8.願ってないのに発動しちゃった加護(地獄)
今日で完結します。朝1話、夕方2羽です。
「……ん? なんか今日、調子良すぎない?」
朝出かけるときスマホを充電器におきっぱでドッキリしたのに、バッグにちゃんと入っている。
部屋の鍵、机に置き忘れたと思ったらポケットに。
結構混んでる通勤電車で座れた。コーヒー買おうとしたら、コーヒーショップの店員さんが“試飲サービスです”ってアイスコーヒーくれた。
「え……なにこれ、全人生にバフかかってない?」
職場についてさらに驚く。
「ユイちゃん、今日メイク、バッチリね」
「なんか輝いてない? オーラがあるっていうか……」
「てか新海さん、さっき“ユイさんて彼氏いるんですかね”って言ってたよ~」
(は?)
(えっ、待って待って待って!?)
なんかイヤな予感。昼休みに逃げるように弟へ電話した。
「……ねえ、なんか加護、勝手に発動してない!? 人生の調子良すぎるんだけど!」
「……あー、それたぶん、カカポが昨日こっそり試作してたやつ」
「なに勝手に!?!? なんの加護!?」
「えーと……“人気者体質になる加護”」
「いやいやいや、いらなーーーい!!!!!」
そこへ当然突撃してくるのが、茜さんである。
「ユイちゃん、あんた今、“モテの気配”すごいからこっち来なさい」
「まって、なにその霊媒師みたいなセリフ!?」
給湯室。
「……で、加護発動ってこと?」
「うん。私、なにも願ってないのに。勝手に……」
「なるほど。カカポの暴走。通称“ぐぽトラブル”ね」
「通称あるの!?」
「私は前回、“LINE消し飛ばす加護” で人生デジタル空白だったからな」
「その節はどうも」
茜さんが真顔で言った。
「問題は、“周囲が勝手に勘違いする”ことよね」
「もうしてる…… “ユイちゃんモテ期説”で、社内の女子がざわついてる……」
「あとさ。今朝、市川くんが “俺、ユイさんのこと好きっす!” って叫んだの聞いたんだけど」
「うわあああああああ!!!」
夕方。弟から追加LINE。
弟『ごめん。カカポ、気合入れて効果1週間固定にしちゃったっぽい』
ユイ『呪いじゃん!?!??』
弟『ぐぽ、暴走中。止まらない。ぐぽー! ぐぽー!! って叫んでる』
ユイ『祭かよ……』
翌日の職場。
「ユイさん、よかったら一緒にランチでも……」
「え、あの、急にどうしたんですか!?」
「いや、昨日の笑顔、すごく……こう、イイなっていうか……」
(だから、それは加護のせいだってば!!!!)
一方、茜さんはと言えば、
「へー。人気者体質加護。私も使ってみたいわ」
「……え? なんで?」
「どう作用するか、学術的に興味がある」
「理系かよ」
その夜。
カカポたちが作業していたのは……
「ぐぽ(茜さん用:人気者加護 ver.2.0)」
「ぐぽぐぽ(毒舌仕様で調整)」
「ぐぽ!(美人バリアとの相性よし!)」
「ちょっと待て、人を構成要素で分解するな!!」
【今日のワンポイント加護カカポ】
•なぜかお菓子をよくもらえる
•どうでもいい日だけヘアスタイルがきまる
•他人が勝手に“いい人”認定してくる(困惑)
ホント頼むよ……静かな日常返して……?