表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

第0話 ある港町にて

ある港町の片隅に流麗なリラの音色が響く。

その澄んだ音色は、水が流れるように風が語りかけているようであった。

それを奏でているのは旅汚れた外套をまとう青年であった。

その青年の指がリラの上を流れるたび優しくそして少し涼やかな風と音色が流れた。

その音が一つの区切りを迎える頃には青年の周りは港町の人でいっぱいとなった。

青年は人が大勢集まっているのを確認すると、一旦演奏を止め大きく一礼した。

そして小さく何事かをつぶやくと青年の周りに緑と青の光が突如現れた。

その光は昼だというのに確かなそれでいて淡い光を放ちながら青年の頭上や集まった人たちの上をくるくると踊るようにとんだ。

誰かが「精霊だ…」とつぶやいた。

そのつぶやきは瞬く間に集まった人たちの間に広まり、誰もがその二つの光を目で追い青年の周りはざわめきに包まれた。

そのざわめきがピークを迎えた頃……


「―――♪―――♪」


どこからか女の歌声が流れ始めた。

人々がその歌声の主に目を向けると、なんとさっきまで一人だったはずの青年の隣に、アイスブルーの衣装で身を包んだ、一人の女性が立って歌っていた。

そして女の歌声に会わせるように、また青年はリラの演奏を始めた。

そしてその二つが重なったとき、人々はその音色と歌声に飲まれていった……


女の歌声が紡ぐ物、それはこの世界の始まりを記した誰もが子供の頃に一度は聞いたことのあるおとぎ話であった。



~~かつて世界が一つの大陸であった頃、そこは神と人と精霊がともに暮らす楽園であった。

神は人と精霊を見守り、育み、精霊は人と神をつなげ、人は神を敬い精霊を友とし共に歩んでいた。

世界はうれしかった、人と精霊と神がともに暮らすその自分が永遠に続く物だと信じていた。


しかしまず神が姿を消した、神は暇だったのだ、いくら敬われてもいくら見守っても決して変わることのない自分に飽きてしまったのだ。

そして神は、自らの身を細かく分け精霊と人に分け与えた。

それは自分無き後も彼らが幸せ暮らせるようにとの神の最後の慈悲であった。


次に人が変わってしまった、神がいなくなったことにより与えられた力、そして自らの知恵を使って、人が人であるべき姿を歪め始めた。


最後に、精霊が狂ってしまった、神がいなくなり、人が歪んだ世界で精霊は自分のあり方が解らなくなってしまったのだ。そこで狂った精霊たちは彼らが神になり、この世界を元の姿に戻そうとした、そのためには歪んでしまった人はじゃまな存在だった。狂った精霊と人との争いが始まった。


楽園は争いが絶えぬ地獄へと変わった。


世界は悲しかった。だから世界は自らを分け、狂った精霊達と人を隔離した。

そして人が残った世界では天変地異を起こし大陸を割り人の記憶と知識を奪った。

狂った精霊達の世界は闇に閉ざし永久に他の世界と交わらないようにした。


最後に世界は眠りについた、けして起きない眠りについたのだ。


割られた大陸に、戻らぬ歪みを抱えた人と狂わず人の側についた精霊達が暮らす世界、それこそが私たちの住んでいるこの世界………~~




音と歌声が止まった。

一度しんと静まりかえった後、わっと歓声が上がった。



港の人たちが青年の周りからいなくなり普段の喧噪が戻る頃には、青年の前に置いてあった古い帽子の中はおひねりでいっぱいになっていた。

青年はおひねりを丁寧に革袋に入れると、帽子をかぶり港町の喧噪へと一人消えていった。

青年の手にはリラはなく女の姿もいつの間にか消えていた。

ただ変わりないのは青年の頭の上で緑と青に光が楽しそうに踊っていることだけだった。






青年の名は『ヘイゼル=ポーレル』という。

この物語の主人公である。


まず後書きまで見ていただきありがとうございます。これから、不定期ではありますがまっっっったりと更新してゆくんでよろしくお願いします。


もう一つ、一年ほど止まっている連載作品の方も筆がのり次第更新するので、気が向いたらそっちの方も見てやってください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