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GIRL MEETS WIZARD

エレノア視点です

仲間たちが祝宴に出かけている間、エレノアはひとりで温泉に入っていた


エレノアは混乱していた


見られた、見られた、見られた


思い出したらまた恥ずかしくなってきた


両手で顔を覆う


何故軽々しくキスなんて許してしまったのだろう


一緒に旅してきた仲間たちに見られたことが一番きつかった


外から祭りのような賑わいが聞こえてくる


エレノアは仲間と出会った日のことを思い出していた





つつしみ深く、女性らしく、どこに出しても恥ずかしくないように

小さな頃からそう言われて育った

それが何を意味するのかも知らないうちから淑女として振る舞うことを求められて、そしてそれに応じることが自分のつとめだと思っていた


それが嫌ではなかったのは婚約者のオルガーがいたからだ

父の取引相手の息子である彼が、エレノアは子どもの頃から大好きだった

ワガママをいっぱい聞いてくれて、時には叱ってくれる、優しくてカッコいい王子様

正式に結婚を申し込まれた時は、生まれてきてよかったと思うほど幸せだった


その先に待っていたのは彼のクソみたいな裏切りだ


自分のこれまでの努力や恋心、結婚への甘い憧れみたいなものは、“真実の愛”とかいうよくわからないものの前に崩れ去った

今思えばヤケになっていたのかもしれないけど、家を飛び出したあと、これまでの自分なら絶対にやらないことをしようと思った





山道を丸一日歩き続けて、ラテスカの町に着いたとき、冒険者風の若い男が歩いていたので自分から話しかけた


「あなた、ひとり?一杯付き合っていただけないかしら」


冒険者と関わるなと家族からは言われていた


「え、俺?」


いきなり話しかけられて、彼は戸惑っているようだった


「でも、俺、お金あんまり持ってないし、怖いお兄さんとか後から出てこられても困るんだけど」


どうやら美人局だと思われたらしい


「お金なんてとらないわよ、一緒にお酒飲みましょうよ」


「いいけど」


人生初のハンティングは無事成功した


「ところで、お酒を飲むにはどこに行ったらいいのかしら?」


「え?」


「わたくし、町ってあんまり来たことがないから、よくわからなくて」


それまで困惑していた彼が、急に笑い出した


「君、面白いね」


それから彼は笑顔で続ける


「俺も田舎の出身なんだ、この町ははじめて来たけど、多分もうちょっと中心街の方に酒場があると思うよ、一緒に行こう」


歩き出そうとすると、彼がエレノアの手を見て言った


「まって、怪我してるね」


「え?」


街道ではない山の中を歩いてきたので、エレノアの手足は傷だらけだった


「エンタイトルツーベース!」


次の瞬間、傷がきれいに治った


「すごーい!あなた魔法使いなのね、治してくれてありがとう」


エレノアは魔法を見たのは初めてだった

その時後ろから声が聞こえた


「ひ、ヒジが治ってる!これでまたマウンドに立てるぞ」


「でも、なんで急に?」


「神様が見たかったんだろ」


何やら感動的な出来事があったらしい


「あああああああ!」


さっきまで笑顔だった彼がいきなり叫んだのでエレノアはビクッとなった


「まただ、ダメだ、ダメだ、俺はダメだ」


何かブツブツ言ってるし、やっぱり冒険者と関わらない方がよかったのかもしれない

でも、彼は悪い人ではなさそうだ


「よくわからないけど、あなたにも事情がありそうね」


エレノアは落ち込んでる彼に手を差しだした


「わたくし、飲まなきゃやってられない気分なのよ、今日はとことん飲みましょ」


それがエレノアとウィリンの出会いだった





それから酒場へ行って、自己紹介もそこそこに2人で飲みまくった


「魔法のコントロールがきかなくなったからって、今までずっと一緒に冒険してたのにクビだなんて、あんまりだよ」


「なーにが『君には本当に申し訳ないと思ってる』よ!あのクソクソクソロリコン野郎!使用人に手を出すなんて」


「俺たちの絆ってそんなものだったのかよ、今まで、いろんな困難に立ち向かってきたのに、今までの冒険は何だったんだよ」


「女の方も何あの『私、そんなつもりじゃなかったのに、愛されちゃってごめんなさい』みたいな顔、ああー、思い出したらまたムカついてきた」


1ミリも会話がかみ合わない

お互いに言いたいことをいいまくってるだけのカオスな空間だった


そこにさらに2人加わることによりカオスは加速する





「あなた達は冒険者なんですか?」


話しかけてきたのは小柄でかわいい女の子と、父親にしては若すぎる男性の妙な二人組だった


女の子は父親を探してるとかなんとか


男性の方はかなり変なことを言っていた


彼いわく、結婚式に向かっていたはずが異世界に来てしまい、元の世界に戻る方法を探しているとのこと


エレノアは結婚という言葉は聞くのも嫌だった


「それは大変だね、俺にできることがあったら言って」


ウィリンがまじめに応対してるのを見て、エレノアは自分の狭い価値観でものごとを判断していたことを恥じた

世界は自分が思ってるよりきっとずっと広い

異世界に迷い込んでしまうことも珍しくないのかもしれない


「西の都の賢者のもとに行こうと思ってるんだ、それで仲間を探してる」


なんか西の都の賢者のところに行けばなんでも解決できるらしい

そんなすごい人間が本当にいるのだろうか


「西の都、俺も行く!」


ウィリンがパーティーに加わった!


そんな大事なことを泥酔している時に決めていいのかとエレノアは思ったが、パーティ結成には勢いも大事なのかもしれない


エレノアは賢者のことなんてどうでもよかったが、毒をくらわば皿まで、このパーティーで旅をするのは楽しそうだと思った


「わたくしも行きたいわ、西の都」 





思い返すと、アルコールに脳を侵された末の即席パーティーがよくここまで旅をしてこれたものだ


ここまで来たら西の都には絶対に行きたいし、たかだかキスくらいでいつまでもウジウジしていても仕方ない


仲間のもとに行こう、エレノアは立ち上がった

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