7.声が良すぎる男と、勘違いする鳥たち
「ユイさん。これ、今朝の資料。念のためプリントしておきました」
「え、あっ、ありがとうございます……」
「それと、コーヒー……ミルクいれますか?」
「えっ、あっ、はい……」
(なにこのスパダリ感)
(しかも声がいい!!!!)
彼の名は新海さん。営業部のエース。
三十代前半、爽やか系イケボ(重要)。話すとき、ぜったいに人を見て話す。
ただし、まったく恋愛的なスイッチが入ってこない。なんだろ、声優さん見てるみたいな。
「ユイさん、よく笑いますね。うちの部長も見習えばいいのに」
「いやいや、そんなこと……」
(その声で言うの反則では!?)
そして事件は起きる。
――というか、カカポたちが起こした。
その夜。
「ねえ、弟よ……机の上のこのビーズ、なに?」
「今日の新作。カカポたちが張り切って作ってたやつ」
「……『加護:イケボと運命の遭遇』って書いてあるんだけど?」
「ぐぽ(期待)」
「ぐぽぐぽ(仕込み完了)」
「ぐぽ!ぐぽ!(職場にイケボがいるって聞いた!)」
「カカポまさか、新海さんをターゲットに……!?」
翌日。
「ユイさ~ん! ちょっといいですか~!」
市川が声をかけてくる(今日は音量中くらい)。その背後――
「おはようございます、ユイさん」
(きた! 新海さん!)
「これ、昨日お話してたクライアントの案件、まとめ直しておきました」
(うわー……やっぱイケボ。加護いらないわコレ……)
だがそのとき――
「ユイさ~ん! 今の誰!? めっちゃ声いい人!」
「うちの部署にあんなイケボいたっけ!? え、恋!? 進展!? ねえ!!」
「ぴゃあぁぁ!?(カカポの悲鳴)」
(周囲とカカポが勝手に盛り上がってるううう!!)(てか、いつの間に会社に入り込んでんのぐぽども!)
帰宅後。
「カカポ、お願いだから『恋愛方面の加護』はストップして!? あと、会社出入り禁止!」
「ぐぽ……(むしろ進展が見たい)」
「ぐぽ~(青春ってやつ?)」
「そういうのは茜さん担当でいいのよ!!!」
その後、カカポたちは “加護:空気が読めるようになる” を新海さんのデスクに設置(誰に向けた加護なんだそれ)(ていうか出禁にしたのにまだ来るか)
数日後――
「ユイさん、周りがちょっと騒がしいみたいですね」
「あ、すみません、変な噂が立っちゃって……」
「いえ。僕が人気出る分には、別に困りませんので」
(さわやかに言うなーーーーー!!!)
【今日のワンポイント加護カカポ】
•気まずいとき、偶然電話が鳴って逃げられる
•好きでも嫌いでもない人に距離感を保てる
•周囲が勝手に恋愛フラグを立てるのを無効化(ぐぽ調整中)
今日はここまで。明日3羽投稿で完結です。