第六話『勇者アルト、始動。そして剣神包囲網』
【王都・大聖堂地下】
勇者アルト=リューガが、騎士団とともに訓練を行っている。
その剣筋はまさに「芸術」。気品と威厳をまといながら、標的を一瞬で斬り裂く。
「この世界の“正義”は、俺が創る」
彼の背後には王国の精鋭部隊「聖槍隊」が控えていた。
いずれも魔法と剣を極めた実力者たち。
「剣神ナオヤ――。同じ転生者として、お前の存在はこの世界にとって“異物”だ」
アルトの瞳には、冷たくも燃えるような宿命の光が宿っていた。
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【森の一軒家・ナオヤ側】
ナオヤとリリィは森の奥に隠された古びた一軒家へと身を移していた。
そこには、リリィがかつて共に旅をしていた仲間が一人――
ヴィオラ・カーレン。
元王国の宮廷魔術師にして、禁呪に触れた罪で追われる女。今はナオヤの力に賭けようとしている。
「あなたが……剣神ナオヤ?」
「まあ、そう呼ばれてるな。好きじゃないが」
「……面白いわね。私も王国には借りがあるの。手を貸してあげる」
これでナオヤの陣営は3名に。
戦士型の剣神ナオヤ、暗殺者リリィ、魔術師ヴィオラ。バランスは悪くない。
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【王都・騎士団本部】
「報告です!剣神一派の所在を特定。北の廃村近くに潜伏している可能性が高いかと!」
「よし、包囲網を敷け!勇者アルトに報告!」
王国はすでに包囲網を完成させていた。
ナオヤたちは、知らぬ間に“狩られる側”へと追い込まれ始めていた。
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【包囲と迎撃】
夜。
空に星が輝くなか、リリィが耳をすませた。
「来る……大人数、30人はいるわ」
「もう包囲されてるのか……早いな。けど、これでいい」
「え?」
ナオヤは静かに立ち上がる。
腰には、ついに戻った《魔剣ヴェノムグレイヴ》。
《スキル:剣神解放・第一段階》
・身体能力を通常の10倍まで強化
・時間停止に近い反応速度を一時的に得る
・剣速強化:斬撃が見えないほどの速さに
「全部ぶっ壊して突破する。――俺に道を開け」
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【剣神の蹂躙】
騎士団が押し寄せる。
「敵は3人だ!一気に潰せ!」
ナオヤは剣を抜いた瞬間、騎士たちの一人が叫んだ。
「な……何が起きた……!? 俺の腕が……!」
彼の剣は見えない速さで周囲を切り裂き、鎧ごと敵兵を吹き飛ばしていく。
「反応速度が……追いつかない……!」
魔術で援護に回るヴィオラ、影の中から敵将を刺すリリィ。
まるで戦場を支配する“闇の三位一体”。
数分後――
《戦闘終了:王国騎士団小隊、壊滅》
《ナオヤの威名:周辺地域で急上昇中》
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【勇者、戦場へ向かう】
「剣神が動いたか」
王都で報を受けた勇者アルトは、愛剣《聖光の剣ルクスレイ》を握る。
「次は俺が行く」
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■次回――第七話『聖光の勇者 vs 剣神ナオヤ、邂逅』
正義を名乗る勇者アルトが動き出す。
剣神と勇者――二人の転生者が、ついに相まみえる!