2.管理人さんとビーズと謎の加護
翌日。
「ちょっとユイさん! なんですかこの湿度! カビますよ!」
来月のゴミステーション当番表を持って突如訪れた、管理人さん(60代くらい? 目立たないけど美人、めっちゃ元気)。
「えーと……その……加湿器が暴走して……」
「カビますって言ってんでしょ!? あとその緑の……ぬいぐるみ? なに?」
後ろでカカポが「ぐぽ!」とポーズを決める。
「置物です(キリっ)」
「動いた気がするけど……で、その置物、なんで三つもあるの?」
管理人さんが怪訝そうに眉をひそめている。私はにっこり笑って、できるだけ冷静に答えた。
「福を呼ぶカカポ置物です。通販で買いました」
「ほーん……ずいぶんリアルだねぇ。さっきちょっと羽ばたいた気がするけど?」
「錯覚ですね。たぶん室内気流的なアレです」
カカポたちはというと、テレビの前で三羽ならんで座り、小声でぐぽぐぽ言ってる。たぶん、またビーズ細工やってる。
「ま、いいけどね〜。あんまり濡らさないでよ? 湿気で下の部屋からクレームくるからね」
「は、はい……(昨日の洪水の件じゃん……)」
どう見ても生きてるのに、置物ってことで何となく納得してくれる管理人さん、逆にヤバくない?
管理人さんが帰ったあと、私は三羽に向き合う。
「……で、君たち、昨日置いてたあのビーズ。あれ、なんなの?」
「ぐぽ?」
「ぐぽぽ」
首をかしげるカカポたち。かわいい。許す。いや違う、許さない。
「なんか……地味に効果あったんだよね。さっき水たまり踏んだのに、靴下無事だったし」
「ぐぽーー!(ドヤ顔)」
「ぐぽ! ぐぽぽ!!(報酬よろしく)」
一羽が胸を張るようにぐぽ鳴きした。得意げだ。
報酬はリンゴでいいらしい。
翌朝、机の上にもうひとつ、今日の分らしいビーズが置かれていた。
持ち上げてみると、小さな手書きのメモにこう書いてある。
『加護:冷蔵庫のプリンがほかの人に食べられない』
「え、優秀じゃん……」
【今日のワンポイント加護カカポ】
・会計のときお釣りを間違えない
•小石につまずかない
•慌てていてもスマホを忘れない