異次元の踏切
こちらは百物語九十一話の作品になります。
山ン本怪談百物語↓
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友達と飲みに行った時の帰り道での出来事。
時間は夜中の3時。
夜風に当たりながら小さな田舎道を歩いていると、目の前に小さな踏切が見えてきた。
「なぁ、知ってるか。ここって有名な自殺スポットらしいぜ」
酔った友達が嬉しそうにそう言い放った。
「知ってるよ。オカルト番組にも紹介された有名な場所らしいな。何でもこの踏切で電車が通りすぎるのを待っているといきなり死にたくなって飛び込んでしまうとか…」
ここは有名な踏切で、通称「三途の踏切」と呼ばれてる。
年に数件必ず飛び込み自殺があり、噂ではここに潜む地縛霊が仲間を増やすために犠牲者を増やしているとか…
「なぁ、ちょっと実験してみないか?」
友達がそういうと、意気揚々と線路の中に入っていった。
「本当に幽霊がいるのなら、俺たちヤバいことになるよな?何か起きた場合、お前に今度飯をおごるよ。何も起きなかった場合、お前が俺に飯をおごれよ!」
友達がバカな賭けを始めたが、当時は自分も気持ちよく酔っており、その場の勢いに任せて賭けに参加してしまった。
「おう、牛丼大盛り頼むぞ」
友達が線路の中に入ってから約15分後…
「なぁ、もういいんじゃないか?」
当然、何も起こらない。
「えぇ~?お前のために粘ってやってるんだぜ!」
友達は線路の中で小躍りしながら、周りの様子を確認している。
「もういいよ。寒くなってきたし、もう帰ろうぜ」
季節は秋に入って少し肌寒さを感じる時期。酔いが覚めてきたこともあり、俺は賭けよりも早く家に帰りたいという気持ちの方が勝ってきている状態だった。
「なんだよ、面白くねぇ………おおっ?」
友達が線路から抜け出そうとしたその時…
カンカンカンカンカン…
突然遮断機から警告音がけたたましい音を立てて鳴り始めた。
「おい、電車来るぞ!早くこっち来いよ!」
俺は友達に向かって何度も手招きをした。しかし…
「………っ!?………っ!!」
どういうわけか、友達は線路の中から動こうとしない。しばらくすると…
ガタンゴトン…ガタンゴトン…ガタンゴトン…
電車がこちらへ向かってくる音が聞こえてきた。
「おい、何やってんだよ!ふざけんなよ!早くこっち来いって…早くっ!」
友達に向かって声をかけ続けたが、友達は動こうとしない。
いや、正確には…
動くことが出来ない様子だった。
「何してんだよ、おいっ!」
俺は決死の覚悟で線路の中へ飛び込むと、友達の腕を引っ張ってすぐに線路の外へ逃げようとした。
しかし…
「う、動けねぇんだよぉ!誰かが俺の両足を掴んでんだっ!?」
すぐに友達の足元を確認したが、友達の足を掴んでいるようなものは見当たらず、ただただ震える友達の足が見えるだけだった。
「何で動かないんだよっ!?」
焦りながら友達を引っ張っていると、目の前に列車の姿が見え始めた。
ガタンゴトン!ガタンゴトン!
カンカンカンカン!
絶望を感じたその時…
「あぁ!?動けるっ!?」
友達の足が急に動き始めた。俺と友達は急いで走り出すと、線路の外の田んぼに向かって無我夢中で飛び込んだ。
その数秒後…
ガタンゴトンっ!ガタンゴトンっ!ガタンゴトンっ!ガタンゴトンっ!
自分たちがついさっきまで立っていた場所を電車が猛スピードで通過していった。
「はぁ…はぁ…はぁ…あ、危なかった…」
俺は慌てて友達に近寄ると、何が起こったのかを聞いてみた。すると…
「はぁはぁ…お、俺があの線路から出ようとすると、急に足が動かなくなったんだ!誰かに掴まれたみたいに…足だけ金縛りみたいになっていたんだよ…!」
友達はパニックになりながら、当時の様子を必死で俺に伝えていた。この様子だと、友達が嘘を言って俺を騙そうとしているとは思えなかった。
そしてもう一つ、気になることがある。
「なぁ、なんで今の時間に電車が来るんだ…?」
腕時計を確認した俺は、今の時間が夜中の3時25分だということに気がついた。
こんな時間に電車が来るはずなんて絶対にありえない。
終電なんてとっくに過ぎているはずだ。
「この踏切…マジでヤバいんじゃないか…?」
俺たちは泣きながら急いで家に帰った。
布団に潜り込んだ後のことは、よく覚えていない。
あの時、なぜ友達の足が動かなくなったのか。
どうしてギリギリになって足が動くようになったのか。
あの来るはずのない電車はなんだったのか。
まだ何もわかっていない。
あの踏切では、今でも自殺者が増え続けている。
遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
山ン本怪談も百話まであと少し…
もう少しだけお付き合いお願いします!