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Personality Creators

作者: カケル

 時は2021年、化学は進歩を遂げ、男の子の夢である人型ロボットが完成した。

 しかし戦争への使用を懸念したため、搭乗できるのは女性のみという特殊な機能を取り付けた。

 その機能こそが、一人の男を狂わせることになるとは、誰も予想しえなかったのである。




 あれは一年前の、まだ寒さの残る3月だった。

 暇すぎて、祖父が住んでいる家の裏山に入った時のこと。

 中腹あたりで何かを見つけた。

 それは深緑色の布で包まれていて、ところどころ破れていた。

 いつもなら逃げるはずなのに、そっと手を差し伸べる。

 その時、一瞬にして目の前に現れて、腕を掴まれ、ソレは頭から倒れた。

 手を引き剥がそうとしても固く、叩いたり蹴ったりしても離さなかった。



 三十分程かけて山をおりると、既に布は取れていて、ボディの灰色がまるで睨みつけるように光っていた

 ソレは、[フシュー!]という音と共に立ちあがり、静止した。

[パイロット認証開始、……完了。武装のロックを解除、スラスターのリミッター上限を設定]

 そして、いきなり襟を掴まれたと思うと、思い切り真上に投げ飛ばされた。


 モニターや回線でぐちゃぐちゃの場所で目を覚ました。

[なんで男が乗ってるの!?ともかく、アンフィニの自動操縦に任せてください]

 突然モニターに火が灯されると、【sound only】の文字が大きく写された。

「自動操縦って、どこに行くんですか!」

 しばらく声の主は黙り込んだ。大きなため息をつくと、こちらに地図を転送してきた。

[場所は私立AC女子学園です。元々起動させた者を連れていく予定だったので]

 赤い点が付けられていた。その下のモニターには、現在の速度と高度が記されていて、俺を乗せたロボットは空を飛んでいるらしく、高度計は3000mを示していた。

[二百km巡航で二時間あれば着くので、その間にこの機体の取扱説明書でも読んでおいてください。足元のペダルの近くにあると思います。ではさようなら]

