6.加護は音量を調整できるか(たぶん無理)
今日も朝夕投稿します。
ある朝のこと。
私が会社に着くなり、真っ先に思ったのはこうだった。
(……ああ、今日も耳が痛い)
「っしゃああああ!! 朝から俺は仕上がってんぞぉぉぉぉぉ!!!」
声がでかすぎる同僚・市川。営業部の熱血野郎。
彼の声は音波兵器。
打ち合わせ中も、雑談も、電話も、ぜんぶ120デシベル級の叫び。
誰が呼んだか、“スピーカーいらず”。
「市川くん、声、大きいよ」
「すいまっせーーーん!!!」
(すまない声もデカい!)
帰宅後。
「弟、お願い……『市川の音量を下げる加護』作って」
「音量? 音量ね……需要……あるな」
弟が頷くと、カカポたちが「ぐぽっ」と集まり、即会議モード。
「ぐぽぐぽ(周波数干渉で対応できる?)」
「ぐぽ(鼓膜に直接作用させる系はどう)」
「ぐぽーー(いや、それは倫理ライン超える)」
「やっぱお前たち、倫理気にしてんの!?!?」
翌朝、完成したビーズをそっと市川のデスクに置いた。
『加護:声の音量が、相手にちょうどよく届く』
(これがカカポなりの“音量調整”らしい)
その日――
「ユイさーーん!! 今日の会議、資料ばっちりすよ!!」
……って、あれ? 市川の声が普通の音量!?
ちゃんと、ちょっとだけテンション高い“元気な声”になってる!
「え、市川さん、声……ふつう……」
「えっ? あっれぇ〜? なんか今日は喉の調子、バランスいいっすねぇ〜!」
(知らぬ間にぐぽ加護が発動している)
が、しかし。
昼休み、別部署の先輩がコーヒーを飲みながらつぶやいた。
「なんかさ、さっき市川くんの声、ぜんぜん聞こえなくて……」
「え?」
「てか、電話しても無音で、切ったら“ありがとうございまし――!” って音だけ遅れてきたの。怖」
「タイムラグ!?!?」
弟の検証メモ:
•加護は個別調整するが、聞き手により反応がズレる
•「うるさいと感じる人」と「そうでもない人」で音量差が出る
•結果、「まったく聞こえない or 声だけ遅れて聞こえる現象」が発生
「いや、そこ調整しといてよ!!」
「ぐぽ……(技術的限界)」
「ぐぽー(アプデ待ち)」
「アプデあるんかい!!」
【今日のワンポイント加護カカポ】
•会議中だけマイク並みに声が通る(ただし終わると消える)
•スマホの音声入力が一発で反応する
•映画館で隣が静か
「全部音量まわり!! 需要あったの!? っていうか細かすぎない!?」
「ぐぽ(音は世界を制す)」