2 我慢は体に悪い
「褒めたのに。」
「いや、あれは褒めたとは……」
「見られたのは私も一緒ですよ、しかもそちらは3人。」
私の言葉にハッと気付いたように3人がバッと土下座をする。
あまりの勢いに少し体かさがる。
「申し訳ない!!!」
「悪かった!!」
「す、すまない!!」
「ちゃんと責任は取らせる!」
はい?
私は生まれも育ちも日本だ。
大学で出会った旦那と三人の子供、普通に幸せに過ごしていた。
そんな私がなぜ異世界に居るかと言うと………
話すような特別な理由はない。
小説のように召喚されただとか、巻き込まれただとか、神様のミス……なんてものでも無い。
とゆうか私自信小説は読むが、異世界ものなどは正直聞きかじった知識しかないのだ。
普通に寿命を迎え、先に行った旦那を追った筈だった。
のだが…………
目を開けるとそこには中々がっしりとした体つきの美形のオネェ様が………
「わぉ、貴方私が見えるのね!ステキ!ちょっとお茶していきなさいな〜」
「あ、はい。」
返事をしたのが運の尽き、そこから体感一年ほど(実際はどれだけだったかわからん)素敵な男性神や、仕草の何処がエロチックだとか、趣味の刺繍の話などなどどれだけ会話に飢えていたんだと思うほどマシンガントークをかました。
「あーん、こんなに話を出来たの久しぶりよぉ♡」
「だいぶ溜まってらっしゃったんですねー」
うふふっと笑う目の前の自称女神(男神)は優雅に紅茶を飲む。
自称女神(多分男神)はメルディス様と言われる方らしく、地球の神ではないらしい。
人が死に、転生するまでに長い旅をするらしく、たまぁに私のように違う聖域に入り込んでしまう魂があるらしい。
それでも一万年に一回あるかどうかくらいの確率らしいが。
「とーっても楽しかったわぁ、いい加減あなたを輪廻に戻さないといけないわよねぇ…」
綺麗な顔を少し歪めて寂しそうに呟く姿に思わず頭をよしよしと撫でる。
綺麗な翡翠の瞳を見開いてとても嬉しそうに微笑むメルディスに笑い返すとそっと手を取られる。
「ねぇ、瞬。私の世界に行ってみない?」
こうして私は異世界へと旅立ったのだ。
なんて回想と言う現実逃避をしている間にじっと私を見つめる6つの目。
一番年上らしい、男の人はライズさん。
横にいるさっきまで悲鳴をあげていたお二人の父親らしい。
息子さんは年子らしく、兄が黒に近い青髪を短髪にしているガルインさんに、弟が同じく青髪を肩甲骨まで伸ばしているサイルさん。
雰囲気は大分違うがパーツはよく似ている。
さてはて、そろそろ現実に戻らねば話が進まない。
「とりあえず内容を簡単に整理すると……」
①この世界には女の子が中々生まれず女性が少ない。その為女性がとても大事にされている。
②女性は旦那にあたる人物、又は家族以外に無闇に肌を晒してはいけない。(襲われたり危険が伴うため。)
③女性の体を見てしまった場合、または故意的に触ってしまった場合は責任をもって婚約しなければならない。(無闇やたらに女性に触ったりさせない為。)
④女性が少ない為に重婚が認められている。(圧倒的に男性が多いため)
「…………で。責任をとる……と。」
うんうんと首を縦に振る3人をみる。
3人………。
いい加減突っ込んでいいだろうか………
髪の隙間からピコピコと動く耳!!!
フッサフッサとゆっくり動いている尻尾!!!
ここまでくればお分かりだろうか。
獣人じゃん!!!!
メルディス「え?あたしの世界 ?ちょっと魔法が使えたりするくらいで、普通普通〜なぁんにも変わんないわよぉ★」
魔法だけでも「おおぅ……」ってなったのに、地球人に獣人は普通じゃないから!!
異世界ものには当たり前?
そっち系の知識はホントないんだってば!!
どうしよ。
正直、責任うんぬんより犬っぽい耳と尻尾のほうが気になるけど………。
「…………見たのはお互い様ですし、此方も気にしないんで、ちょっとした事故だったと忘れて貰って大丈夫ですよ」
面倒くさいからもうそれで解散〜
「そうゆう訳にはいかないんだ。」
「へ?」
「君は多分この国の者じゃないんだろ?この国の者なら知っているはずの事をまったく知らない様だし……」
「そうですね、海の向こうから来ましたので……(とゆう設定)」
ライズさんはフゥーと息を吐くと、さらに説明を続けた。
曰く、この世界には真実の石と言うものが存在しているらしく、婚姻の際に使われるらしい。
その石に男性は婚姻する女性を大切にする事、他の女性にうつつを抜かさない事などなど、色々誓約を交わすらしい。
「その為、過去にあった事であろうと誓いに反した行動があると石が反応し誓いが跳ね除けられてしまう。」
「つまり、わたしの体を見たという事が契約違反(前科がつく的な)みたいになってしまうと……。」
体を見たと、言った瞬間二人の顔が赤く染まり耳がせわしなく動いた。
「でもそれだと全く興味のない方と婚姻しなくてはいけないですよね」
「あぁ、だから婚姻ではなく婚約なんだ。」
「ん?」
「やはり好みや相性などはある、今回のように不可抗力で、と言う事もなくはない。なのでこのような場合一年の婚約期間を設ける。その間、男は女性に尽くし、大切にする事で婚約を継続するか、一年後婚約を解く事を選べる。後に別の女性と石に触れても誓いは通る事になる。」
「嘘発見器かよ」
「ん?」
「や、こっちの話。………つまり、婚約しないと二人は今後結婚出来なくなるかもしれない……………と」
確かにそれはまずい。多分この子達結構若いしまだまだ今からが楽しい時期だろうし……
因みにこの国はホントに女性が少ないらしくとても大切に育てられ、一人で出歩くなとまずないらしい。(わざと婚約をしようとする輩を出さない為でもある)
考えながらジッと二人を見て見る。
チラチラと此方を気にしながらピクピクと動く耳!!
まだ何か色々と説明しているライズさんの声が遠のいていく。
「…………から、こちらの都合ばかりで申しわ「かわいぃ」…………………は?」
もう我慢は出来なかった。