5 1つ目の村 ②
「離しなさい。」
静かに、空気を震わすような声が響く。
ジワリジワリと薄灰色のローブのフードが赤く染まり、白い頬をつたってぽたりぽたりとローブの胸元を汚していった。
「っ申し訳ありません!!」
先程預けた魔物を運んでいた人の中から大柄だが痩せこけた犬系の獣人が駆け出し、首を掴まれたまま宙に浮かしている、ガルインの足元へ跪いて額を地面に擦り付けた。
話は数分前に遡る。
チカチカと点滅するオレンジがかった赤い点を視界の端に移しながら不躾にならない程度辺りを見渡す。
本当に村とは言えない。
点の数を数えれば全部で28。
雨がギリギリ防げる程度。
徐々に近づいてくる点も気付いていたし、飛んでくる拳大の石も見えていた。当たる直前にな張っていた結界 を解除し、投げた5歳くらいの少年を視界の端に捉えそのまま右側頭部に衝撃が走った。
「っがっ!!」
グッと締め付けられる首にある手を剥がそうと小さい手が抵抗するとガルルっと牙を見せ瞳孔の開いた目で暴れる者を見つめた。
「離しなさい。」
「マカ、先に治療をっ」
いつの間にか布を頭に押し付けているサイルを手で押しやりスタスタと歩く。
「聞こえなかった?離しなさい。」
「なんで結界を解いた。」
「私が自分をどう守ろうと関係ないでしょ」
閉まる首が苦しいのか一層足をバタつかせる7歳程の犬獣人を離すようにガルインを見ると、溜息を一つ付いて手を離すとドサっと地面に落ちた。
「ねぇ。何で石なんか投げたの」
「げほっ、るっさ、い、けほっ、人間が、何でくるんだ!」
「質問に答えなさい」
「人間なんか、みんな死ねばいい!」
「そう。ならいいか」
その辺にあった石を掴み振り下ろした。
「ぐっ!!」
ビジャ。
小さい犬獣人を庇うように出てきたさっきまで跪いていた獣人の額からボタボタと血が落ちていく。
「っ父さん!?っなにすんだ!!」
「っ、申しわけ、ありま、せん」
「父さんっ、何してんだよ!?」
そのまままた額を擦り付けるように謝罪を繰り返していく。
「え?あんたこそ何言ってるの?」
「はあ!?」
「私があなたにやられた事をそのま返しただけでしょう?」
「………は?」
「あなたが、私に石を投げて、私は怪我をした。」
「父さんは関係ないだろ!?」
「本当にね。」
怒りに牙を剥き出しにする小さい獣人の瞳をジッと見つめ返す。
「この人はあんたの代わりに殴られただけ。」
「っ!?」
「死ねばいいって言ったじゃない。殺すつもりだったんでしょ?なら私にも殺す権利があるわよね。」
「!!」
意味が理解出来ないと言うように目を見開いて固まった小さい獣人の頭を父親らしき獣人が無理矢理に下げさせた。
「っ、ど…か、どうかっ、私を代わりに!!」
「父さん!?」
「私が、死にます、必要があれば、奴隷でもかまいませんっ、この場で首を落として頂いて構いません!どうか!どうか、「私がっ」」
あばら家のような家から1人の獣人が走って来ると土下座をする獣人の横に同じ用に跪いた。
「私がっ、行きます、奴隷商に売っていただければ、この人よりお金になりっ「ナリッサっ!!」「母さん!?」」
「どうかっ、どうかこの子の命だけはっ」
私は謝罪を繰り返す獣人夫婦?をジッと見ていた。