅰ. 螺旋の始まり


午前零時。

少女・セレナは見知らぬ部屋で目を覚ました。

時計の針は十二を指している。

理由もなく、影が現れる。

そして必ず彼女は殺される。


絞められ、刺され、焼かれ、落とされ。

死のたびに螺旋は巻き戻り、また午前零時に戻る。


Ⅱ. 記憶の断片


セレナは目覚めるたびにすべてを忘れている。

だが、死の直前だけ記憶が蘇る。


「どうして……私を殺すの?」

問いかけるたびに、犯人の答えは違っていた。


「お前は選ばれたからだ」

「ただの遊びだ」

「お前が罪を背負っているからだ」



矛盾する答え。

救いのない繰り返し。


そして数回の後…


「私自身だ!」

私と同じ姿の影は、私の血を浴びながら残酷に、妖しく微笑んでいた。



Ⅲ. 蓮司


ある時、螺旋の中でひとりの青年が現れた。

名は蓮司。

彼はセレナの恋人だった――少なくとも、かつてそうだった気がした。


蓮司もまた、影に殺され続けていた。

二人は互いを守ろうと手を伸ばし、しかし螺旋はその意思さえも嘲笑うように巻き戻す。


Ⅳ. 救済と殺害


午前零時。

蓮司はセレナを庇い、影を刺す。

だが倒れたのは、セレナだった。


記憶が戻る。

幾度も繰り返された殺し合い。

「セレナぁぁぁぁッ!」

悲痛な叫びを残して、彼は過去へ引き戻される。


次の刻、セレナが目を覚ます。

影から蓮司を救おうと刃を振るう。

だが、血を流したのは蓮司だった。


記憶が戻る。

「蓮司……ごめんなさい……!」

涙と慟哭を残して、彼女もまた過去に引き戻される。


Ⅴ. 螺旋の罠


二人はようやく気づき始める。

互いを殺す理由はただ一つ。

――「相手を殺す影」から、互いを守ろうとしていたのだ。


だが、影の正体は常に相手自身だった。

救おうとした瞬間に、必ず殺してしまう。

愛は救済ではなく、罰へと変わる。


Ⅵ. 記憶と涙


殺すたびに記憶は戻る。

愛していた日々も、互いを守ろうとした気持ちも、すべて。

そして叫びとともに、また時は巻き戻る。


戻った直後には微かな記憶が残る。

だが目覚めると霧散し、理由も分からず涙だけが頬を濡らす。


午前零時には必ず交代が起こる。

セレナが蓮司を救い、殺す。

蓮司がセレナを救い、殺す。

救済と殺害は不可分に絡み合い、螺旋を成す。


Ⅶ. 無限の螺旋


やがて、幾度もの苦痛と悲しみから、二人の瞳から光は失われていった。

誰も、そのことを知る者はいなかった。


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