4.加護や開店。そしてOLが地雷を踏む
今日は朝と夕方投稿します。
その日、私は昼休みに会社の給湯室でコーヒーを淹れていた。すると――
「ねえユイちゃん」
「うお、びっくりした。なに、茜さん」
「……あんたんちの鳥、加護くれるってマジ?」
茜さん。うちの部署の先輩で、三十路のOL。
美人。シゴデキ系。ただしたまに毒舌。
職場で唯一仲がいいし、お互い社交性が死んでるので茜さんにだけはカカポのことを話してある。
「どこ情報ですかそれ……?」
「いや、昨日さ。SNSで“謎のビーズ加護、某所で配布中”ってバズってたんだけど……これ、弟くんとあの鳥たちじゃない?」
「…………弟ーー!!!」
私は即座にスマホを取り出し、弟にLINE。
【既読】
ユイ『ねぇ、あんた加護ビーズ配った!?』
弟『うん』
弟『インスタ用のスタンドも作った。人気』
ユイ『まさかの商売化!?!?』
弟『#ぐぽ加護ってタグ流行ってる』
「流行らすな!!」
「で、どうなの?」茜さんがぐいっと詰め寄ってくる。
「私、お願いしてみたい加護があんのよ」
「え、なに?」
「“元カレからLINEが一生来ない加護”」
「重いッ!!」
「あと、“異動先の上司が当たりの加護”もセットで」
「……現実がリアルすぎて、カカポがどんな顔するか見てみたい」
その夜。
帰宅すると、案の定リビングにいた。弟+カカポ軍団+謎の木製屋台。
ビーズに「転職成功!」「合コンで好印象!」とか書かれてて笑うしかない。
「お前たち……完全にマーケティング入ってるじゃん……」
「ぐぽ!(ターゲット層分析)」
「弟!! 会社の人が本気で注文してきたんだけど!?」
「おっしゃ、受注カモン」
「やる気かよ!!!」
翌朝、茜さんにビーズを渡す。
「こちら、“元カレからLINEが二度と来ない加護” です……」
「ありがたくいただきます」
「ちなみに……副作用として、LINEがなぜか“通知音ならない”バグが起きるかもって言ってた」
「……なにそれ怖い」
その夜。
茜さんからショートメッセージが来た。あれ、今日はLINEじゃないんだ?
茜さん『LINE通知こないかもって言ってたじゃん』
ユイ『うん』
茜さん『通知どころか、LINEアプリ自体が行方不明。再インストしても復活しない』
ユイ『!?』
茜さん『カカポ、わりと容赦ない。加護発動のコストは私の数少ない連絡先全部だった』
弟にLINEで報告。
「クレームきたぞ、お前ら。今後の加護バランス考えろ」
「ぐぽ……(反省)」
「ぐぽぐぽ(ちょっとやりすぎた)」
カカポたち、ゆるふわな見た目のわりに加護調整がガチ。
【今日のワンポイント加護カカポ】
・スーパーの試食コーナーでタイミングよく好物に出会える
・落とした小銭が絶対転がらない
・知り合いに見られたくないときに限って遭遇する
(最後のやつ、いらねえ!!)