第6話『共鳴、銀と紅の協奏《デュエット》
──異形は、目を持たなかった。
だがその代わり、肌という肌に、無数の“口”が開いていた。
囁く。呪う。嘲る。
「みせろ、心の奥底……!」 「おまえは、なにを恐れている?」 「おまえの色は、いま──濁っている!」
銀狼(瞳)が、指輪をかざす。
「来るぞ、紅姫!」
「ええ、任せて。私はもう、“視られる”ことを恐れない──!」
──ズォォン!
《視なき者》が跳ね上がり、両腕を振りかぶる。
まるで、重機のような衝撃が襲いかかる。
「俺が前へ出る!」
銀狼が、炎を纏った拳で殴りかかる。
轟音とともに、怪物の腕が吹き飛んだ──
……かに見えたが、すぐに再生する。
「再生能力か! 厄介だな……!」
そのとき、紅姫の鎌が赤い光を放った。
「なら、時間を与えず斬り裂くしかないわね──!」
「いくわよ。銀狼!」
「おうッ!」
──瞬間、ふたりの武器が共鳴した。
【心のリンク率、80%突破──合体技、使用許可】
《リフレクト・ブレイズ》起動──!!
銀狼の炎を、紅姫の大鎌が巻き取り、巨大な“紅蓮の三日月刃”を形作る。
「“心の色”を焼き付けろ──ッ!」
銀狼&紅姫
「リフレクト・ブレイズ!!」
轟音とともに、空を斬るような閃光が走った。
怪物が、断末魔の声を残しながら崩れ落ちる。
──沈黙。
そして、風だけが、残った。
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「……勝った、の?」
銀狼が肩で息をしながら、紅姫を見る。
「ええ。けど──これは、ほんの序章よ」
彼女の目は、遠くを見ていた。
クロノがゆっくりと歩み寄る。
「《視なき者》は、“本当の敵”ではない」
「これはただの“斥候”──**“視る者狩り”**の、先触れだ」
──言葉の意味は、まだ重くのしかかるだけだった。
だが確かに、ふたりの“心”は今、共にあった。