 【sound only】の文字が消え、外の様子が映し出される。言われたように説明書を取り出すと、機体のオフショットが貼られていた。

『まずは、見つけてもらいありがとうございます。この機体はアンフィニ、無限の可能性という意味を込めて名付けられました。どうか大切に扱ってください』

 手書きの文章と写真を使った簡単な冊子で、この機体を知らない俺でも分かるくらいだった。

 何回も読み直しているうちに、時間は過ぎていった。

 そのでわかったことは、今乗っているロボットの正式名称がAC(Armord Core)であり、コードネームがアンフィニということだ。

 機体が少し揺れると、コックピットの上が開いた。

「お、男!?とにかく着いてきてください!」

 ACの次は女性に捕まった。

 周りにはさっきまで乗っていたモノに似たロボットがこちらに銃を向けていた。



 部屋に連れていかれると、そこには一人の女性が奥に座っていた。

「校長、連れてきました」

 暖かい目線で温厚そうな人だが、どこか冷徹さを兼ね備えているようだった。

「ご苦労さま。少しの間、2人にしてくれない?」

「分かりました」

 女性はACと共に部屋を出ていく。

「君がその坂本さかもと ヒロト君ね。こちらで情報を調べさせてもらったわ。でもごめんなさい、こんな手荒な真似をして」

「別に気にしてはないでけど……」

 この場に耐えきれなくなり、ドアノブに手をかけたその時、

「この学園から遠く離れると、命の保証はないよ」

 振り向くと、拳銃を構えていた。

 どうやら本気で帰らせる気は無いらしく、トリガーに指をかけている。

「君がここから出ていけば、あなただけじゃなく、家族にまで影響が及ぶわ」

 なかなか姑息な手を使ってくるな、と思いはしたが、次の一言で考えがすぐに変わった。

「この学園のテストってとても難しいんだけど、特例だし、特別にテストなしでもいいわよ?」

「……分かりました」

「そう言ってくれると信じてたわ!じゃあ学生服を手配して、名簿にも登録しなきゃね!」

 俺そっちのけで書類を作成するためにパソコンとの格闘を始めた。

「あ、私はたちばな 響香きょうかよ。とりあえずこの紙にサインしてね!」

 促されるまま書くと、雑に印鑑を押し付け、パソコンの横に投げ捨てた。

 そして後ろのコピー機がまるで悲鳴をあげているかのようになき始めて、紙をはき出す。

「入学までの一ヶ月は寮にいて、必要最低限は外に出ないで。君の存在を早くに知られたくないの」

 了承する余地もないまま部屋を叩き出されて、そして別の職員に殴られ、地面とぶつかった。




 頭痛と吐き気で目を覚ました。

「あの学園は軽いな」

 男の声が聞こえる。まるで笑っているかのような声で、ほかの仲間と思われる人物も会話に加わる。

「次はどこ行く?」

「そうだな……。おい、目を覚ましたぞ」

 こちらに気づいたのか、会話が止まった。

「少し協力してくれ。もうすぐ奴らが来る」

 間も無く轟音と共に扉が破られた。光が灯って初めてこの部屋の全貌を見ることかできた。コンクリートの打ちっぱなし、隅には血溜まりができていた。

「もう来たのか……、やるぞ!」

 男たちは何かを構えると、ACへと姿を変える。

「なぜあなた達が!」

「教えるかよ……、少なくとも、俺たちの仕事を奪ったお前らにはな!」

 男の一人がナイフを手に取ると一気に詰め寄って腹部を突き刺し、離れざまに首を切りつけた。

「抵抗をやめろ。これ以上戦うとコクピットを突き刺すぞ」

 女性はたじろぎ、スモークを炊き、その場から逃げ出した。

「追撃部隊が来るかもしれん。早く逃げるぞ」

 手を引かれ、壁を突き破り空を飛んだ。




 到着したのはとても静かな山の中。

「ここなら大丈夫だ。機体は使ってないみたいだし整備は無しとして、問題は運用方法だな……。そういえば 雨宮がいたな」

 おうい、遠くで機体を整備していた少女を呼び止め、手招きをする。それに応じて歩いてきた。

「何でしょうか」

「ACの全てを教えてやってくれないか」

 ため息を吐くと、こちらを睨んだ。わ

「気は進みませんが、隊長がそう仰るなら」

 顎で合図を出し、歩き始めた。隊長は頭を下げていたが、少女はそれに気づかなかった。


「じゃあ早速実戦練習に入ります」

 奥画に出たと思うと、そこは丸い広場で、女性はすぐさまACを起動させた。こちらも負けじとアンフィニを出現させると、すぐに乗り込む。

『敵対反応を検知、武装全ロック解除。各ラックに取付開始……完了、機体タイプをノーマルに設定しました』

 訳の分からない言葉を延々と呟き、サブモニター左側に武装の種類、右側に弾薬が表示される。

 取扱説明書にはこの後、火器管制システムの設定と各スラスターの燃料配分、そしてブースターのリミッター設定をしなければいけない。と書かれていたが、今回は自動でしてくれた。

[始めます]

 突然詰め寄り、散弾を腹に打ち込まれた。しかし目立つダメージはなく、右腰のハンドガンを取りだした。

『照準はこちらで合わせます。好きなタイミングで撃ってください』

 躊躇なく引き金を引き、身を引きながら作戦を立てる。

 この状況なら立ち止まれば撃ち込まれるが、だからと言って逃げ回れば勝機も逃げてゆく。

 そういえば先程、ショットガンを喰らってもあまりダメージはなかった。ということはいくら接近しても大丈夫という事になるだろう。すぐさまブースターのリミッターを解除し、ハンドガンを投げ捨て、後ろ腰のナイフを取りだし突撃を敢行した。

 気合いの声と共に切りつけ、ターン、ブースター再点火を何度も繰り返した。

 次第に膝をつき始め、ついに倒れた。

「私が負けた……?次はこんな簡単に倒されてあげないから、覚悟しておいてください」

「は、はい……」

 先程よりもっと怖くなっていて、こんな返事しかできないのであった。


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