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22:若気の至り

カップに口を付けたミラが、納得したという顔で頷いた。


「クロウが狙っていたのはその“ギャラリーゴースト”時代に盗んだ絵画だったんですね」


「ああ、そうなんだ。危ないとは分かっていたのだが、オークションに出したせいでクロウに嗅ぎつけられたのだろう。

あの場では政治には金がかかるなんて話していたけれど、本当は修復と保存にかかるお金がなくてね」


チラリとアレックスを見ながらルシアンが答える。


「ちょっと特殊な保存方法にしたから。

オークションに出したやつは返す相手がもういない絵だったの」


何でもなさそうに答えるアレックスを見ながらソーレンは捜査資料を思い出す。


確かにギャラリーゴースト事件で未だ見つかっていない美術品は何点かある。

盗難以前の本来の持ち主に返却にくるギャラリーゴーストを待ち伏せするという作戦で、逆に過去の悪事がバレたという資産家もいたはずだ。

横のイーライに視線を送ると、向こうも思い出したのかニヤニヤとしている。

ソーレンの記憶力は悪くない。その資産家を逮捕する際に被疑者に怪我をさせた巡査の名前もシェパードだったはずだ。


まったく若気の至りとはこの事かと、つい顔を顰めていると、ルシアンと目が合った。


「私たちの昔の過ちで二人を危険な目に合わせてしまった。

本当にすまなかった――まあ“ウルフくん”に頼めばミラが危なくなることはないと思っていたけどね」


「⋯⋯! いえ、そのつもりでしたから」


事件に必死で忘れかけていたが、どうやらミラの恋人候補として試験は合格らしい。

驚いて眉を上げた瞬間、クロウに殴られた額がずきりと痛んだ。


「私もソーレンならきっと来てくれると思ってた」


額の傷を手で押さえながら隣を見る。

ミラはルシアンの含みには気が付かず、言葉通りに受け取ったようだ。

はにかみながら小さな声で「来てくれてありがとう」と感謝する。


「頼ってくれたらいつでも飛んでいくって言っただろ?」

この笑顔が見られたなら、怪我をしたかいもあったかもしれない。

年長者からの生温かい視線を無視して、ソーレンはミラに微笑み返す。




少し頬を赤らめてコーヒーの香りを嗅いだミラがはっと顔をあげた。


「もしかして壁画の所でした古い絵の具の匂いって⋯⋯」




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