第7話『視る者狩り(アイ・ハンター)』
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戦いの翌日。
いつも通りの教室、いつも通りの喧噪。
けれど、瞳の心は、どこか落ち着かないままだった。
──“視なき者”を倒した。
──紅姫との共闘は成功した。
それなのに。
「……心の中が、騒がしい」
放課後の帰り道。
アイ=リングが低く震え、声を発する。
『注意せよ。第三勢力の気配──
“我々”を狩る者たちが、この都市に入った』
「……狩る?」
クロノの言葉が、昨日の記憶を引き起こす。
《視る者狩り》──《アイ・ハンター》
心の色を持つ者──“契約者”を執拗に追い、
その力を強制抽出する残虐な集団。
本来、異界に属す彼らが、ついに現界に介入してきたのだ。
──その夜。
街中のビル屋上で、瞳と悠貴、クロノは再集結していた。
「来る」
クロノが言うと同時に、空間が歪んだ。
その中から、現れたのは、漆黒の外套を纏う人影。
「やっと見つけた。ようこそ、我ら《アイ・ハンター》の狩場へ」
男は、マスクで顔を隠していたが、
その胸元に光るのは──《黒曜の三重眼》。
「名を名乗れ!」
銀狼が叫ぶと、男は淡々と答える。
「我が名は、《ダール=ネヴァル》。
心眼封殺者──契約者殺しだ」
──瞬間、背後の空気が凍る。
氷。いや、“霧氷”だった。
銀狼たちの背後に、新たな存在が現れる。
「下がって──そいつの狙いは、わたしじゃない」
現れたのは、白銀の髪に水色の瞳を持つ少女。
その額にも、淡い氷色の“目”の紋章。
「初めまして。私は《セレナ》。
“凍心の契約者”。」
ダールがニヤリと笑った。
「やはり現れたな、“氷の目”。
貴様の“心の色”は──冷たく、美しい」
「させない……!」
銀狼が一歩、踏み込む。
「“視る者”は、守られるべき存在だ。
たとえ相手が誰であろうと──」
「行こう、銀狼!」
紅姫が鎌を構える。
クロノが腕時計を回す。
「三方向から仕掛ける。セレナの心を守れ!」
──そして始まる、
《契約者 vs アイ・ハンター》の最初の戦争。
セレナはまだ全てを明かしていない。
だが彼女の中にもまた──“凍てついた記憶”が眠っていた。