『目覚めよ、我の中に』
第1話
『目覚めよ、我の中に』
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スカートは嫌いだ。
リボンも、レースも、愛想笑いも。
「女の子なんだから」は、世界でいちばん耳障りな呪いの言葉だと思ってる。
私は──瞳。
高校2年。性別は女子。だけど、自分が「女の子」として生きている感覚は、昔からどこかズレていた。
ヒーローになりたかった。
誰かを守れる、強くて、正義の味方。
でも現実は、そんな都合よくヒーローにはなれないし、
私はただの“浮いた女子”として、クラスでちょっとした異物扱い。
そんな私が、その“指輪”に出会ったのは、ある雨の日だった。
──ガチャリ。
古びた金物屋の店先。
埃まみれのガラスケースの中に、ひときわ異質な輝きを放つものがあった。
それは、硬質な銀の指輪。
甲冑のような質感。中央には「目玉」のような宝玉。
そして──その下には、まるで“口”のような細い裂け目。
「……気になる」
誰かが呼んでる気がして、私は手を伸ばしていた。
そして、それを嵌めた瞬間──
『──起動確認。契約者、ヒトミ。』
『共鳴率85%。変身適正:高。属性:炎』
『《アイ=リング》、起動します』
頭に響く、機械とも魔法ともつかない声。
「え……なにこれ、まって、え?」
指輪が光を放ち、熱が走る。
空気が震え、髪が逆立つ。
周囲の景色が、音を、色を、変えていく。
『──心の扉を、開けろ。』
指輪の“目”が赤く輝く。
「開け──心眼!!」
「目覚めろ……我の中に!!」
──ドオォォンッ!!
炎が弾けた。
学ラン。鉄鋼の肩当て。額の第三の目。
引きずるほどの赤いハチマキ。
銀髪の少年が、そこにいた。
それは、私だった。
だけど、誰よりも“私らしい”姿だった。
『コード名:銀狼──起動完了。』
……その日から、私のヒーロー人生が始まった。