第4話『心の扉を開く鍵』
「……何だ、あれ……!」
空が、割れていた。
黒い裂け目の奥から、幾重もの目玉がこちらを覗いていた。
銀狼も、紅姫も、その異様な光景に声を失う。
『外敵反応確認──次元境界、干渉中。契約者同士の共鳴により、封印が一時解放』
指輪が言った。
それは“予定された事態”だったかのように、淡々と。
「……指輪。あれは一体……」
『“創始の目(アイ=オリジン)”──君たちの武器《アイ=リング》《クレイン・アイ》は、かつて同じ存在から分かたれた欠片』
「は……?」
紅姫が目を見開く。
「じゃあ、この鎌と……あんたの指輪は……兄妹?」
『兄妹ではない。自己分裂体だ。君たちの“心の色”に呼応し、異なる形を取っているだけ』
銀狼と紅姫は、同時に目を合わせた。
「つまり……私たちは……」
「“同じ目”を通して、この世界と繋がってる……ってことか」
刹那、空の裂け目から何かが落ちてきた。
──ドンッ
それは、少年だった。
銀髪に黒のコート、そして……
彼の胸元には、**《歯車のような瞳》**を埋め込んだ、時計型のアイ=ギアが埋め込まれていた。
「……間に合ったか」
彼は二人を見ると、静かに言った。
「ようこそ、“契約者”たち──」
「俺は《時眼の契約者》、クロノ=アイン。
君たちと同じく、“選ばれた者”だ」
──その日、銀狼と紅姫は知ることになる。
自分たちの戦いが、
“たった二人”の戦いではないことを。
この世界に散らばる、“心を視る者”たちの存在を──