第一章:この学園には便利屋というものがあるらしい?(2)
私立栄櫻学園。
俺が今回通うことになったこの学校は、小学校から高校まで同じ敷地内にあり、道路を挟んだ向かいには大学まで備えている。生徒数と学校関係者を合わせると一万人を超える、全国でも有数の超マンモス校だ。
入学式は栄櫻学園のど真ん中にある大講堂で一斉に行なわれ、その後、各自の体育館で担任紹介があるらしい。
大講堂に着くと、そこはまるでコンサートホールのような広さだった。席は小中高大の順に前から並んでいて、自由席制だ。俺は高校生の列の真ん中あたりが空いていたので、そこに腰を下ろして時間をつぶすことにした。
「……あの、隣、いいですか?」
「え、ええ。大丈夫ですよ」
「やったー! 良かったね、桜子!」
「ふふっ。そうだね、佳奈ちゃん」
隣に二人の女子がやってきた。一人はショートヘアで、どうやら佳奈というらしい。もう一人はセミロングで、桜子という名前のようだ。
「去年いなかったし、外部進学組だよね?」
「そう。今月、こっちに引っ越してきたんだ。えっと、君たちは?」
「ごめん、自己紹介まだだったね。私の名前は西島佳奈。隣が遠藤桜子」
「よろしくお願いします」
「こちらこそ。俺の名前は勅使河原淳。二人は内部進学なの?」
「そうそう。三年前も受けたから知ってるんだ。話がとても短くて、こっちにとっては助かるよ」
「そりゃ助かるな」
「始まりますよ」
「えー、皆さん、まず栄櫻学園に入学おめでとうございます。校長の八木慎太郎です。これからの君らの学園生活が、思い出に残るような日々になることを願っています。続いて、理事長先生のお話です」
「本当に短いんだな」
「でしょ?」
「静かに」
「皆さん、おはようございます。理事長の葛城秀樹です。校訓の『自由・努力・協調』の意味をよく考えながら、学園生活を送ってください。次に、学年別の入学式に移動します。小学生は第一体育館、中学生は第二体育館、高校生は第三体育館、大学生はこのまま大講堂で行います。それでは、小学生から先生の指示に従って移動を始めてください」
「退場は、こちらのドアからです」
小学生が一番大変そうだ。
「俺らが最後なんだな、西島さん?」
「そういうこと。あ、それと佳奈でいいよ。みんなそう呼んでるし」
「分かった。俺の名前も長いから、ジュンでいい」
「OK、ジュン」
「私もそう呼んでいいかな? 私は桜子でいいから」
「分かった」
「高校生の皆さんは、こちらのドアから退場してください」
「よし、行こっか」
「そうだな」
俺たちは第三体育館に向かって歩き出した。
【あとがき】
ここまで読んでいただきありがとうございます!
『~ようこそ栄櫻学園便利屋へ~』、略称「よう栄」です。
転校生・ジュンと、ちょっとクセのある仲間たちが巻き起こす、
学園ドタバタ便利屋コメディをどうぞお楽しみください!
本作は【毎週6話更新】を予定しており、全60話完結を目指して連載中です。
気に入っていただけたら、ブクマや感想をもらえると励みになります!
次回は【5月4日(日)】に更新予定です。よろしくお願いします!