76.大豆が欲しいんです!
朝は相変わらずの鳥のギャース! という怪獣音に起こされ、ノアとおはよーと挨拶してダナに身支度をしてもらってから食堂に向かう。
今日は忙しいんですよー! 午前は会合、午後はソーセージ作り!
そういえば館内が心なしか明るくなった様な気がする。相変わらず古めかしいけどね! 作りは立派なんだけどねぇ。無駄に広いし。
うちの館って部屋数ってどれ位あるんだろうね? 私の部屋もすんごい広いし。部屋広いのに衣装部屋が別にあるんだから……貴族って。
私は服にはあんまり興味がないので基本ダナにお任せです。
ただ! 今日はうちの騎士達の制服デザインを決めようと思っているので気合が入ります! 軍服って揃ってるとカッコいいよね!
私付きの護衛騎士達は私が話をしているのを聞いているのでちょっと気になるみたいです。
それもエルが拡張バッグを高額で売ってくれれば、なんですが。
そういえば武器とか武具とかも出来れば揃えたいよね。……魔剣とかあるのかな? 付与できるのかしら? ちょっと見てみたい……またエルに怒られちゃうかな?
エルは今日は私と一緒にいてくれるみたいです。近いうちに王都に行く予定ではあるんだけど、ハヴェルさんがすでにツィブルカに向かってきているらしく、ハヴェルさんと会ってから王都に行ってくる、だそうです。
私の知らない所で魔法具の手紙のやりとりをしていたらしい。お手紙のやりとりが見たかった……。
朝ご飯を食べて今日は一階にある謁見室で待機。エル、テオドル、ダナ、護衛の兵四人が並んでいます。私だけ座ってる。そんな大仰にしなくていいのにね……。
謁見室といってもちょっと広い部屋という感じで王宮とかお城で王様が謁見するみたいな感じではないです。そりゃツィブルカ田舎だもんねー! 私、他の場所の事も知らないけど。
まずはダイズ農家さんみたいです。テオドルが案内して連れてきてくれました。多分一丁羅なんだろうな、という格好で、気を遣わせちゃったみたい。びくびくしながらテオドルの後ろを小さく身を縮めて入室してきた。
普通のおじさん、って感じの人で落ち着かないのかキョロキョロしている。
「リーディア・ブラダエナ・ツィブルカです。今日はわざわざ来ていただいてごめんなさいね。聞きたい事があったんです。気を楽にして下さい」
と言っても難しいんだろうけどねー。
「聞きたい事とは、な、何でございます、です、でしょうか……?」
「言葉遣いも気にしなくて結構ですよ?」
くすっと笑いたくなったが我慢する。
「ダイズについてです。ダイズは緑色のさやをつけて、中身を食していますが、中の実が育つとどうなりますか?」
なんといっても不思議世界だ。きちんと生態を聞いておかなきゃないよね。
「中……えっと、育つと実がぱんぱんになります」
お? やっぱ大豆になるんじゃない!?
「薄黄色になります?」
「はい。でもそうなると飛ぶので……」
は? 飛ぶ!? 何だそれ!?
「……飛ぶ、とはどのように……?」
「実が膨らんでさやから弾け飛ぶんです。こう、ポーーンっ! と。なので飛ばない内に収穫します」
農家さんが手を広げて上に勢いよく上げた。え? そんなに弾け飛ぶものなの? 不思議世界仕様なの? 色がまともだと思ったら生態がまともじゃなかったらしい。
「どれ位飛びます?」
「うーん……その実によって違うから……飛ぶヤツは木の上の方まで飛んでいきます。たまに収穫するのを逃していた実が飛んでいって知らずにいると変なとこから生えてくる事があります」
なんと! 木の上の方まで飛ぶとな! マジか!
「……飛ぶ直前に収穫する事って出来ますか?」
「…………どうだろう? 出来なくはないとは思いますが……ただ触った拍子に弾け飛ぶ事もあるんで危ないです」
危ないとな!? そりゃ実がびょんと飛んできたら危ないな! 目とかに当たったら危険だわ!
うーん……。
「膨らんだ実は全部上に飛びますか?」
「そうですね。ほぼ上に飛びます。方向はあちこちですが」
ど、どうしたらいいんだ? 収穫方法が浮かばないんだけど!
「え、っと……お嬢様は種が欲しいんで?」
種、種? いや、間違っちゃないのかもしれないけどあれは大豆ですよ!
「……そうです。沢山欲しいんですけど」
「…………」
農家さんがなんであんなの欲しいんだ? と言わんばかりの顔をする。口には出さないが。
「細かい目の網を上に張ったらどうだ? 棒を立ててあちこちに。ある程度は網にかかるんじゃないか?」
エルが口を挟んできた。醤油作りは女神様のご要望ですもんね。
「それならある程度は集まるかとは思います……はい……多分」
「では手間ですがその様にしてもらってもよろしいですか? 収穫に時間がかかるだろうし、余計な仕事も増やしてしまいますが、その分高く買取ります。網を張る為の補助金もお出ししますのでやってもらえますか?」
「高く買い取ってもらえるなら!」
おじさんが目をキランとさせた。今までで一番乗り気になった様子だ。
「もし、知り合いのダイズ農家さんがいて同じ様に試してみてもいいという方がいれば話してみて下さい。多く欲しいのです」
「分かりました。親戚や知り合いにも声をかけます」
やったー! 大豆ゲットできるかもー!
収穫時期は秋だそうで、まだ時間がかかるみたいなのは仕方ない。補助金の事は私はどれ位設備にかかるか分からないのでテオドルに丸投げする事にして農家さんとの話を終えた。




