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65.ズルバッグを作ろう。後編

「……………………魔石、どれ位のを使う?」


 エルから質問がきたけれど、私に分かるはずはない。知らないと首を振るとエルがはああああぁぁと大きな溜息を吐き出した。


「魔法陣を書くだけでディアの魔力の減り方を見ると……一体何て書いた?」

「んふふ」


 エルが頭を抱えている。うん? 結構魔力を使ったって事なのかな? 自分的には半分位しか、って感じなんだけどもね?


 エルがはぁともう一度溜息を吐き出して、腰のバッグから大きな黒い魔石を二つと薬を取り出した。あの回復薬と同じように試験管の瓶のようなやつ。


「これは魔力回復薬だ」


 おおう……そんなのあるんだ!? やっぱ薬師のお勉強もしたいな! 自分で作れたらいいよね! あ、でも、もしかして……また毒みたいな味するの? いや、ちょっと……それは……。


「回復薬ほどじゃないが、これも苦い」


 エルがにやりと笑った。私の顔色読んだね……。


「魔力が足りなさそうなら魔石を持ったまま飲むんだ。先にやってみろ」

「うん」


 何か起きた時の為に私が先、なんだろうね? エルの顔が真剣でそしてちょっと心配そうだ。

 私は自分のポーチをテーブルに置いてその上に魔法陣を置き、そして魔石を握った。私の小さい手でぎりぎり手の平に握れる位の大きさの魔石だよ。これ何の魔獣の魔石なんだろうね? そしていくらなんだろうね? 怖いわ……。

 わーーー! ずずずずっと魔力が吸い取られていくー。やっぱこれ残ってた分の魔力では足りなさそう。体の奥に塊であった魔力がどんどん小さくなっていくわ。

 エルが出してくれていた薬に手を伸ばそうとしたらエルが蓋を開けて渡してくれる。


「んぐーーーっ」


 にっが! 本当に毒じゃないでしょうね!? でも確かに毒具合は回復薬よりましか? でもやっぱ苦いよ!

 回復していく魔力の片っ端からまた吸い取られる。え? これ間に合うのかな? と思ったら残り三分の一も切り、これ魔力足りる? と思ったところで止まった。


「ふうーーー……」


 ほっとして息を吐き出し、そして魔石を魔法陣の上に置いてみた。どうかな? 起動するかな?

 ふわりと魔法陣が浮き上がり、そしてエルに買ってもらった黒いポーチに全部が吸い込まれて消えた。


「やったーー! 出来た! アイテムボックス? インベントリ? すごいー!」


 きゃーきゃーと声を上げながらポーチを持って飛び跳ねた。すんごい嬉しい! これぞ異世界ファンタジーだよね!!!


「さぁ! エルも!」


 やってやって! と催促するがエルは頭を抱えている。


「マジかー……」


 いや、マジかーを使いこなすなし! キミ異世界人。日本人ではないはずだろ。

 思わずスンっとなって興奮が治まってしまった。

 エルは頭を抱えていた手を魔石に伸ばし、魔力を込め始める。新しいバッグに魔法陣を置き、魔力回復薬を手元に移動させた。いつでも飲めるようにしとかないとね。

 そして魔力を込めている途中で魔力回復薬を飲んだと思ったらすぐに魔力を込め終わったらしく魔石を離した。


「…………俺の魔力のほとんどか……」


 はぁ、とまた溜息を吐き出しながら魔石を魔法陣に乗せた。すると私のと同じようにエルのバッグに吸い込まれていく。私ので成功してるんだから成功だよねー!

 そういやアイテム一覧ってどうやって見られるのかな? バッグを触っても見えないし、手を突っ込んでみても見られない。失敗した? でも失敗だと魔法陣光らないんだよね?


「アイテム一覧」


 声に出してみたら! おおーー! なんか頭の片隅? 視界の隅の方? に現れる感じだ! これは便利! すごい! 女神様ありがとーーーー! 

 …………成功したのって料理の賄賂渡したからとかじゃないよね?


「エル、アイテム一覧って言ってみて?」

「アイテム一覧? んんっ! なんだコレ!?」

「んふふふー……便利でしょー?」

「…………容量は? 何を付けた?」


 まったく! 相談もなしで! とエルが憤慨している。怒らないでよ。便利なんだからいいでしょ?


「無限収納、時間停止、浄化、清潔、自動修復、アイテム一覧、使用者指定……かな?」


 エルが唖然とした顔をし、そして固まる。さらに、動いたと思ったら机に突っ伏した。


「なんだそれ……国宝級どころか伝説級いや神話級か……ああ、ディアは女神のご加護があるんだったもんな……ヴェンドラ神認定か……お供えも消えるし……」


 エルが壊れたようにぶつぶつ言っている。ちょっと怖い。……と思っていたら整理がついたのかエルが復活した。


「使用者指定だもんな。俺とディア以外には分からないって事だな。よし」


 どうにか自分に言い聞かせたらしい。


「しかしなんでそんな大仰なものを付けようと思ったんだよ……」

「え? 私の中ではアイテムボックスっていったら付いているものだと思ったから?」


 ゲームとかラノベの中だと常識だもんね。私の中では当然の機能なのである。


「どうしてこんなのが付いているのが当然なのかが全くもって分からない。ま、いい……あ、自分のバッグが出来たんだからこれは返す」


 エルが浄化滅菌箱と女神様から貰った手紙と瓶をさっと返してきた。自分のバッグの中に入れておきたくないというのが丸見えだ。


 ……これらはエルのバッグに入れてもらっておいた方がよかったかも? そしたらエルいなくならないんじゃ? と思ってももう遅いか。


 

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