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ここは異世界らしく  作者: つぶらな瞳
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7 小さな村 ③

じっと下がった3人の頭を見ていると、一番小さな頭か少しずつ震えだし、嗚咽を交えて泣き出した。

ようやく自分がした事が引き起こした事を認識出来たようだ。


「……ねぇ、その子。死ぬわよ」


ガキィンと、頭を地面に擦りつけていた女獣人の爪が振りかざされ、マカの結界に弾かれた。


「っナリッサ!!」

「母さん!?」


攻撃と同時に殺気を放ったガルインとサイルの足を土魔法で硬め同じくこちらに来たライズに無用と手を広げる。

フーッフーッっとまだ弾かれ血を流したままの爪をしまわずこちらを威嚇する女獣人ことナリッサは片手で胸元を抱きしめその目からボタボタと涙を流し続けていた。


「奴隷になる覚悟も、そこの子の代わりに死ぬつもりもあったんじゃないの?」

「…………………っ、……ふぅ、ゔ、」

「どうか!どうか、お許し下さい、私が死にます、どうか!!」


ナリッサの前にいき、また頭をすりつけて懇願するこの男の獣人は多分このナリッサとやらの旦那で、となりの子供が息子……そして…。



「ライズ、これが何か鑑定して。」

「ん?…これは!マカこれをどこで!?」


ライズからマジックバッグに見えるようにと持たされたバッグからギリギリ手のひらに乗るサイズの椰子の実のような実をライズに鑑定させると鑑定前から木の実の事を知っていたようだ。


「鑑定は?体に害はある?」

「あ、ああ。…『鑑定』……大丈夫だ害はない、むしろ…」

「そう。ありがとう」


ライズが鑑定を終えるとバッグから小さな平台のようなものを出しクリーンをかけると果物ナイフのような物で半分に割る。中には真っ白なミルクのような少しトロミのある液体が入っていた。


「ナリッサ、その子とこっちにきなさい」

「っ!?」

「っおれが!」

「俺が代わりに!!」


ナリッサを庇うように立った二人を威圧で押さえつける。

べしゃりと潰れるように膝をついたふたりを見てからナリッサにコイコイと手を振る。


「早くきなさい。」


自分の手と出した木でできたコップにクリーンをかけ先程の実の液体をいれた。まだこちらを警戒して動こうとしないナリッサをじっと見る。


「死ぬわよ。その子、貴方が死んだら結局その子も死ぬ。さっき覚悟出来てたんさじゃないの?そんな覚悟があるならさっさとこっちに来なさい。」








ヨタ、ヨタと、流れる涙をそのままに、マカの1メートル前まで来たナリッサはぎゅうと胸元を抱きしめていた。

手に持っていたコップをグイッと傾けゴクリと飲み込む。

半分に減った中身をナリッサに見せ、グイッと押し付ける。


「飲んでごらん。鑑定で毒はないとライズが証明しているし、わたしも毒味した。」

「……………」

「っおれが!飲みます!!」

「あんたは後よ。さっきで分かったでしょうけど、貴方じゃわたしに指一本触れないわ。」



じっと見ていると、赤く染まった手が震えながらコップを掴んだ。ミルクのような液体を見たあと、震える手でゆっくりと傾けたると喉がゴクリとなった。

見ていた旦那獣人と子供獣人がボロボロと涙を零す。


「…………?………え?」

「毒はないわね。気持ち悪いとかは?」

「……………いえ」


スタスタと近寄ると、ナリッサの手にある少し残った液体にコップごともう一度クリーンをかけて水魔法で水を半分までいれる。後ろからザワザワとしている声が聞こえるが気にしない。 


「ライズ」

「『鑑定』…大丈夫だ」

「ナリッサ、その子を見せて」


胸元を握っていた手がピクリと動く。

涙がポロポロと流れるまま、ボロボロの胸元に手を入れてそっと両手で余るくらいの小さく布に包まれたものを取り出した。

布のスキマから見えたのは小さい小さい犬の赤ちゃん。

ピクリとも動かず、少し開いた口からは微かに息が漏れていた。

小さい木のスプーンを取り出し、それと包まれた布ごとクリーンをかけるとコップに入った薄めた液体を掬い子犬の舌に少しずつ落とすと小さな喉がコクリと動いた。



コクリコクリと少しずつ飲み、半分程を飲んだ所で「キュウゥ」と小さな鳴き声が聞こえた。

シンと静まり返っていた為、夫や息子にも聞こえたらしくすぐにナリッサの所へ走ってきた。







子犬を囲うように泣く3人を見ていると両サイドから抱きしめられた。









「無理やり出たの?怪我してる」

「このくらい平気だ」

「マカ、少し傷にあてますよ」


水で濡らしたタオルをそっと傷口にあてるとピリッと痛みが走った。


「そのままにしててね」

「え?」



『ヒール』


スルリと何かがガルインとサイルの足首を撫でたと同時に怪我の痛みが消えた。

タオルをそっとどかすとまだ血の跡は残っていたが傷は綺麗に消えていた。


「マカ……聖魔法を使えるのですか…?」

「サイル、話はあとだ。」

「………そうですね、すみませんマカ少しじっとしていて下さい」


腰に付けた小さいバッグから包帯のような長い布を取り出すと、くるくると怪我をしていた部分を中心に巻く。


「すみませんマカ、怪我が治っている事は黙っていて貰えますか?」

「……わかった」


サイルが包帯を巻き終わるのを見てから、ガルインは先程マカが出した実をじっと見ているライズの方に向かった。






















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