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55/302

55.鍛冶屋さんに注文。

「お名前は?」

「……ダリボルと申します。今日はどの様なご用件で?」


 鍛冶屋の店主というか親方、って感じの人が迷惑そうな顔をしていた。うん、すみませんねー。でも遠慮はしない。


「ちょっと作って欲しい物があるんです。ただ、作る事が出来るのか、それとも別の工房に行ったらいいのか分からなくて」


 テオドルにちょっと説明したけれど物が分からなくて、とりあえず厨房で使う物だと言ったら館で使う金物関係はこちらの工房で作っているから、と来た訳だが、私の言葉に店主はカチンと来たらしい。

 挑戦的な視線を向けてきた。


「ダナ」


 ダナに書いてきた紙を出してもらい、店主に渡してもらった。店主は紙を受け取ると食い入るように見た。


「……これは何に使う物だ? 大きさは? 重さは? こっちのは何だ? こっちも」

「…………言葉遣いが」


 ダナが顔を顰めたが教育を受けていなければ敬語を使うのは簡単ではないだろう。私はダナに首を横に振って止め、店主に笑みを向けた。

 まずは泡立て器の説明をする。私の拙い絵が恥ずかしいが。ケーキ型はとりあえずシンプルな型を。オーブンに入れて焼く事も伝える。シフォンケーキ型も欲しいが、まずはノーマルのケーキ型と泡立て器の出来を見てからでいいだろう。

 ケーキ型は底を外せるように出来るかも聞いてみる。引っ掛けるように出来る金具はあるのだろうか? 側面を金具で緩めるようにしないと底が抜けないし。


 店主? 親方? から質問が次々飛んでくる。泡立て器一つにも持ち手や幅、重さなどどうしたらいいかと。でも私は金属の素材がどういうのがあるのか分からないので、説明するだけで親方にお任せだ。だってステンレスとかないだろうしね! フッ素加工も分からないし!

 とりあえず料理に使うものなので材料の品質が変わるような物を避けてもらえればいいのではないだろうか? あとは厨房の人が使ってみて改良していけばいいだろう。


 あとはコイル。

 これの説明は難しいよね。使える幅が広すぎるから。とにかくまず私が欲しいのは椅子とソファとベッドか。

 あとはよくラノベにあるように馬車に使うとか? そこら辺も私は詳しはないので専門の方に丸投げします。


「これは何に使うんだ?」

「うーん……色々使えるんですよ? でも私が欲しいのはまず椅子と長椅子とベッドです」

「あ? 椅子とかは家具屋だろう」


 そうなるよね! でも違うのだ。


「ダナ」


 ダナにまた紙を渡してもらう。コイルだけの絵じゃ分からないかな、と思って椅子の下にコイルを敷き詰め、上に綿、布でカバー、みたいな感じで書いてみたのだ。

 正しいかどうかは分からんのだが!


「このような感じのが欲しいんです」


 親方がうーん……と唸って考え込み始めた。


「こいつは時間がかかるが……?」

「だと思います。座り心地がいいものを作ってください。時間はかかっても構いません」


 私の作って欲しい物は一応伝えた。たが、店内に気になる物があって隣に黙って立っていたエルの服を引っ張った。


「なんだ?」

「あれ……」


 指差したのはマントとかバッグなどの装備品だ。鍛冶屋さんって金属を扱うだけじゃないの?


「ああ、魔獣の素材を使う武器や装備も鍛冶屋の仕事になる」

「魔獣素材」


 という事は。魔獣素材バッグに魔法陣の魔法したらいいのでは?


「ね、魔法陣付与楽になる?」

「ああ、魔力を通しやすいから魔石の消費が少なくて済む」


 ですよね!


「バッグか?」

「うん!」


 私も是非ズルバッグが欲しいもん!


「どれがいい?」

「あの黒いの!」


 黒色の革で斜めがけできる小さめポーチがあった。私の身長だと大人が持つ様なバッグじゃ大きいし、腰に下げたりはドレス姿では無理なのだ。

 そしてこの黒ポーチ、形が半円で可愛いのだ。ベルトがついて縫い糸が白なのもアクセントで可愛い。


「黒……白に染めるとかしてもらったらどうだ?」

「やだよ。黒がいい。白なんてもっての外だよ。汚れが目立つ」

「…………汚れ」


 エルがくっ、と笑った。

 笑うのはいいけど、エルって再々黒を避けさせようとするよね。バッグとか服なんて黒だっていいじゃんね!


「俺も新しいのを買うか……大分草臥れてきたからな。これは何の素材で出来ている?」


 エルが私がいいと言ったバッグと、自分用にだろう、何種類かのバッグを選んで素材を聞いている。


「じゃあ二つ買おう」


 そう言ってエルは冒険者カードを取り出した。え? 何? と思っていたら親方がありがとうございます、とエルの冒険者カードをカードリーダーみたいな物で何かしてる。え? もしかしてお支払いしちゃってる?

 ちょっと待った! なんで私のバッグまでエルが支払おうとしてるの?


「ちょ! エル! 私のまでなんで!?」

「あー……ディアのバッグ買ってやるからその代わりに昨日の魔法陣のアレ俺のバッグにつけてくれないか?」


 エルがこそりと耳打ちしてきた。

 ああ……浄化か! 確かにバッグに入れておけば綺麗になるなんてさらにズルい機能だよね!

 エルってばヤバい物扱いしたくせにちゃっかりだな! そして応用力ありすぎじゃない?


「ほら」

「……ありがと」


 えへへー……黒色小さめポーチが可愛いね! 早速斜めがけにかけてみる。紐の調整はダナがしてくれた。


「どお?」

「どうって、別にただバッグかけただけだろ」

「えー! 可愛いじゃない!」

「黒いバッグは普通可愛いとは言わない」


 え! そうなの? 黒くたって可愛いは可愛いだと思うんだけど?

 どうにもこちらの世界の感覚が分からなさすぎる。

 


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