願って救われるなら
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
現れた男性はロキです。
生まれ育った場所が場所なので、この言葉。
鐘の音を聞いたのです。主旋律はアレグロ、対旋律はレント。当たり一面に響き渡る、目の覚める様な早鳴で。そうして見上げた視線の先には一つの建造物が御座いました。
淡い緑色の帽子被ったような屋根に、曲線で描かれた装飾達。そうして壁に嵌め込まれたステンドグラスが、聖人様のお姿を現しておいでです。
私は暫くまじまじと見詰めた後に、くるりと回り込んでおりました。そうして導かれる様に、中へと誘われました。えぇ、イエス様のお導きのままに。
中に入ると、荘厳な風景が広がっております。薄い水色の壁に、長い年月を経た金の装飾。そして複数の羽を持つ天使様と対峙致しました。両脇には外で拝見させて戴いた聖人様が。真上から優しく見下ろして下さいます。天井にはオペラ座で使用される、花弁の様なシャンデリアが真上まで。以前、画像で拝見させて戴いた白と金の絢爛豪華な内装とは異なり、何処か落ち着いた雰囲気が私の素肌を撫でるのです。
私は端の方に置かれた木製の椅子に腰掛けて、その煌びやかな空気に浸っておりました。時折顔を上げると、ため息が出るほど美しい青が目に入ります。そんな風にただ微睡んでおりますと、お独りの男性が、お出でになりました。
すらりとした高身長、ふさふさとした長髪、そしておっとりとしたタレ目が美しい男性で御座います。その豊かな髪から、お知り合いを連想したのは、私だけでは無いでしょう。
「カルぺ・ノクテム、お嬢さん」
御方はその薄い唇を開きます。そうして癖のない柔らかな声で私に問いかけるのです。
「此処に来るのは初めてかな?」
「はい。兼ねてより、興味を惹かれておりましたが、訪れるのは」
そう、申し上げると男性はにっこりと笑って、視線をお上げになりました。視線の先には聖人様のステンドグラス。
「此処に嵌められた聖人のお名前は……ええと……うん、忘れてしまった」
あらまぁ。
「でも、人から聞いたエピソードはちゃんと覚えてるよ。お母さんを天国へ行かせる為に、お母さんの善行を神様に伝えた話。確か……葱がどうとか……。天国に召されるとか何とか……」
「海外の宗教は、葱に馴染み深いのですねぇ」
キリスト教に関しては詳しくは御座いません。ワインとパンがイエス様の血と肉であることくらいしか。故、少し驚きが勝ります。
そうお返しすると、ただただ悲しそうな目をなさって、囁くようにお話になるのです。
「願って誰かが救われるなら、どれだけいい事だろうか。でも……亡くなったからこそ、天国に行かせてあげたいよね」
そのお言葉に返す言葉が御座いません。慰めも、励ましも、きっと遠い場所にお住みの方なのでしょう。
故……どうかこの美しさがこの方の心を癒して下さいますよう。
怪異を題材にしたアニメがあるんです。
それの座敷童子のお話のモデルになった場所へ行って参りました。
とても綺麗でした。螺鈿の装飾がとても。
でも上手く言葉にならなかったので、言葉になる方に。
登場したのは、カルぺ・ノクテムのロキです。
彼奴の生まれの世界が中々に歪。
不老不死ですが子供が生まれると、片方の親が狂うんです。
だから此方が対処するしかないんです。
何故、我々を作った神々は、楽に死なせてやらなかったのか。
殺すにしても、もっと良い方法があるはずだ。
という思い。だから。
あんまり神様のこと好きじゃない。
でも天国には行かせてあげたい。
その思いからこの台詞。
「願って救われるなら、どれだけいいだろうか」